首都圏からのアクセスがよく、湯量豊富な温泉が湧き、相模灘に面した景勝も楽しめる静岡県伊東市。伊豆高原の別荘地に移住し、自宅敷地内にキャンプと犬用品のショップを開業した大曽根さん夫妻。店のことや伊東での暮らしの様子をお聞きした。
掲載:2024年6月号
CONTENTS
静岡県伊東市 いとうし
伊豆半島の東に位置し、市域の44.7%が「富士箱根伊豆国立公園区域」に指定されている風光明媚なまち。一年を通じて海洋性の温暖な気候だ。市内南部の伊豆高原地区には、分譲地や別荘地があり、移住者も多い。東京駅から伊東駅まで新幹線と伊東線を利用して約90分。
愛犬ファーストで伊豆への移住を検討
大曽根 崇さん、牧子さん
崇さんは岐阜県出身、牧子さんは青森県出身。結婚後、神奈川県でマンションを購入したが、愛犬が過ごしやすい環境を求め、伊東市伊豆高原の中古住宅を購入して2019年に移住した。敷地内の一角にトレーラーハウスを設置し、キャンプ用品と犬用品を扱うショップ「&g」をオープン。写真はショップの前で店長のグラムと大曽根さん夫妻。アウトドアブランド「スノーピーク」と建築家・隈研吾氏が共同開発したモバイルハウス「住箱(じゅうばこ)」の展示品を約500万円(オプション付き)で購入して店舗として活用。
&g(アンドジー)
住/静岡県伊東市八幡野1084-78 ☎070-1413-2655
営/10:00~17:00(夏季は日没まで) 休/水・木曜日 https://and-g.jp
Instagram/@andg_jp
https://and-g.jp/
伊豆半島の東側、伊豆高原の静かな別荘地のなかに、モバイルハウスのショップ「&g」がある。店主の大曽根崇さんと牧子さんは大の犬好き。グラムの前にもワイヤーフォックステリアを飼っていて、暮らしの基本は愛犬ファーストだ。
神奈川県のマンションで暮らし、週末には伊豆を訪れ、愛犬グラムと砂浜を散歩したり、釣りやSUP、キャンプをしたりしていた。犬がより暮らしやすい環境を考え、「伊豆で暮らしたい」と土地を探すが見つからず、中古住宅探しへと切り替えたところ今の家に出合った。グラムが走れる広い敷地、牧子さんの希望である海が望める家、どちらもかなう。
「もとの家主が建築家だったそうで、カッコいい外観が一目で気に入りました。築40年でしたが傷みは少なく、トイレとキッチンをリフォームするだけで済みました」
移住当初は、新幹線を利用して片道約2時間かけて都内の会社へ通勤していた崇さん。会社からの交通費補助はあるが、半分ほどは自己負担だ。コロナ禍でリモート業務となったものの、仕事の内容が変わり、やりがいが見いだせなくなった。
「いっそのこと、こっちで仕事をしようと。貸別荘や民泊施設、釣り道具屋などあれこれ考えましたが、2人とも大好きな犬とアウトドアにかかわる仕事がいい。伊豆高原は〝犬高原〞と呼ばれるほど、飼っている人も多く、犬を連れて旅行に来る人も多い。にもかかわらず専門店がないのでちょうどいいなと思いました」
お店のロゴは牧子さんがデザイン。「私たちとグラム、そしてお客さまと大切な存在。一緒に過ごす時間や結び付きをより豊かにできたらと思い『&g』という店名にしました」。
仕入れ担当は崇さん。「お店の独自性が大切です。またネットでブランドを検索した際に、『&g』という店名が上位になるように工夫しています」。
店内には、希少なブランドなど楽しい品物がたくさんあり、宝箱のよう。
釣りやガーデニングをし愛犬とのんびり暮らす
移住した際に、近所の方が手伝ってくれて道路に面した敷地の一部を整地して、芝生のドッグランをつくってあった。そこに、スノーピークの木でできたモバイルハウス「住箱」を設置して店舗に。店長はもちろんグラムだ。小売IT業界でマーケティングと事業企画をしていた崇さんは仕入れ担当、デザイナーの牧子さんは店のカタログやWEBを担当。ほかではあまり売っていないブランドで、2人が使いたくなるものを中心に販売している。
伊東は首都圏に比べ、冬は暖かく、夏は少し涼しい気候で、暮らしやすいと話す大曽根さん夫妻。別荘地といっても定住している人も多く、お店に寄ってくれる近所の方もいる。周囲にはおいしい飲食店が点在し、隠れ家的な店や犬と一緒に入れる店もある。スーパーやコンビニも徒歩圏で不便はない。
「海まで近いので、すっかり磯釣りにはまっています。ヒラスズキやカンパチなどが釣れますよ。自分で釣って調理した魚は格別です」と崇さん。
広い敷地なので、定期的にチェーンソーで木を切ったり、雑草を除いたりといった手入れが必要だが、それも楽しい。牧子さんも、庭に花を植えて育てたいと笑う。
今後は、もっと商品数を増やしていきたいと話す崇さん。伊東への移住を機に始まった「&g」という店が、大曽根さん夫妻と地域やお客さんたち、そして愛犬たちを結ぶ絆となっていくことだろう。
移住後も南伊豆でSUPをしたり、下田で釣りをしたりと伊豆半島を満喫。グラム店長の服とライフジャケットは「&g」で販売している。
グラム店長とのお散歩も毎日の楽しみ。よく行くのは「城ヶ崎自然研究路」で、風景を眺めながら散歩ができる。
傾斜地の上に立つ自宅。最上階の窓からは海が見え、見晴らしは最高にいい。デッキではBBQを楽しんでいる。
【大曽根さん夫妻からアドバイス】
愛着を持って長く使える独自性のある商品をセレクト
国道沿いなどと違い、お店が別荘地という不便なところにあります。そこをカバーするのが商品のセレクト。僕たちは、希少性があるブランドで、機能性も高く、お客さまが愛着を持って長く使えるものを選ぶようにしています。ときにはブランドに別注してオリジナル商品をつくってもらったり。Webのデザインやインスタの写真は目に留まるように工夫しています。実店舗とネット販売では、ネット販売のほうが売り上げは多いです。
「インスタでグラム店長を見て、会いに来てくれる方もいます!」
伊東市移住支援情報
お試し移住の宿泊費用補助やNPOによる市内案内も
海に山に温泉にと、環境に恵まれた伊東市。東京へのアクセスもよく、近年では、独立開業する移住者や首都圏へ通勤する移住者も増えている。市では、お試し移住をする際の宿泊費用を補助、NPO法人による市内案内「現地ナビゲート事業」も実施している。また、取得した住宅の改修にかかる費用の一部(上限15万円)を補助するなど、さまざまな支援制度を用意している。
問い合わせ/企画課 ☎0557-32-1062
https://ito-iju.jp
伊東温泉最大のイベント「按針祭(あんじんさい)」のフィナーレを飾る花火大会。
「いごこち、ゆごこち、ひとごこち、『ほどよい伊東』でお待ちしてます!」
企画課 三好亮貴さん
文/水野昌美 写真/鈴木千佳 写真提供/伊東市、大曽根 崇さん
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