伊勢神宮のある伊勢市や高級リゾートとして知られる志摩市に隣接しながら、知名度はまだまだ低い南伊勢町。人口減少率も高齢化率も三重県内でトップクラスだからこそ「このまちのために何かしたい」と立ち上がる人が多く、チャレンジ精神が旺盛な新たな移住者を呼び込むことにもつながっている。
掲載:2022年6月号
移住者を中心にチャレンジしたい人が多い
目の前に五ヶ所湾が広がり、山の斜面をミカン畑が彩る南伊勢町の内瀬(ないぜ)集落。国道沿いの小高い敷地にコワーキングスペース「しごとば油屋Ⅱ」の建物がたたずむ。運営は、京都市から松阪市を経て2007年にUターンした西川百栄さん(47歳)。地域おこし協力隊2人と出会い、「気軽に仕事などで使える場をつくろう」と意気投合した。その活動グループとして「むすび目Co-working」を立ち上げ、代表を務めている。
「そのころ移住定住コーディネーターに就き、移住関係の拠点も兼ねることになりました」
こうして19年から本格的に稼働。利用料の安さや眺望のよさも好評で、コロナ禍の今も町内外から月平均30〜40人が利用しているという。
地域での交流という意味では、昨年誕生したシェアキッチン「うみべのいえキッチン」も大きく貢献している。オーナーは18年に名古屋市から移住し、コワーキングスペース設立メンバーでもある西岡奈保子さん(34歳)。経緯についてこう話す。
「元町エリアを盛り上げる取り組みとして、人が集まりやすい食からスタート。移住者さんを中心にチャレンジしたいという人が思いのほか多く、驚きました。町内外の人たちがつながる場にもなっています」
これら2つの拠点を軸に、交流人口が着実に増加。「手つかずの自然と人の暮らしが絶妙に調和した、南伊勢町の魅力にふれるきっかけになれば」と、西川さんは期待している。
【南伊勢町】わたしの移住物語➀
地域の問題解消に役立つなんでも屋として活躍
北海道出身。2019年に移住。「海・山・川もおいしい食材も揃い、隣の伊勢市には総合病院も。とてもバランスがいいすてきな田舎だと思いました」。当初は就農を考えていたが、「まちの人たちに喜ばれることを仕事にしよう」と便利屋を創業。空き家から出た不用品を活かすショップも開き、空き家問題・ゴミ問題の解消に努めている。
【南伊勢町】わたしの移住物語②
協力隊として働きながらスパイス料理の出店を目指す
神奈川県出身。自転車で日本を縦断し、世界一周の旅をして2019年、南伊勢町へ。地域おこし協力隊としてシーカヤックスクールで活動しながら、ネギ栽培に携わり、スパイスカレーで「うみべのいえキッチン」に月1回出店。「この場所のおかげで飲食店を始める道筋が見えてきました」。物件が見つかり次第スパイス料理店を開く計画だ。
【南伊勢町】わたしの移住物語③
趣味を生かした漢方茶でまちの人の健康づくりに貢献
美しい海と山にひかれ、「むすび目Co-working」のサポートを受けて2021年に茨城県から移住。整体師の経験を活かして隣まちで働く傍ら「漢方茶30サンマル」として「うみべのいえキッチン」やイベントに出店。「漢方茶は趣味だったのですが、丸尾さんに誘われて販売するように。今後は地元の無農薬野菜や果物を活用していければ」。
【南伊勢町】移住支援情報
出産祝金の拡充をはじめ子育て世代を幅広く応援
海と山が彩る豊かな自然のなかでのびのびと過ごせる南伊勢町では、「子育て応援日本一」を目標に掲げて多様な子育て支援策を整えている。従来の全園児完全無償化、保育園4〜5歳児への英語教室、18歳までの子ども医療費助成制度のほか、今年度からは出産祝金を第1子・第2子は20万円、第3子以降は30万円へ拡充した。
まちづくり推進課 ☎︎0599-66-1366
https://www.town.minamiise.lg.jp/iju
文/笹木博幸 写真/松原 豊
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