困りごとを、田舎暮らしのベテランライターが回答。ほかの人の土地を通らないと公道まで出られない袋地での問題を取り上げる。
私道に面した土地を5年前に購入。土地の売主が私道の所有者で、「お金はいらないし、自由に通行していい」という話でした。そろそろ小屋でもと軽トラで部材を運んだら、突然現れた人に「あの私道は私の持ち物になったから勝手に通るな」と言われました。歩いて進入するのはいいが、車で乗り入れるなら通行料を払え、という意味のようです。通行権を確保するにはどうしたらいいですか。
愛知県在住 木原さん●28歳
袋地になっていれば、他人の土地でも通行可
他人の敷地に囲まれて通路がなく、そこを通らないと公道まで出られない土地がある。これを袋地、それを囲んでいる土地のことを囲繞地(いにょうち)と言う。袋地の所有者は、囲繞地を通行することができる。これを「囲繞地通行権」と呼ぶ。
ただし、囲繞地のどこを通ってもいいわけではなく、その所有者にとっていちばん損害の少ない場所を選ばなければならない。車の通行まで許されるかどうかはケースバイケース。囲繞地通行権は場所や道路幅など、必ずしも自由にならない。
共有持分の取得など、いくつかの方法が
しっかりした通行権を確保するには、別の手を考えるべきだ(下の図参照)。例えば、私道の所有者と賃貸借契約または使用貸借契約を結ぶ方法がある。前者は金銭が発生し、後者は発生しない。ただ、木原さんのケースのように私道の所有権が変わると、話が複雑になりやすい。
確実なのは、「通行地役権(つうこうちえきけん)」を設定する方法。地役権とは、自分の土地にとって都合がいいように他人の土地を利用できる権利のことで、利用する側と利用される側で地役権設定契約を結ぶのが一般的だ。
もっとも、私道を通らないとたどり着けない物件は、なるべく購人時に手を打ったほうがいい。いちばん確実なのは、「共有持分」を取得する方法である。これは何人かで共有する所有権のことだが、権利が何分の1でも通行に支障はない。いまは2世帯しか使っていない道路でも、将来の土地売買を考えて3分の1、4分の1といった小さな持分しか譲渡しない地主もいる。それでも通行権は確保できるので、前向きに話し合いたい。
文・写真/山本一典 イラスト/関上絵美
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