仕事のマッチングから住まいの紹介まで
「移住支援信州須坂モデル」
移住を希望する会社員にとってハードルとなるのが、よく知らない土地での転職活動。そこで須坂市では、仕事や住居探しをパッケージ化してサポートする事業「移住支援信州須坂モデル」を2017年より開始。この制度を利用した移住者は2024年1月現在で29組と成果を挙げている。ここでは、「信州須坂モデル」を利用した移住までの流れを紹介しよう。
①まずは情報を入手
地方企業の求人情報をネットで得ることはできるが、求人票だけではローカル企業の社風まで知ることは難しい。また、一般的な求人では企業側がすぐに働ける人を求めていることが多く、現職の引き継ぎや住居探しなどが必要な移住希望者にとって、マッチングすることが難しい……。
そんな移住に伴う転職活動の課題を解決するのが「信州須坂モデル」だ。移住者受け入れに理解のある市内の協力企業30社を、市の担当者が取材。企業理念や社風、働き方、実際に働いている移住者へのインタビューなどをサイトで紹介している。
移住希望者はその記事を読み、希望する協力企業へのマッチングを市の窓口へ相談し、移住体験ツアーを兼ねた職場見学や面接に進む。就職先が決定したら、通勤しやすい居住エリアのアドバイスも行ってくれるという流れだ。
②移住相談で話を聞こう
須坂市では、東京や大阪、愛知で開催する移住相談会に出展。移住を考えはじめたばかりの人から、具体的に就職・転職先を探している人まで、市の担当者が疑問に答えてくれる。仕事探し、住居、生活環境、気候、教育についてなど、移住に関することなら何でも聞いてみよう。
まちや企業についてもっと知りたくなったら、興味に合わせてオーダーメイドで訪問先を組み合わせることができる「体験ツアー」に申し込みを。移住相談会の最新情報はサイトを参照。
③体験ツアーに参加
マッチングしたい企業が決まったら、移住体験ツアーに申し込もう。協力企業の見学や面接・面談、保育園や学校見学などを自由に組み合わせることができるオーダーメイドのツアーで、随時開催している。もちろんツアー当日は市の担当者がアテンド。通勤や家族の通学に便利な居住エリアなどのアドバイスもしてもらえるので、賃貸アパートや空き家バンク物件の内覧を一度にすませることができる。
そのほか、具体的な生活をイメージしながら、子育て支援センターやスーパー、駅、公園、図書館、温泉などの施設をチェック。ちなみに市内には公立保育園10園(私立幼稚園を含めると20園)、小学校11校、中学校4校、高校3校もあるので、子育て世帯も安心だ。
④移住へ
移住相談から体験ツアー、面接などを一括でパッケージングすることで、ストレスフリーで最短2カ月のスピード移住を実現。「通勤時間が短くなったので家族の時間が増えた」「商業施設が多くて生活に困らない」「子どもがのびのびと遊ぶようになった」など、移住の喜びを話す人が多い。
須坂市移住リポート②
受け入れ企業と就職した移住者
市のサイトには企業の理念や社風を紹介した記事もある。「パートタイム勤務も大歓迎。職場見学はお気軽にどうぞ!」と駒津社長(左)。
【移住者受け入れ企業】北信タクシー㈱ 代表取締役 駒津健一さん
住民の足となり、観光客に魅力を伝える仕事
2022年から「信州須坂モデル」の協力企業となった北信タクシー㈱。初心者や定年退職したシニア世代の再就職も大歓迎で、普通二種免許の取得に対し会社による全額助成も行う。地元の人、もしくは提携している旅館やホテル、病院などからのハイヤー配車が中心だが、周辺の観光地や歴史・文化、飲食店などに精通すれば、貸し切りの観光ガイドタクシーの仕事にステップアップすることも可能だ。
「サクラや紅葉など、北信の素晴らしい観光地にお客様をお連れすることも多い仕事です。移住を機に新しい仕事にチャレンジしたい人、お待ちしています!」と駒津さんは話す。
【移住者】北信タクシー㈱勤務 髙根有貴さん(30歳)
大学卒業後、介護の会社に7年間勤務。移住にあたり「信州須坂モデル」の協力企業サイトで情報収集し、就職先を決めた。横浜の家族も須坂市を気に入り、頻繁に遊びに来ている。
まちを知り、知り合いが増え、喜んでもらえる
小さいころから家族でスキーに来ていた縁で、転職を機に長野県へ移住を決めた髙根さん。長野県のアンテナショップ「銀座NAGANO」での移住相談で「信州須坂モデル」のことを知り、市のサイトに掲載されている協力企業の紹介に目を通した。そのなかで、北信タクシーに直接メールし、2021年12月に職場見学。前職の引き継ぎを終わらせ、22年4月に入社した。
69町もある須坂市で、最初は地名などがわからずに苦労したが、現在はすべて把握。「免許を返納されたご高齢の方のご利用が多いですね。リピーターの方が多いので顔見知りになり、差し入れをいただくことも。自分を指名してくれる方もいます」。今後は観光ガイドタクシーの資格や、介護系だった前職の経験を活かしたユニバーサルデザインタクシーの資格にも挑戦したいと話す。
「知名度はあまり高くない須坂市ですが、住んでみたらすごくいいところでした。これからもまちの魅力を知ってもらうため、自分にできることをがんばっていきたいです」と充実した様子だ。
須坂市の暮らしが体験できる「移住体験ハウス」
移住体験ツアーの際の宿泊先や須坂市で暮らしてみたいという方向けに、市では「移住体験ハウス」を用意している。ハウスは、畑が広がる北信濃くだもの街道近くに立つ。平屋の旧教員住宅を改装したレトロな雰囲気で、和室3部屋とキッチン、風呂、トイレという造り。掃き出し窓を開けると、のどかな田園風景を眺めることができる。臥竜(がりゅう)公園へ車で約5分、温泉へ約6分、スーパーへ約7分。駐車場あり。
移住体験ハウスの周囲には、畑や田んぼが広がり、のどかな風景が楽しめる。
日当たりのよい南向きの部屋。こたつも用意されている。
お問い合わせ先:須坂市政策推進課 信州須坂移住支援チーム
☎︎026-248-9017
〒382-8511 長野県須坂市大字須坂1528-1
須坂市移住応援サイト [須坂市 移住]で検索
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