田舎でのお悩みを、田舎暮らしのベテランライターが回答。合併浄化槽を設置したのに補助金が出ないケースについてお答えします。
新築の別荘がほしかったのですが、予算が1000万円しかありません。ある業者は、「18坪なら建てられる。ただし、合併浄化槽と外構工事の費用は別です」とのこと。浄化槽は半分くらいの補助金が出る、と近くの移住者に聞いていました。ところが、役場に聞くと「もう受付は終了。それに定住しないと助成の対象にはなりません」とのこと。50万円もオーバーです。
長野県在住 渡辺さん●42歳
補助金を活用すると、半額程度ですむ地域も
合併浄化槽のネックは、価格が安くないこと。渡辺さんは、それで50方円も予算オーバーになってしまった。昔はトイレのし尿だけを処理する安い単独浄化槽もあったのだが、浄化能力が低いことから、製造禁止になった。単独浄化槽と合併浄化槽の大きな違いは、後者が2槽の嫌気ろ床槽を設けていること、そして温度の高い風呂や台所の水が流れ込むことだ(下の図参照)。水温が高いと嫌気性バクテリアが活動しやすく、有機物の分解が進む。それだけ高い浄化能力が期待できる。
田舎では農業集落排水施設を整備するよりコストが安いので、その設置に対して補助金を支給している自治体が少なくない。5人槽で施工費込み70万~I00万円が標準だが、その半額程度の自己負担ですむ地域もある。個人でなく市町村が設置する場合は、さらに低コストですむ。この制度は、農村部では利用価値が高い。
申請する場合はタイミングも考えて
渡辺さんも制度を活用しようと役場に聞いたら、「もう受付は終了。それに定住しないと助成の対象にはなりません」と言われた。一部に例外もあるが、別荘利用には適用しない自治体がほとんど。このケースのように適用されないと、全額負担となってしまうのだ。
では、「受付終了」というのはどういう意味だろう。市町村は予算内で補助金を出すため、年度末に近いと受付が終了してしまうことがある。定住の場合も、申請のタイミングはよく考えたほうがいい。
浄化槽は設置後も、フタを開けて年に1回の清掃と汚泥の抜き取り、数力月に1回の保守点検などが義務づけられている。地域差はあるが、5人槽で清掃と汚泥の抜き取りが2万円、保守点検が2000円前後。その費用も頭に入れておきたい。
トラックの荷台に載っているのが小型合併浄化槽。
文・写真/山本一典 イラスト/関上絵美
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この記事を書いた人
山本一典
田舎暮らしライター/1959年、北海道北見市生まれ。神奈川大学外国語学部卒業。編集プロダクション勤務を経て、85年からフリーライター。『毎日グラフ』『月刊ミリオン』で連載を執筆。87年の『田舎暮らしの本』創刊から取材スタッフとして活動。2001年に一家で福島県田村市都路町に移住。著書に『田舎不動産の見方・買い方』(宝島社)、『失敗しない田舎暮らし入門』『夫婦いっしょに田舎暮らしを実現する本』『お金がなくても田舎暮らしを成功させる100カ条』『福島で生きる!』(いずれも洋泉社)など。
Website:https://miyakozi81.blog.fc2.com/
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