環境先進都市を目指すためのまちづくりや、環境、経済、社会の側面を持つ取り組みが評価され2020年7月、亀岡市が「SDGs未来都市」および「自治体SDGsモデル事業」に選定された。その取り組みは、「美しい保津川を守りたい」という船頭の思いから始まったものだという。
掲載:2023年12月号
【京都府亀岡市(かめおかし)】
京都府中西部にある亀岡盆地に位置。市内中心部の亀岡駅から京都駅までJR快速で21分、京都縦貫自動車道や幹線道路により大阪・兵庫・京都の中心部へ車で1時間以内と好アクセス。市域の中央部には一級河川の保津川が流れ、河川周辺の平地部に農地が広がる。
「霧の都」が誇るアートを通した環境保全
「亀岡市内だけでなく、保津川から下流、そして海にプラスチックごみを流さない」と、保津川の清掃活動を定期的に実施。活動の予定はプロジェクト保津川のHP(https://hozugawa.org)を参照。
亀岡駅がある中心部から京都市街地へのアクセスがよい亀岡市。自然に恵まれており、盆地特有の気候条件で霧が発生しやすいことから、「霧の都」と称される。特に、保津峡は、保津川下りやトロッコ列車を目当てに年間150人の観光客が訪れる一大観光地。市民にとって、清らかな保津峡は誇りである。
しかし1990年半ば以降、大雨のたびにプラスチックごみが大量に漂着するようになった。
それを見かねた2人の若い船頭がごみ拾いを開始。ほかの船頭や市民もあとに続き、「特定非営利活動法人プロジェクト保津川」が誕生した。そして、2018年に「かめおかプラスチックごみゼロ宣言」を発表。日本で初めてのプラスチック製レジ袋提供禁止条例を20年に制定し、21年1月より施行された。日本ではその前年にレジ袋有料化に踏み切っているが、レジ袋の提供を禁止した自治体は亀岡市が唯一だ(21年時点)。
「プロジェクト保津川では、保津川に流れ込んだごみの調査を定期的にしていますが、条例制定によりレジ袋は減少しました。条例では必要に応じて有料の紙袋を利用することもできますが、現在ではエコバッグ持参率は98%にまでのぼっています」
とSDGs創生課の橋本広明さん。
マイボトルを持参すれば無料で亀岡のおいしい水がくめる給水スポットを配置することで、ペットボトルごみの削減につながる。
役目を終えたパラグライダーをアップサイクルしてつくるHOZUBAG。パラグライダーの生地は軽くて丈夫。オンラインでも販売。https://hozubag.com
エコバッグの普及に向けて、環境とアートを融合させた取り組みも行う。廃棄されるパラグライダーの生地を活用した「HOZUBAG」だ。パラグライダーは市内で人気のアクティビティだが、安全基準が厳しく、定期的に廃棄する必要がある。これを資源として回収し、エコバッグへとアップサイクル。市内に生産拠点を整備し、雇用創出や地域活性化にも貢献している。この取り組みを担っているのが、「かめおか霧の芸術祭」だ。
「亀岡市がSDGs未来都市および自治体SDGsモデル事業の選定を受ける際、提案したのが『「かめおか霧の芸術祭」×X(かけるエックス)〜持続可能性を生み出すイノベーションハブ〜』です。かめおか霧の芸術祭とは、亀岡ゆかりの芸術家とともにアートの力を活かしたまちづくりを進めるプロジェクトなのですが、亀岡市では、何かに取り組もうとする際、アートのフィルターをかけることで可能性が無限大になると考えています。例えば、かめおか霧の芸術祭×エコバッグ=HOZUBAGという具合に」
このほかにもプラスチックごみ削減への取り組みは、自由な時間・タイミングでウォーキングしながらごみ拾いを行う「エコウォーカー事業」(20年3月開始、登録者数1737人※)、プラスチックごみの削減に取り組む飲食店の認定制度「リバーフレンドリーレストラン」(21年3月開始、市内25カ所※)、マイボトルを持参すれば無料で利用できる「給水スポット」の設置(21年3月開始、市内85カ所※)など、アートの力も活用し、魅力あるまちづくりを行う。結果的に市民の環境に対する意識がより強くなった。それだけに留まらず、「亀岡市で暮らしてみたい」と思う人を増やすことにもつながっているようだ。
※…上記はすべて2023年9月30日現在の数字。
「保津川の流れのような自然の循環を生み出したい」との思いを込めて名づけられたHOZUBAG。型紙をもとにオリジナルのカバンをつくるワークショップも開催している。
市内在住の中学2年生などを対象に「ふるさと体験学習“京都亀岡保津川下り”」を実施。乗船体験を通じ、環境問題について考える機会としている。
亀岡市のSDGs ここがスゴイ!
「保津川を守りたい」という市民活動にアートの要素も加わり、独自の展開を見せる亀岡市の取り組みを紹介。
●日本トップクラスの環境先進都市を目指す
●「かめおか霧の芸術祭」というアートの視点を通した取り組みを行う
●亀岡市民の保津川愛がSDGsの原動力
●活動は結果的に地域活性化や子どもの未来を守ることにつながる
「亀岡市役所地下1階には、誰もが利用できる『開かれたアトリエ』もあります」(SDGs創生課 橋本広明さん)
亀岡市のここがオススメ!
亀岡から嵯峨嵐山まで16kmに及ぶ区間を舟で下る「保津川下り」。渓谷沿いの線路には、嵯峨野観光鉄道のトロッコ列車も走る。
農業に適した気候であることから、亀岡市では京野菜の多くを生産。オーガニックビレッジを宣言するなど、新規就農を目指す移住者の注目度も高い。
亀岡市移住支援情報
京阪神近くのトカイナカ。子どもファーストを宣言
京都駅から電車で約20分とアクセスがよいため、京阪神で仕事をしながら移住するというスタイルがかなう亀岡市。子どもファースト宣言をしたことでも知られ、子ども医療費を18歳まで無料化、保育料第2子以降すべて無料化など、子育て世帯に優しい支援を実施。
●お問い合わせ先/SDGs創生課 ☎0771-56-8520
https://www.city.kameoka.kyoto.jp/site/iju/
移住相談にも対応しているので、気軽に問い合わせを。
天然記念物のアユモドキが泳ぐ、美しい保津川が身近にある環境。
文/横澤寛子 写真提供/亀岡市
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