これから移住する人に向けて、田舎暮らしで気になることをランキング形式で紹介。今回は、「移住相談数が多い自治体」をクローズアップします。多数の移住相談が寄せられる自治体にはどういう傾向があるのか、本誌ライターが分析・解説します。
弊誌「田舎暮らしの本」の人気企画『住みたい田舎ベストランキング』では、回答いただいたアンケートをもとに、さまざまな角度からユニークな取り組みをしている自治体をランキング化。読者の移住地選びの参考になるデータを提供しています。
【集計方法】
対象者:全国の自治体
調査方法:『田舎暮らしの本』からのアンケート
(アンケート送付は、「道府県庁経由でのメール」および「各自治体へ編集部から直接メール」の2ルート)
回答数:587自治体
アンケート実施:2023年10月末 ~ 11月下旬
※各項目の算出方法は表の下に別途記載しています。
掲載:田舎暮らしの本 2024年2月号
【移住相談数が多い自治体ランキング】
※算出方法:2023年度(2023年4月1日から10月末時点)の移住相談数。オンラインを含む。
移住相談が多い自治体は自然環境や利便性などその地域が持っている魅力に加えて、独自の移住政策を展開している地域の目安にもなります。移住希望者に注目してもらわなければ人口減少対策にもつながらないことから、積極的に情報発信をすることが何より大切。移住相談数が多い自治体はその情報が都会の人に届いていることを意味するので、人気度を図る1つのバロメーターともいえるのです。
上の表はオンラインを含めた2023年度(2023年4月1日から10月末時点)の移住相談数が多い自治体をランキングしたもの。やや西日本に多い傾向はありますが、移住希望者に人気の高い自治体が上位を占めています。相談数が1000を超えるのが10市もあるのは注目に値する現象です。
第1位:宮崎県都城市(みやこのじょうし)
移住相談件数が2463件とダントツの宮崎県都城市は、2023年2月に池田宜永市長が「10年後に人口増加へ」の方針を発表して全国から注目を集めました。都城市は宮崎市に次いで県内第2の人口を有する主要都市ですが、2006年に約17万人だった市の人口が約15万8000人にまで減少。それに危機感を抱いて大胆に政策を転換したのです。まず昨年4月から「移住応援給付金」を市独自で開始。転入する前に「都城市移住・定住サポートセンター」に移住相談登録をする、転入後に正社員として就職する・起業する・就農するなどの要件を満たせば、中山間地域等では単身で200万円・世帯で300万円・18歳未満の世帯員1人に付き100万円加算、中山間地域等以外では単身者100万円・世帯200万円・18歳未満の世帯員1人に付き100万円を加算、というものです(令和6年制度改正あり)。
また、「ふなっしー」を起用した動画やPRイベント、モノレール1編成をジャックした車内吊り広告、「住めば住むほど都城」キャンペーンなどを行い、2023年7月ごろから相談件数が急増。移住者数も2023年末に想定した600人の約2.5倍の1522人に達し、2024年2月には同月で13年ぶりに人口増を達成しました。市では第1子・第2子も含む保育料、中学生以下の医療費、妊産婦の健康診査費用という3つの完全無料化を実施しており、人口増加に向けて着実に歩みを進めています。
住めば住むほど都城 | 都城市 移住・定住特設サイト (sumeba-sumuhodo-miyakonojo.jp)
宮崎県都城市の「関之尾滝(せきのおのたき)」は県南地域でも有数の景勝地です。
宮崎県都城市の移住相談風景。PRやキャンペーン、給付金の増額などで相談件数は増加しています。
第2位:京都府綾部市(あやべし)
第2位の京都府綾部市は、大阪市、京都市、名古屋市から鉄道で2時間以内と大都会からのアクセスに恵まれ、昔から移住希望者には人気の高い地域。そのニーズに応えるべく、平成20年にはいち早く移住総合窓口「あやべ定住サポート総合窓口」を設置し、先進的な取り組みを実施してきました。「移住立国あやべ」をスローガンに官民協働で移住者を受け入れ、実績を挙げています。
また、ボランティアが地域のことを教えてくれる「ここらへんのことつたえ隊」も活動。綾部市に来られない人のために、毎月第2日曜日には京都市役所の近くにある店舗「あやべ定住サポート京都サテライト店」で職員が出張相談を実施。地域の魅力を伝えるため、特産品などを販売する「あやべ市」も同時開催しています。入居の際には地域の挨拶回りまで職員が同行するきめ細かなサポートが好評です。
京都府綾部市の「あやべ定住サポート総合窓口」での移住相談風景。早くから移住者の受け入れに対応し、多くの人が綾部市に移り住んでいます。
移住相談数が多いのは、充実した支援体制が口コミで広がっていることの証しでもあります。気になる人は実際に現地を訪ね、自分の目で確かめてみることをおすすめします。
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この記事を書いた人
山本一典
田舎暮らしライター/1959年、北海道北見市生まれ。神奈川大学外国語学部卒業。編集プロダクション勤務を経て、85年からフリーライター。『毎日グラフ』『月刊ミリオン』で連載を執筆。87年の『田舎暮らしの本』創刊から取材スタッフとして活動。2001年に一家で福島県田村市都路町に移住。著書に『田舎不動産の見方・買い方』(宝島社)、『失敗しない田舎暮らし入門』『夫婦いっしょに田舎暮らしを実現する本』『お金がなくても田舎暮らしを成功させる100カ条』『福島で生きる!』(いずれも洋泉社)など。
Website:https://miyakozi81.blog.fc2.com/
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