瀬戸内海に面した小さな港町・さぬき市小田。海と山に囲まれ、ゆったりとした時間が流れているこの地へ移住し、有機農業を始めた鈩(たたら)さん夫妻。仲間とともに新たな農業スタイルにも取り組んでいる。
掲載:2022年2月号
自分たちが栽培した有機小麦で、農家兼パン屋を目指す
美しい瀬戸内海に面し、海水浴や釣りなどを楽しむ人も多いさぬき市小田。ビニールハウスで、楽しそうに作業にいそしむのは「TAGATAME」のメンバー、鈩さん夫妻と小泉さん夫妻だ。
香川大学を卒業後、県外の製パン会社に就職していた鈩優駿さんのもとに、学生時代のアルバイト先の店長・小泉圭介さんから「さぬき市で就農した」と連絡が入る。2017年のことだ。優駿さんは、勤務先の同僚でもある妻の麻琴さんと一緒にさぬき市小田を訪ねた。
『田舎暮らしの本』の読者だった麻琴さんにとって、海と山に囲まれた小田地区は理想の田舎。小泉さん夫妻がつくる有機野菜のおいしさと農作業の楽しさを知り、鈩さん夫妻に「自分たちで育てた有機栽培の小麦でパンをつくりたい」という思いが膨らんだ。半年に1回ペースだった来訪が徐々に増え、2年後の19年にはさぬき市へ移住した。
鈩さん夫妻は、まずは小泉さん夫妻と同じ研修先で研修を開始。地域の気候風土に適した栽培方法や、土づくりなどを学び、20年8月に独立就農した。さらに21年には、小泉さん夫妻とともに「TAGATAME」を結成。それぞれの農地を合わせて約2ヘクタールの畑を共有し、野菜やハーブ、エディブルフラワーなど年間約200品種の作付けをしている。みんなで同じ野菜をつくり、売り上げを分配するシステムだ。
新規農家でも1年目から収入が得られ、出産や病気などで作業ができないときは、ほかのメンバーがカバー。これにより、新規就農のハードルを下げ、間口を広げようと試みている。
「それぞれが『雇われ農業者』ではなく、『独立した有機農家』。その集合体がTAGATAMEです。最終目標は、小田にオーガニックのまちをつくることです」
このシステムには「半農半X」という働き方がしやすいメリットもある。実際、小泉さんの妻、沙耶さんはオーガニックリラクゼーションサロンを経営しながら農業をしている。鈩さん夫妻は2人で、パン屋さんとの両立を目指しているという。
鈩さん夫妻にとって、今は畑作業が楽しく、四六時中、畑にいる。
「畑で作業していると、地元の方からよく声をかけられます。魚をいただいたり、農機具を譲ってくれたり。ときにはほめてくださる方も。私たちの農業を応援していただけることが、とてもうれしいです」と優駿さん。
麻琴さんも、「近所には、移住者の方が多く、受け入れてくれる土壌があるんです。家を購入する際も地域の方が協力してくださいました」とうれしそうにほほ笑む。
この環境を気に入ったのは、鈩さん夫妻ばかりではない。優駿さんは「近々、僕の両親も小田に移住してくるんですよ」と笑顔を見せる。心強いサポーターを得て、夢の実現が早まりそうだ。
香川県さぬき市の移住支援
・移住促進家賃等補助金
・結婚新生活支援事業
・三世代同居・近居支援金
・地域就職サポートセンター
など、さまざまな支援がある。詳細は、下記のサイトをご覧ください。
さぬき市政策課 ☎087-894-1112
https://www.city.sanuki.kagawa.jp/eetoko/
香川県の移住情報⇒ 香川移住ポータルサイト「かがわ暮(ぐ)らし」
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