求めるものが、ここにあります! 自分の好きを鳥取で
掲載:2021年7月号
移住希望者への支援が充実している鳥取県。地域の役に立ちたい、お店を開きたい、のびのびと子育てしたい、海の近くで暮らしたい……。鳥取県で、自分の“好き”をかなえる暮らしを始めませんか。今回は倉吉市へUターンして、実家のお寺を継いだ方のインタビューです。
帰郷し寺の40代目住職に。次世代につなぐ改革に着手
倉吉市中心部から車で南に約20 分。里山が広がり、名湯百選の温泉が湧く関金町(せきがねちょう)に着く。温泉街は車1台分の幅の坂道沿いに広がり、奥にたたずむようにあるのが国指定重要文化財の地蔵を有する「大瀧山地蔵院」だ。開創は奈良時代756年とされる。40代目住職の九鬼全弘(くきぜんこう)さん(36歳)は、中学卒業後に和歌山県の高野山高校・大学、高野山で役僧を務め27歳で帰郷した。
7年間実家の地蔵院の僧侶を務め、2018年10月に父から住職を継承。まず取り組んだのは、家単位で特定の寺に所属し仏事一式を任せる「檀家制度」の廃止。さらに供養や法事などの布施や準備物もホームページに掲示し明確化を図った。「お寺は供養をされたい方のためにあります。少子高齢化の時代に誰でもお越しいただける寺としていくために取り組みました」。
寺の存続にもかかわることだけに反対もあったが、ていねいな説明を重ねて理解を得たという。先代住職は、九鬼さんの身近な相談相手であり、推進役だ。
「父親の『自分で責任を取れることはやっていい』という言葉が支えになりました。今も何かをやる前には相談をします」
このほか地蔵絵書きや写経写仏などの体験企画、そして20年4月には寺院内の家屋を改装し民泊できる宿坊を稼働。1日1組の貸し切りで、コロナ禍でも滞在型スキー客や卒業旅行の大学生が利用するなど好評だ。移住希望者が滞在する「お試し住宅」の機能も果たしている。
「関金は海、山、街まで車で20分ほど。関金の温泉街なら居酒屋、コンビニ、温泉がすべて徒歩5分です。宿坊滞在で便利さを実感して、ぜひ関金に住んでもらいたいですね」と笑顔で関金暮らしをおすすめしてくれた。
寺を観光や特産と結び、関金の活気を創りたい
九鬼さんは関金の地域資源を活かすNPO法人の理事を務め、倉吉市内のイベントにも積極的に協力し人脈を広げている。宿坊も含めて観光振興に熱心なのは、九鬼さんが大切にする〝連携〞ができるからだ。
「寺の文化を継承するには、信仰だけでなく、観光と結び付くことでいろんな人に寺の価値や存在を知っていただくことが必要なんです」
今、九鬼さんが注目しているのは伝統の畜産。生産者直営の食事兼精肉販売店舗の計画に期待を寄せている。
「やってみたいという若い人を応援したい。関金に初の牛肉専門店ができれば宿泊の方におすすめできますし、もっと便利なまちになりますよ」と笑う。
九鬼さんには宿坊に泊まった移住希望者の忘れられない言葉があるという。
「朝、温泉街を散歩された方に『すごく気持ちがいい場所』と言われました。私たちの目の前にあるものがじつは魅力なのだと気づかされました。関金にはまだまだ魅力がある。創造力をかきたてるまちなので、いろいろな方ともっと発見をしていきたいですね」
倉吉市のここが好き
倉吉市(くらよしし)
鳥取県中央部に位置する人口約5万人の市。中心部には国の重要伝統的建造物群保存地区に指定された打吹玉川地区をはじめ、風情ある景観が残る。南部にある約1300年前に開かれた関金温泉は、無色透明な泉質で「白金の湯」と呼ばれている。
倉吉市の移住支援
住宅購入費や改修費、家賃の補助など住まいに関する支援や、起業者へ向けた創業支援制度を用意。オンラインで地元住民のおすすめスポット、地元のキーパーソンや空き家の紹介なども積極的に行う。また、地元住民と移住者の交流を応援する「受け入れ支援事業」も実施し、移住後の地域のつながりをつくる活動をサポート。要件を満たす一都三県からの移住者には移住就業支援金の交付もある。
問い合わせ 倉吉市地域づくり支援課 ☎0858-22-8159
https://www.city.kurayoshi.lg.jp/iju/
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