福祉イベントの司会や講演活動
中村さんは、実体験をもとに高齢者福祉に関する講演会を開催。多くの人々に影響を与えているようです。
「福祉領域を目指す学生と事業所を結ぶイベントなどの司会もさせていただいたり、『高齢者とのコミュニケーション術』やボランティアを始めたい人のための『ボランティア講座』などの講演会なども開催しています。おかげさまで、だいぶ開催回数も増えてきました。僕の経験をお話しする内容なんですが、リアルな話がウケるんですよね。しっかり講演を聞いてもらえるので、やりがいを感じますし、住みます芸人として地域に貢献できていると実感する活動です」
東京都住みます芸人としての苦難
首都である東京で住みます芸人として活動するには、首都圏で活躍する芸人と同じようなことをしていては埋もれてしまうと中村さんは語ります。
「僕は、東京住みます芸人。でも、芸人って、ほとんどの人が東京住みます芸人なんですよね。東京で地域貢献するお笑いの活動をしたとしても、普通の仕事になってしまうことが多いんです。なので、 『住みます芸人がやる仕事』を意識しています。
そこで、東京の住みます芸人の活動で重要だと思ったのが『ふれあい』です。僕の場合は、それに限ります。仕事とは別のところで、いかにお話しして、打ち解けるかが大事なんです。
高齢者の前で漫談する私に対して、『ちゃんと高齢者たちに打ち解けて漫談ができているのは、中村さんがお弁当を届けて安否確認してくれていることで、高齢者の方と真剣に向きあってるっていう気持ちが、しっかり伝わっているからよ!』と言っていただいたことがうれしかったですね」
住みます芸人の活動で、悔しい思いもしてきたと話す中村さん。そこから学んだこともあったといいます。
「高齢者漫談を始めて1年くらいたったときに、ある事業者の方から『中村さんの漫談は、笑わせてるだけ。私たちは、高齢者の方たちと一緒に何かをしたいんです。参加できるものがないんだったら、もう呼べないです!』と言われたことがあったんです。それがもう悔しくて……。お笑い芸人として活動しているので、悔しかったですね。『なんで笑わせるだけじゃダメなんだ?』って……。先輩芸人のレギュラーさんが営業でやっている、レクリエーション介護みたいなものが求められていたんでしょうね」
高齢者と笑いを共有できる健康体操を考案
中村さんは、悔しい思いから、高齢者と一緒に体験できる“何か”を考え続けたそうです。そこで、お弁当配達で目の当たりにしていた、あることに気づきました。
「お弁当の配達先で、喉の筋肉が衰えて食べ物が食べられなくなってきている方々にたくさん接してきました。喉の筋肉が衰えると、食事が楽しくなくなってしまうようなんです。なんとかしてあげたいって思っていたんですよ。そこで、嚥下機能低下を予防する『お口の健康体操』なら、高齢者も一緒に参加してくれるんじゃないか? そう感じたんです。それからすぐに、お口の健康体操の訓練方法を調べました。ただ、自分の知識と小手先の勉強では、納得がいく完成度には到達しません。そこで、言語聴覚士の方にお願いして、勉強会を開いていただき、基礎から応用までしっかりレクチャーしてもらいました。その結果、『パタカラ体操』という訓練にお笑いの要素をプラスした、中村ひでゆきならではの『パタカラお口の健康体操』ができあがったんです。今では、高齢者漫談の後半の時間帯に、高齢者の方たちと一緒に大きな声を出して レクリエーションを楽しくやらせていただいています。その模様をYouTube「中村ひでゆきの高齢者漫談チャンネル」でも公開していますので、よかったら見てみてください」
様々な効果が! 高齢者漫談の意義
中村さんの高齢者漫談は、今では毎回大盛況。イベント終了後には、多くの高齢者が中村さんに声をかけてくるようになりました。
「とにかくみなさんお元気で、漫談終了後の会場ロビーでも、何人もの高齢者の方々にお声がけいただくんです。『ありがとう!』と言ってもらえることも多くなった気がします。施設のみなさんで僕への手紙を書いてくださることもあったり、手作りの歓迎ポスターやうちわを用意してくださるところもありました。
余談ですが、『うちわや手紙を用意することも手遊びのレクリエーションになっているようで、それはそれで意味があることなんです』と、施設のスタッフの方から聞いたことがあり、しっかり貢献できているんだなって実感することもありました。それが今の自信につながっています」
全国で注目を集める高齢者漫談の広がり
中村さんの高齢者漫談は、東京都内だけでなく、全国各地でも広がっています。地域の高齢者に笑いを届けるだけでなく、福祉の分野でも注目を集めているようです。
「東京だけでなく、地方の自治体からも呼んでいただく機会に恵まれるようになってきました。全国各地で高齢者漫談をすることで、高齢者事業に関わっている方からの応援の言葉や感謝の言葉をいただけるようになって、それが広がっているんです。また、高齢者事業に関わっていない方からも、高齢者事業に関するいろいろな知りあいを紹介していただける機会もあります。
とはいえ、まだ東京のすべての市区町村には回れていません。東京は都会のイメージがありますが、実は、白然も豊かで、伊豆諸島に9つ、小笠原諸島に2つ、計11の有人島があるんですよ……。僕は東京都の住みます芸人なので、市区町村すべてを漫談で巡る『東京62市区町村ツアー』を完遂したいんです。都心ではない高齢者たちにも漫談を聞いてほしいので、吉本興業のエリアマネージャーと一緒に区役所、市役所などに飛び込みで営業に行っているところです。
僕が漫談で訪れることによって、高齢者の方が自宅から出て漫談を聞きにいこうという気持ちになってくれたらうれしいですね」
最後に今後の展望を伺いました。
「当面は『東京都62市区町村』なんですが、それに限らず、『全国47都道府県』も高齢者漫談で回っていきたいと考えています。
全国の『老人クラブ連合』『高齢者クラブ連合』『シルバー人材センター』でのレクリエーションに、あるいは『介護予防施設』『高齢者支援センター』などの自主事業などでも、是非ともご検討ください。
この記事をご覧の高齢者のみなさん。是非ともお声がけください! ありがとうございました! みなさんお達者で!」
中村ひでゆきさんの活動は、笑いと福祉を融合させた新しい取り組みです。高齢者との交流や漫談は、多くの人々に笑いと喜びをもたらしていくでしょう。今後も中村さんの活動が広がり、さらに多くの人々に健康や生きがいをもたらすことを期待しています。
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