新幹線延伸で東京直通！文化と自然が揃う居心地のよい港町【福井県敦賀市】

今年3月に金沢から西へ延伸開業した北陸新幹線。終点の敦賀は、主要観光施設7カ所で2カ月間の来訪者数が前年同期比で約1.5倍を記録した。北陸で注目を集める敦賀市の魅力と移住目線の注目スポットを紹介しよう。

掲載：2024年10月号

福井県敦賀市つるがし
福井県のほぼ中央に位置し、人口は約6万2000人で、嶺南（れいなん）地方最多。天然の良港敦賀湾を有したことから江戸時代には日本海の海運を担った北前船の寄港地として栄えた。現在は、セメントや木材、原子力発電関連の産業が盛ん。京都駅から特急で約50分。

知的好奇心が刺激され、生物多様性に触れる旅

敦賀市企画政策部政策推進課人口減少対策室の前川順紀さん（33歳）が案内してくれたJR敦賀駅。北陸新幹線利用での東京からの所要時間は最短で3時間８分。

　北陸新幹線の延伸開業で東京から乗り換えなしで行けるようになった福井県。現行の終点となる敦賀駅は開業した3月の利用者数が前年同月比の160％を記録した。その効果は敦賀港に臨む金ヶ崎緑地や鉄道資料館、赤レンガ倉庫などの主要7施設にも表れ、開業2カ月間の累計利用者数が20万人を超えた。なかでも全国的に注目を集めているのが敦賀駅西口駅前に昨年開業し、同2カ月間に約10万人が訪れた知育・啓発施設「ちえなみき」だ。

　ちえなみきは、敦賀市が公益施設を提供し、書籍販売丸善の系列会社丸善雄松堂と編集者・松岡正剛の編集工学研究所が手を組んで運営する日本初の公設民営書店。店内は、木を思わせる枝分かれした書棚に理論的な連続性を持った書物が並び、見え隠れする隣の棚の蔵書にも関心をひくよう空間がデザインされている。ソファやカフェスペースがあり、時間を忘れてくつろぎと新しい発見に出合える新名所になっている。

　敦賀はもともと海運で栄えた町で、明治時代にはロシアのウラジオストクへ定期船が就航し、シベリア鉄道経由で欧州と日本を結ぶ拠点だった。一時は東京発パリ行き切符も存在したという。その名残で、敦賀駅から金ヶ崎緑地までの約2kmには町屋や洋館などの古い建物が並ぶエリアや商店街が続き、敦賀の文化を感じながら地元のグルメを楽しむことができる。

　生粋の敦賀っ子で市の人口減少対策室に勤める前川順紀さんが、「市内を巡るには15 カ所あるポートで乗り捨てが自由な『つるがシェアサイクル』と、グルメや歴史スポットをスマホで案内してくれる地図アプリ『ディグ・ザ・ローカルつるが』を併用するのがオススメ」とアドバイスをくれた。駅前にサイクルポートがあるので、新幹線で訪れる人にも便利だ。

ちえなみきが入るTSURUGA POLT SQUARE“ otta”。人が交わりにぎわう拠点として、芝生の広場を中心にホテル、飲食店、子育て支援施設などが整備されている。

“World Tree”を空間コンセプトに木の幹や枝を思わせる書棚が配置された、「ちえなみき」。本の森に分け入るような楽しさがある。

北陸新幹線延伸開業を記念し、3月16・17日には「つるが街波祭」を開催。市街地各所で観光物産展や敦賀まつりの山車が引きまわされるなどのイベントでまちをにぎわせた。

駅前にある「つるがシェアサイクル」のサイクルポート。ICカードを使って電動自転車を気軽に利用できる。利用料は220円／時〜。

　敦賀は嶺南（福井県南部）で一番大きなまちだが、自然も近い。駅から自転車で約10 分の場所にある中池見（なかいけみ）はラムサール条約に指定された25haの湿地に、デンジソウやミズトラノオなど60種以上の絶滅危惧種を含む約4000種の動植物が生息。前川さんも少年のころからよく遊びに行っていたそうだ。また、中池見から金ヶ崎にかけての山並みは、織田信長が浅井長政の寝返りで命からがら逃げ帰った「金ヶ崎の退き口」の舞台で、現在は自然歩道が整備されてハイカーの姿が多く見られる。

「9月にはミュージックフェス『おぼろっく2024』が開催されます。新幹線開業で活気づいている今、ぜひ、お越しください！」

　と熱く語る前川さん。昨年は、60人を超える移住者をサポートしたそうだ。文化や歴史、自然が揃う敦賀のまちを、暮らす目線で訪ねてみるのも面白いのではないだろうか。

中池見にある築約100年の古民家。すぐ近くにあるビジターセンターでは、湿原で見られる動植物や散策ポイントの情報を得ることができる。
敦賀港沿いにボードウオークが敷設された金ヶ崎緑地。週末にはクラフトマーケットやマルシェが不定期に開催されている。

おぼろ昆布は北海道から昆布を運んでいた北前船の歴史を受け継いだ郷土の味。職人が手で削り、年齢を問わず人気が高い。

越前海岸や若狭湾で獲れた魚介類を味わわない手はない。エビやイカ、タイ、ハマチなどを豪快にのせた海鮮丼がオススメ。

「新しい暮らし」へのアドバイス

まちにはスーパーや病院、学校、ホームセンター、映画館など、生活に必要な施設がコンパクトに揃っている。そのため、市街地の中心部に住めば車がなくても生活に困ることはない。それでいて、市街地から外へ出れば山も海もある。市の有効求人倍率は全国でもトップクラスで、移住しやすい環境が整っている。

敦賀市役所。移住へのハードルが「低い」整った生活環境だ。

敦賀市移住支援情報
最大120万円の空き家購入補助。手厚い子育て支援にも注目！

「移住支援制度（全国型）」では、単身の場合（30歳未満）は最大30万円、世帯の場合（代表者が40歳未満）は最大50万円の市内で利用できる福井県デジタル地域通貨「ふくいはぴコイン」を3年分割でプレゼント。「移住者への住まい支援事業」では、移住者が空き家バンクに登録されている空き家を購入する場合に最大120万円の補助、さらに購入した空き家をリフォームする場合には最大60万円の補助がある。また、移住者かつ子育て世帯には、市営住宅の家賃補助も実施。ほかにも多彩な支援があるので問い合わせを！

問い合わせ／政策推進課　☎0770-22-8111
「KURAS TSURUGA」https://kuras-tsuruga.jp

総合運動公園内の「ちびっこ広場」にはふわふわドームや大型遊具など、子どもたちが大好きな遊具がいっぱい！