一人で入った山奥で動けなくなったことも
――銃を担いで、山の中をすごいスピードでガンガン走ってますけど、昔から山は好きだったんですか?
「いえ、全然。登山の趣味もなくて、山を歩くようになったのは狩猟をやるようになってからです。師匠の服部さんはもともと登山家です。その服部さんに『猟場を紹介してやる』って言われて、朝の6時から一緒に猟場を歩き始めたら、僕の足は9時にぶっ壊れました。服部さんから『これを1日中やるんだ』と言われて、これは大変だなと。山を歩く筋力は、山を歩き続けないとつかないそうなので、そこから鍛えたんですよ。とにかく、山を歩きまくって」
(映画『WILL』より)©2024 SPACE SHOWER FILMS
――狩猟の場合、登山道なんかではなく、山の中の道なき道を進むわけですから、これまでに危ない目に遭ったりしてませんか?
「ありますよ。“雪庇(せっぴ)”という、雪が薄いひさしのようになっているところを踏み抜いたんです。その下は崖のようにえぐれているのに、雪で覆われているから地面が続いているかのような錯覚を起こすんですよ。ケツをワンバウンドさせて崖の下まで落ち、木に足をぶつけて激痛でした。一人きりで入った山奥だったんですけど、『うわ、これは折れたわ』と思うほどで」
――それ、ヤバくないですか? 普通に遭難ですよね。
「そうなんですよ。もがきながら、『折れた足を引きずって、どうやったら帰れるかな』と、ぐるぐるぐるぐる考えていたんですが、 10分ぐらいすると徐々に痛みが引いてきて、『よかった。折れてなかった』と」
――怖い話です。まるで、サバイバルですね。
東出昌大主演 ドキュメンタリー映画『WILL』
©2024 SPACE SHOWER FILMS
俳優・東出昌大は猟銃を持ち、山へ向かった。電気も水道もない状態での暮らし。狩猟で獲った鹿やイノシシを食べ、地元の人々と触れ合う日々は、彼に何をもたらしたのか――。
残酷すぎる世界で生きる意志(WILL)を呼び起こす、魂の140分。
『WILL』
出演:東出昌大
服部文祥、阿部達也、石川竜一、GOMA、コムアイ、森達也
音楽・出演:MOROHA
監督・撮影・編集:エリザベス宮地
プロデューサー:高根順次
2024年|日本|カラー|ビスタ|140分|DCP|映倫審査区分:G
製作・配給・宣伝: SPACE SHOWER FILMS
公式HP:https://will-film.com/
公式X:@WILL_movie0216
撮影:大村聡志 取材・文:佐藤誠二朗
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この記事を書いた人
佐藤誠二朗
さとう せいじろう <編集者/ライター、コラムニスト> ●児童書出版社を経て宝島社へ入社。雑誌「宝島」「smart」の編集に携わり、2000~2009年は「smart」編集長を務める。2010年に独立し、フリーの編集者、ライターとしてファッション、カルチャーから健康、家庭医学に至るまで幅広いジャンルで編集・執筆活動を行う。初の書き下ろし著書『ストリート・トラッド~メンズファッションは温故知新』(集英社)はメンズストリートスタイルへのこだわりと愛が溢れる力作で、業界を問わず話題を呼び、ロングセラーに。その他、『オフィシャル・サブカル・ハンドブック』『日本懐かしスニーカー大全』『ビジネス着こなしの教科書』『ベストドレッサー・スタイルブック』『DROPtokyo 2007-2017』『ボンちゃんがいく☆』など、編集・著作物も多数。最新作『山の家のスローバラード 東京⇄山中湖 行ったり来たりのデュアルライフ』(百年舎)が好評発売中。
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Website:https://www.satoseijiro.com/
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