WEBや新聞などで目にしていても、実際のところよくわからない田舎の言葉は少なくない。ご近所付き合いがほとんどない都会に住んでいた人ならなおさらだ。そのいくつかをピックアップして、田舎暮らしライターが解説・アドバイスする。
■自治会
住民で運営する自治組織のことで、町内会、行政区と呼ぶ地域もある。国策の徹底で行政の下部組織と位置付けられた時期もあったが、現在は相互に自立した関係を築くことが求められている。
移住者は入会するのが原則で、それを空き家バンク利用の条件にしている自治体も少なくないが、分譲地の別荘利用者で自治会を結成したり、移住者は準会員とする地域もある。入会したくない人は、別荘地帯で物件を絞り込むのが無難だ。
■区長・班長
自治会のトップは区長と呼ばれることが多く、その地の風習に関する知見も求められるため、極端な過疎地を除けば移住者が選出されることはほとんどない。一方、班長は持ち回り制で、回覧板を回したり、区費を徴収する程度の役目なので、移住者がなる可能性は充分にある。
移住前に区長を訪ね、地域のさまざまなルールを確認するのがいいだろう。
■自治会費
自治会は環境美化、防犯や防災、夏祭りなどの文化行事、さまざまな伝統文化活動などを行っており、それには予算も伴う。
自治会費は1世帯当たり年間数千円から数万円が一般的だが、まれに最初に簡易水道や集会所の分担金として数十万円を要求される地域もあるので、あらかじめ確認しておこう。
移住後は、班長の負担を減らすため、自分から会費を持参すると喜ばれる
■消防団
山火事などの初期消火や災害時の救助などにあたる人たち。非常勤特別職の地方公務員だが、報酬は飲み代程度しか出ない。つまり、ボランティアに近い世界だ。
移住者でも40代以下なら勧誘される可能性は高く、定期的に訓練も行われる。ちなみに女性消防団員を募集している地域もあるので、若い奥さんは確認を。
■PTA活動
小・中学生の保護者が子どものために活動するのは都会の学校でも同じだが、農村では子どもは2〜3人いて当たり前だし、共働きの家庭が多い。
PTAには学級委員、広報委員、文化委員などいろんな役職があり、大多数の人はやりたくないのが本音。でも、地域社会で暮らす以上、小・中学生がいる移住者はすべては断れない、最低限の役職を免れないと考えるべきだ。
共働きでない子育て中の夫婦は、必ず誘われると覚悟しておこう。
■老人会
地域を基盤とする高齢者の任意団体で、60歳以上になると誘われる可能性が高い。ゲートボールや輪投げなどの健康増進活動を行うだけでなく、花いっぱい運動や手工芸品のバザーといった社会活動も行っている。
参加はあくまで自由だが、高齢者の孤立防止の機能にも注目したい。
■農協・漁協
前者は農業、後者は漁業にかかわる協同組合だが、組合員数は農協のほうが圧倒的に多い。
農協は信用事業と共済事業を中心としており、移住者でも預金を出し入れしたり、保険に加入したり、冠婚葬祭施設を利用したり、身近な存在になっている。
行政からの支援金などももらいやすいので、農協の貯金通帳はつくりたいところだ。
■クリーンアップ作戦
いわゆる環境美化活動だが、田舎の川や海、道路沿いで草刈りをしたり、ゴミや空き缶拾いなどをする共同作業を指す。
通常は1世帯1名の強制参加で、年に2〜3回くらい回覧板で参加の要請がある。
草刈り機か鎌、スコップ、作業着、カッパ、軍手を事前に用意しておこう。
■新盆回り
葬式を出した家が初めてお盆を迎えるとき、ご近所が少額(1000〜2000円程度)の御仏前を持ってその家へ出向き、線香を上げる風習が全国各地にある。
お盆を迎えるときは、それまでの1年間に葬式で香典を出した家を覚えておく必要があるのだ。
ただ長居はかえって迷惑になる。お茶をいただいたら、すぐ退席しよう。
■新生活運動
冠婚葬祭の交際費は地域住民の負担になっており、それを簡素化するための運動。各地で普及してきた。
具体的には香典袋や病気見舞い袋などに「私は新生活運動の趣旨に賛同し、お返しは辞退いたします」というシールを貼り、仮に相場が5000円なら3000円を渡す。
区長に聞いて推進委員会があれば、資料とシールをもらっておこう。
文/山本一典 イラスト/今井ヨージ
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