辛いだけじゃないうま味の宝庫 トウガラシ&ニラ
掲載:20年9月号
高温を好み、最近の猛暑でも育てやすいトウガラシ。
香辛料として世界中で愛され、辛さや味の異なるさまざまな品種があります。
また、育て方や環境によっても辛味や風味が変化します。
さらに青いうちの若穫り、赤くなった完熟果と、 収穫時期によっても味は変わります。
付き合うほどに奥深さを知るトウガラシの世界を楽しんでください。
世界一愛される香辛料 厳しい環境で辛さを増す
(↑韓国トウガラシは完熟して赤くなると辛さの中に甘味が出てくる。キムチ漬けにもぴったりで、味わいを深めてくれる。)
16世紀にコロンブスが中南米からヨーロッパに伝えたトウガラシ。
当時大変貴重だったコショウを辛さで上回り、温帯でも栽培でき、栄養面でも特に航海でのビタミンC不足を防ぐ食品として役 立ちました 。
世界中に普及し、現在では生産 ・ 消費量ナンバーワンの香辛料として愛されています。
品 種は大きく辛味種と辛 味のない甘味種とに分けられます。
ピーマンやパプリカも同属で、実の小さいものがトウガラシ、中型がピーマン、大型がパプリカと呼ばれます。
トウガラシは野性味が強くて育てやすく、実を多く付け、葉も食べられます。
辛さは品種によって異なるだけでなく、栽培環境にも左右されます。
辛味種を厳しい環境で育てると辛さを増し、甘味種は適度な水分と養分で優しく育てるとより甘くなります。
辛味種は畑の周囲で育てて獣害を避ける役割も期待できます。
品種選びのアドバイス
余裕があれば数品種育てて風味の違いを楽しみたい
トウガラシは辛味種、甘味種の違いだけでなく、品種によって風味も異なります。
辛味種は赤ければ辛いともかぎりません。
赤くなる前の青い時期が最も辛くなり、赤くなるとフルーティーになるタイプもあります。
いくつかの品種を試してお気に入りのトウガラシを探してみてください。
韓国トウガラシ
辛いだけでない深い味わい。
実は長さ12~13㎝ほどに育ちます。
種苗会社によってF1と固定種があり、辛さも異なります。
高台寺とうがらし
京都の在来種。柔らかく、煮浸しでへたまで食べられます。
(↑シシトウに似た不完全な甘味種で、たまに辛い実も交ざる。)
紫とうがらし
珍しい濃紫色のトウガラシは奈良の在来品種。
辛味のない甘味種でたくさんの実を付けるうえ、若穫りすれば種も気にならず丸ごと食べられます。
(↑皮が厚くピーマンのように食べ応えがある。)
伏見甘長
京都の在来品種。辛い実は付かない甘味種です。
赤くなってから穫った実はパプリカのようなうま味が出ます。
(↑実は小さめの若穫りだけでなく、穫り逃して長くなっても、また、赤く完熟してもおいしい。)
主なコンパニオンプランツ
栽培期間の長いトウガラシの株間に育って生育を助ける
ニラ
効果
ニラの根の共生菌が抗生物質を出して病原菌を抑える。
栽培のポイント
トウガラシの定植と同時に、根鉢に沿って根付きのニラを2~3本植える。
ニラがなければ根付きのネギを1本植えてもよい。
収穫のポイント
よく育ったら葉が柔らかいうちに地際から5~10㎝を残して切り取る。
(↑よく育ったら刈って収穫を。そのまま置くととう立ちして葉が細くなる。)
つるなしインゲン
効果
根に共生する根粒菌が空気中の窒素を固定するとともに、養分の吸収を助ける菌根菌のネットワークも働き、生育を助ける。
栽培のポイント
トウガラシの株間に定植と同時に種蒔きする。
開花時期に雨が少ないときはたっぷりと水やりを。
センチュウ被害の疑われる畑では栽培しない。
収穫のポイント
さやが硬くなる前に若穫りする。
(↑つるなしインゲンは比較的少なめの水分で育ち、大きくなりにくいため、トウガラシと相性がよい。)
監修/竹内孝功
たけうち・あつのり●1977年生まれ。長野県を拠点に菜園教室「自然菜園スクール」などを開催。著書に『とことん解説! タネから始める 無農薬「自然菜園」で育てる人気野菜 』( 洋泉社 ) 、『 完全版 自給自足の自然菜園12カ月 野菜・米・卵のある暮らしのつくり方』(宝島社)、『これならできる!自然菜園』(農文協)、『自然菜園で野菜づくり』(家の光協会)、『1 m²からはじめる自然菜園』(学研パブリッシング)など。
WEBサイト「@自給自足Life」https://39zzlife.jimdofree.com/
自然菜園スクール http://www.shizensaien.net/
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