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田舎暮らしの本 12月号

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田舎暮らしの本 12月号

11月1日(金)
890円(税込)

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【地方創生SDGs】森林と地熱の地域資源を活用! 経済とエネルギーの循環を目指す【熊本県小国町】

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面積の約8割を山林が占め、「小国杉」「温泉」「ジャージー牛乳」が有名な小国町。1980年代から小国杉を活用したまちづくり「悠木の里づくり」を始め、さらに地熱発電によりエネルギーの地産地消を目指している。小国町の取り組みを紹介しよう。

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掲載:2024年3月号

熊本県小国町の木造の宿舎「木魂館」と涌蓋山
熊本県小国町(おぐにまち)
熊本県の最北端に位置し、人口約6150人。雄大な自然、豊かな水、温泉に恵まれている。2024年発行の新千円札の肖像画に選定された細菌学者・北里柴三郎博士の出身地。上の写真は、木造の宿舎・研修施設「木魂館(もっこんかん)」と涌蓋山(わいたさん)。阿蘇くまもと空港より車で約1時間。

森林は家具やアロマに、地熱は発電に、資源をフル活用

 町の面積の約8割を山林が占め、杖立(つえたて)温泉やわいた温泉郷など、温泉が豊富な小国町。

「『森林』と『地熱』という2つの地域資源を活かしたまちづくりを目指しています」と小国町情報政策課の瀬津田 創さんは話す。

 江戸時代から人工造林が始まり、「小国杉」は町の代名詞的特産品だったが、1980年をピークに需要が下降。そこで小国杉を活用した地域デザインをテーマにした「悠木(ゆうき)の里づくり」を開始。道の駅「小国 ゆうステーション」や「小国ドーム」、「木魂館」といった木造公共施設を建築し、間伐と木材需要拡大を促進することで森林の適正管理を行った。

 また、山の持ち主たちが共同出資して運営する「森林組合」では、建材としての販売だけでなく、家具などに加工して販売を行うほか、スギの枝葉からアロマオイルを抽出したり、スギから繊維を取り出してつくる「木糸(もくいと)」でシャツなどを製造販売するなど、さまざまなかたちで森林を有効活用している。

熊本県小国町の名産「小国杉」。町の面積の約8割を森林が占める
250年前から幾世代にもわたって育てられてきた「小国杉」。面積の約8割を森林が占めるこの町は、林業の文化が息づいている。

熊本県小国町の小国ドーム。杉角材を使用した木組みの天井
杉角材5602本を使用した木造立体トラス構法で建てられた小国ドーム。屋根の外側はステンレス張りだが、内部の天井の木組みは圧巻。

熊本県小国町の小国杉を使ったエッセンシャルオイル(@写真提供:Yuji Ishimatsu)
小国杉の枝葉を集めて、森のアロマラボで抽出したエッセンシャルオイル。ウッディでさわやかな香りが特徴だ。(@写真提供:Yuji Ishimatsu)

熊本県小国町の木材の繊維を原料とした「木糸」
「木糸」は、木材の繊維を原料とし、綿や麻などの天然素材と合わせてつくられる糸。国内での製造、CO₂削減、使う水の量を抑えるなどで注目を集めている。

 2013年に「環境モデル都市」に選定された小国町は、15年に役場庁舎や公立病院、老人保健施設にLED照明機器や太陽光発電設備を導入、翌年には木質チップボイラーを導入して老人保健施設と公立病院の給湯と暖房に熱供給するなど、CO₂削減にも力を入れる。

 間伐材や山の残材を山林所有者が「木の駅」に持ち込むと、1トン当たり6000円分の地域通貨に替えてもらえる「木の駅プロジェクト」もスタート。集められた木は、町内の温泉施設に導入したバイオマスボイラーの燃料にしている。

 小国町のもう1つの地域資源が地熱だ。地熱を活用して木材を乾燥させる「地熱木材乾燥施設」は、町内の木材を町内の地熱で乾燥させる国内では珍しい地産地消型。

 地熱発電にも取り組み、5つの民間事業者が参画。その1つ「わいた地熱発電所」では、電力会社(一般送配電事業者)への売電収益が年間約6億円にもなる。現在、町と民間が共同で新電力会社を設立、地熱発電などによる町独自の電力の一部を公共施設などに供給していて、エネルギーの地産地消にも取り組んでいる。

熊本県小国町の蒸気の熱で乾燥させる「地熱木材乾燥施設」
化石燃料を使わず、木材を乾燥させることができる「地熱木材乾燥施設」。写真の下に写っている鉄パイプ内に蒸気が通っている。

熊本県小国町の「わいた地熱発電所」
「わいた地熱発電所」は、地域住民による合同会社「わいた会」が発電事業者と共同で運営。1時間約2000kWの発電があり、売電収益は2割が合同会社に、8割が発電業者に分配。町には発電業者から寄付金の協定が結ばれている。

「小国町が今後さらに取り組んでいきたいのが、人材育成と交流人口の増加です」と瀬津田さん。

 20年には小学校4年生から中学校3年生までの全校生徒にSDGs特別授業を実施。小さい子どもには、教材として「小国SDGsカルタ」を使用し、SDGsに関連した絵と言葉が遊びながら覚えられる。

 さらに、廃校となった西里小学校を「NISHIZATO TERAS(ニシザト テラス)」として再生中。サテライトオフィスやコワーキングスペースのほか、町内外の交流の場やESD(※1)の拠点として活用する予定だ。

「家庭科室はチャレンジショップとしても使えるカフェスペースに、郷土料理を学んで販売したり、ESDを学べるツアーを行ったり、さまざまな活用案が出ています。交流人口増加や事業承継への糸口になりますので、これからが楽しみです」

※1 ESD…Education for Sustainable Developmentの略。持続可能な社会を実現していくことを目指して行う学習・教育活動のこと。

熊本県小国町の「薬味野菜の里小国」。循環型農業に取り組む
町では循環型農業にも取り組む。「薬味野菜の里小国」では、町内の施設から出る食品残渣(ざんさ)を堆肥の材料にし、その堆肥を使って栽培した野菜を販売。

熊本県小国町の「小国SDGsカルタ」
子どもたちのための教材「小国SDGsカルタ」。遊びながら絵と言葉が覚えられる。

熊本県小国町の「NISHIZATO TERAS」はSDGsの取り組み拠点
旧西里小学校を活用した「NISHIZATO TERAS」。木造のドーム屋根は、中心にある多目的ホール。創業支援やコミュニティスペースがあり、SDGsの取り組み拠点でもある。

小国町のSDGsここがすごい

森林と地熱といった地域資源を有効活用することで、経済の循環や産業創出、雇用へとつなげている。

●森林や地熱などの地域資源を有効活用し、地域経済循環や産業創出につなげている
●町民が主体的に地熱発電などのエネルギーの地産地消に取り組む
●49社・2団体(2023年12月現在)が小国町SDGsパートナーシップ制度に登録
●ケーブルテレビでSDGs普及啓発番組を放送するなど、情報発信にも熱心

「資源の活用、人の雇用などうまく循環していきたいと思っています」(小国町情報政策課 瀬津田 創さん)

 

小国町のここがオススメ!

熊本県小国町の神秘的な「鍋ケ滝」
カーテンのように幅広く落ちる水が神秘的な様子の「鍋ケ滝(なべがたき)」。入園料は大人300円、小人150円。事前予約制。

熊本県小国町の「わいた温泉郷」

小国町移住支援情報
「小国暮らしの窓口」でワンストップで対応

(一財)学びやの里内に、移住相談窓口として「小国暮らしの窓口」を設置し、空き家の紹介や仕事の紹介などワンストップで対応している。また、サイト「シゴツ」では町内の求人情報を紹介している。空き家バンク登録物件に入居した場合、改修費の2分の1(上限30万円)の補助もあり。

お問い合わせ:小国町情報政策課 ☎︎0967-46-2118
お問い合わせ:小国暮らしの窓口(〈一財〉学びやの里)☎︎0967-46-5560
小国暮らしの窓口|小国町 (kumamoto-oguni.lg.jp)

熊本県小国町のお試し住宅
町内に3戸あるお試し暮らし住宅は、最短1カ月から入居可能。


「小国町には、田舎暮らしの小さな喜びがたくさんあります」(小国町政策課 宇都宮雪月さん)

文/水野昌美 写真提供/熊本県小国町

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  • 熊本県小国町の木造の宿舎「木魂館」と涌蓋山
  • 熊本県小国町の名産「小国杉」。町の面積の約8割を森林が占める
  • 熊本県小国町の小国ドーム。杉角材を使用した木組みの天井
  • 熊本県小国町の小国杉を使ったエッセンシャルオイル(@写真提供:Yuji Ishimatsu)
  • 熊本県小国町の木材の繊維を原料とした「木糸」
  • 熊本県小国町の蒸気の熱で乾燥させる「地熱木材乾燥施設」
  • 熊本県小国町の「わいた地熱発電所」
  • 熊本県小国町の「薬味野菜の里小国」。循環型農業に取り組む
  • 熊本県小国町の「小国SDGsカルタ」
  • 熊本県小国町の「NISHIZATO TERAS」はSDGsの取り組み拠点
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田舎暮らしの本編集部

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