田舎でのお悩みを、田舎暮らしのベテランライターが回答。田舎物件に多くあるトイレの問題です。汲み取り式トイレを水洗化したときの費用もご紹介します。
安い中古住宅のトイレはポットン使所で、母屋とは別棟です。夏休みに滞在したら強いにおいがし、冬は震えるほど寒いです。思いきって母屋に水洗トイレを設置したら、下水道があるのに約60万円もかかってしまいました。田舎のトイレがこんなにお金がかかる理由を教えてください。
富山県在住 千葉さん●56歳
汲み取りの外便所は、においと寒さが欠点
田舎はいまでも、汲み取り式のポットン使所が珍しくない。安い中古住宅はなおさらだが、千葉さんのようにギブアップするケースがほとんど。水洗トイレに慣れた都会の人には、においが耐えられないのだ。
母屋から離れた汲み取りトイレを、一般に外使所という。農作業中に用を足したり、肥やしを運び出すのに便利だった。その習慣はとっくに廃れたが、外便所の売家はまだ田舎不動産市場に出てくる。
田舎のトイレの種類
■汲み取りトイレ
「ポットン便所」とも言われる、便槽にし尿を溜めるトイレ。満杯になる前に汲み取りが必要だが、そのタイミングが難しい。汲み取りは2カ月に1回で6000円ぐらい。
■簡易水洗トイレ
少量の水でし尿を便槽に流すトイレ。悪臭は少ないが、汲み取りは必要になる。暖房便座や洗浄ガンの付いたものも多い。費用は便器を含めて一般家庭用で施工費込み12万円くらいから。
■水洗トイレ
都会と同じトイレだが、違いは下水道に流すのではなく、合併浄化槽を使うところ。その点検や法定検査に、年に数万円かかる。工事費の目安は下を参照。
外便所の欠点は冬の寒さ。温かい布団からマイナスの外気に触れると、一気に目が覚めてしまう。田舎生活の経験がまったくない人は、最初から屋内の水洗トイレに切り替えるのが無難である。
新設する屋内トイレは、配管しやすい洗面所の一角か、その周辺に設けるケースが多い。また、し尿はとりあえず汚水マスまで流すことになるので、排水管の工事も必要だ。以上の工事で約10万円。
次に、大工仕事。床・壁・天井を設け、寒冷地では断熱材も施す。外壁に面しているトイレは、サッシも取り付けると採光に有利。換気扇や照明を使うので、電気工事もやらなければならない。この部分のコストは40万円くらい。あとは下水道の負担金がかかる。
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この記事を書いた人
山本一典
田舎暮らしライター/1959年、北海道北見市生まれ。神奈川大学外国語学部卒業。編集プロダクション勤務を経て、85年からフリーライター。『毎日グラフ』『月刊ミリオン』で連載を執筆。87年の『田舎暮らしの本』創刊から取材スタッフとして活動。2001年に一家で福島県田村市都路町に移住。著書に『田舎不動産の見方・買い方』(宝島社)、『失敗しない田舎暮らし入門』『夫婦いっしょに田舎暮らしを実現する本』『お金がなくても田舎暮らしを成功させる100カ条』『福島で生きる!』(いずれも洋泉社)など。
Website:https://miyakozi81.blog.fc2.com/
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