「移住地の下見をしたいが、どこをめぐり誰に会えばいいのやら……」 そんなとき頼りになるのが自治体のサポートです。お手ごろ料金の移住体験施設に滞在し、気候や住環境を体感。物件の内見、仕事探し、先輩移住者にも話を聞けば、理想の移住へさらに前進!
愛媛県西条市では、移住希望者のニーズに合わせて見学プランをオーダーメイド。市職員が無料で個別に案内してくれます。さらに「1泊2日無料個別移住体験ツアー」なら往復交通費、宿泊費、食費まで無料というから太っ腹!
掲載:2024年3月号
愛媛県西条市 さいじょうし
南に西日本最高峰・石鎚山、北に瀬戸内海、名水百選「うちぬき」など自然に恵まれ、商工業も農林水産業も盛んで求人は豊富。人口10万4474人(令和5年12月)。新大阪駅からJRで約2時間30分。松山空港からバスで約1時間30分。「うちぬき」の無料水くみ場が市内に数カ所あり、澄んだ湧水を源にした用水路も多い。写真は西条市立図書館がある公園。
注目の「住みたい田舎」を深掘りできる
本誌「住みたい田舎ベストランキング」の「若者世代が住みたい田舎部門」で2020年から3年連続1位に輝き、本年も「人口10万人以上20万人未満の市」で全部門2位の西条市。充実の移住施策が話題で、なかでも移住体験施設に滞在して市職員による「無料アテンドサービス」を利用するのが人気だ。
「いわばオーダーメイドの市内案内です。事前に移住希望者にヒアリングして、行き先や会う人をアレンジします」
と移住推進課の山下雄也さん。この取材では西条市の多様性を体感できるコースを設定してもらった。
「休暇村 瀬戸内東予」から西条市を望む。市街地のすぐ奥の、ついたてのような山並みが石鎚山(いしづちさん)系。「滞在中は無料のアテンドサービスで市内を案内します!」と、移住推進課の山下雄也さん。
移住で頼りになる西条市職員の皆さん。西条市役所のロビーにて。
西条市無料アテンドサービスとは?
移住を本気で検討する人の要望に応じて専属コンシェルジュが市内を案内。移住相談員や先輩移住者から話を聞くことも可能だ。土日祝日でも歓迎(年末年始を除く)。希望日の2週間前までに申し込みを。西条市までの交通費や市内での施設利用料、食事代は自己負担。
見たい、知りたいに応え、気づきと出会いに導く
「まずは市を俯瞰します」と、市北端の高台にある温泉宿泊施設「休暇村 瀬戸内東予(せとうちとうよ)」へ。ここから南には、瀬戸内海、造船など商工業が盛んな海辺の市街地、集落が点在する田畑の展望が広がる。印象的なのは、生活圏のすぐ奥にそびえる西日本最高峰・石鎚山を有する山脈。
「市街地から車で少し行けば秘境です。夏はSUPツアーや川遊びでにぎわう渓谷も市役所から車で10分です」
と山下さん。田舎暮らし初心者でも大自然の癒やしを気軽に享受できるという。
「山奥で本格的な田舎暮らしもできますが、個人的には便利な平野部への移住がオススメです。海も山もすぐそこですから」
とはいえ西条の平野部は広く、農業地帯だけでも4700ha超(四国一の面積!)だ。移住地をどう絞り込めばよいのか?
「約20年前に2市2町が合併して今の西条市に。旧自治体ごとに市街地があり、各地域の雰囲気や特徴もさまざまなので、そのあたりも移住前に要チェックです」
と山下さん。そして、市西部の丹原町(たんばらちょう) へ向かった。
「果樹栽培が盛んな地域です」
とは、丹原町でシャインマスカットなどの観光農園を営み、就農を夢見る移住者のよき相談者でもある山内政志さん。ここは扇状地で水はけがよく、日照にも恵まれているのでさまざまな果物がよく育つという。大正時代からの愛宕柿(あたごがき)の産地でもある。
「そんな地元の歴史を伝えたくて、小学校に干し柿づくりを教えに行ってます。今では親も干し柿をつくらないですから」
一見同じような平野部の集落でも、各地域ならではの教育環境があるらしい。子育て環境の深掘りも、この無料アテンドサービスなら対応可能だ。
西条市の平野部に暮らせば瀬戸内海は近い。「休暇村 瀬戸内東予」キャンプ場が整備された白砂の浜(写真上)や、テラスからの絶景(写真下)も。
名水百選の湧水「うちぬき」。西条の中心市街地では「うちぬき」が利用され、水道代は無料!
夏は天然のプールになる清流・加茂川。深山幽谷なこの地まで、西条の中心市街地から車で10分。SUPやカヌーも楽しめる穏やかな水面だ。
果樹栽培を中心に農業の6次産業化を進める農業法人「株式会社ペンタファーム」代表取締役の山内政志さん。就農を目指す人のよき相談相手だ。
観光農園には、バームクーヘンが人気の「PENTA FACTORY」が。敷地内にはツリーテラスやイートインスペースもある。
ペンタファームの観光農園ではヤギやウサギがお出迎え。子どもと一緒の移住地の下見でも楽しめること間違いなし。
暮らしを体感できるお試し移住もオススメ
平野部での日常に触れたければ、移住体験施設での滞在もはずせない。「リブイン西条ハウス」の周囲には駄菓子屋、カフェ、スーパーマーケットやJR駅などがあり、市街地での暮らしを体感できる。子育て支援施設も近所にあり、移住推進課に相談すれば見学も可能だ。
暮らしといえば、「人口が集中する中心市街地では、『うちぬき』という湧水を飲料水にしています」と山下さん。商工業地なのに天然水が日常というぜいたく。カフェや公園など都会的な風景、大自然、工業地帯、農村がパズルのように組み合わさる西条市は一言で表せない地域らしい。
ここでならどんな暮らしも人生も実現できそうだと、無料アテンドサービスは教えてくれた。
西条市の移住体験施設「リブイン西条ハウス」
子ども連れ家族向けの広さと立地
【体験施設データ】
料金:1日1000円(水道光熱費と寝具代含む)
利用できる期間:1泊2日~6泊7日
本気度★★★(現地への移住を検討している人のみ利用可)●間取り:4DK●アクセス:松山自動車道いよ小松ICより車で7分●特徴:小松町の中心市街地にあり、閑静な環境ながら便利な立地。徒歩5~15分圏内にJR駅や飲食店、コンビニ、スーパーなど商業施設が充実。車があれば椿温泉こまつや産直市がある道の駅小松オアシスまで6分。
お問い合わせ:移住コンシェルジュ ☎0897-47-6064
Wi-Fi完備。冷暖房は2台のエアコン(リビングと4.5畳の和室に各1台)あり。脱衣所にドラム式洗濯機あり。アメニティーや洗濯洗剤は要持参。
基本的なキッチン道具は揃っている。IHコンロは1口。
リブイン西条ハウス前の旧街道。近隣には県指定文化財の近藤篤山旧邸などの史跡も。
【周辺のオススメスポット】
子育て世帯の移住の下見で重宝しそうな駄菓子屋「だがしまや」もすぐ近所。外観は普通の家だが、中に入るとそこは子どものパラダイス!
リブイン西条ハウスから徒歩5分の洋風創作料理「わいん食堂カゴヤ10taro(ジュタロ)」のランチ(1380円)。西条市の地元野菜を使った料理やワインが人気だ。
国道沿いには、雄大な石鎚山系をバックに大手スーパーやドラッグストア、銀行などが並ぶ。
JR伊予小松駅まで徒歩5分。停車は普通列車のみで、運行本数は1時間に約1本。
道の駅小松オアシスにある産直市場「小松おあしす市場」。地元の農産物や特産品を販売。すぐ近くには「椿温泉こまつ」も。
西条市移住体験施設 利用時のアドバイス
【申し込み方法】
「LOVE SAIJO」のサイトで空き状況を確認して電話にて予約。その後、利用7日前までに貸付承認申請書・本人確認書類の写し・滞在予定表を提出し、貸付承認通知書を受け取ったら賃貸料を郵便局で振り込む。
「LOVE SAIJO」(お試し移住用住宅)https://www.lovesaijo.com/house/
【オススメのアクティビティ】
自然に恵まれた西条市はアウトドアの聖地。清流での川遊びやSUP体験、格安のクライミング施設、フォレストアドベンチャー、キャンプ、瀬戸内海での釣りなど、子どもも大人も楽しめるアクティビティがずらり。
オリンピックの強化合宿も可能な石鎚クライミングパーク西条。
オススメの西条市滞在プラン
「1泊2日無料個別移住体験ツアー」
往復交通費・宿泊費・食費がすべて無料で、日程や訪問・体験先の要望にも応える移住体験ツアーを西条市が用意。子ども連れでの参加も大歓迎。申し込みには東京や関西圏で開催される移住セミナーへの参加が必須。セミナーの開催日は「LOVE SAI JO」のサイトでチェック。
西条市移住支援情報
移住のきっかけから定住後まで応援
東京や関西圏では、先輩移住者の声も聞ける移住セミナーを今年も開催。移住の下見で「リブイン西条ハウス」に滞在するなら格安のレンタカーサービスあり。家探しは、登録件数約280の空き家バンクでサポート。引っ越し費用割引や、住宅改修費用の補助制度もある。子育て世帯には、高校生まで医療費無料など充実の子育て支援を用意。
お問い合わせ:移住推進課 ☎ 0897-52-1476
「LOVE SAIJO」https://www.lovesaijo.com/
木のぬくもりを感じさせる子育て交流センター「ここてらす こまつ」。
多目的室。西条市には、ほかにも地域子育て支援センターや児童館など子育て施設が12カ所ある。
「移住という人生の挑戦を、西条市は応援します!」
移住推進課 山下雄也さん
文・写真/大村嘉正
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