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田舎暮らしの本 12月号

最新号のご案内

田舎暮らしの本 12月号

11月1日(金)
890円(税込)

© TAKARAJIMASHA,Inc. All Rights Reserved.

【親子で田舎体験vol.2】恵まれているのは都会か田舎か。減っていく子どもの遊び場や体験格差を考える。|海と山、春夏秋冬の自然の魅力を味わえるまち【新潟県上越市】

執筆者:

高木さんの想い「子どもたちのサードプレイスをつくりたい」

「東京にいるときは、田舎に行けば、子どもが遊べるところがたくさんあると思っていました。確かに、空き地はたくさんある。でも、公園は、もしかしたら都会より少ないくらいで……」

 Cha-yaをスタートしたきっかけを尋ねると高木さんが話してくださいました。

「都市部だと、民間の学童や習い事もたくさんありますよね。清里の子どもたちはそれも少ない。そういった面でいえば、都市部より清里の方が“子どもの居場所”が少ないといえるかもしれません。家庭と学校以外の第3の居場所、サードプレイスの選択肢がほとんどなかったんです」

 子どもの「サードプレイス」の必要性は、最近注目されているテーマです。サードプレイスとは、家庭(ファーストプレイス)や学校(セカンドプレイス)以外で、子どもが自由に過ごせる第3の居場所のこと。家庭や学校のような固定された環境ではなく、子どもが自分のペースで自由に過ごし、他者と交流する場所を持つことで、主体性が育まれ、それが子どもの自信につながっていきます。また、学校や家庭でストレスを感じたときに、自由で安心できるもう一つの居場所があることが精神的な安定にもなるので、子どもの心身の発達や社会性の向上のためにサードプレイスを持つことが非常に重要だといわれています。

「年齢やバックグラウンドの違う人たちと関係を築いていくことで、子どもたちは多様性を学んで、社会性やコミュニケーション能力を身に着けていくと思うんです」と、高木さん。

 それはまさに、Cha-yaで過ごす息子を見ていて実感したことです。経験がないから、新しい人間関係を作ることを怖がっていた息子が、たった2泊3日の期間で、新しい友達の作り方と、その楽しさを知ることができました。

「地域で子どもの居場所をつくっていくことを目的に据えて、Cha-yaを多世代が集まる地域の交流の場所に育てていきたいです。農家民宿も、こらからもっと力を入れていきたいですね。

 清里は素晴らしいところなのに、これまで長期滞在できるような宿がなかった。Cha-yaができたことで、深く清里を知ってもらうことができるようになりました。関係人口を増やすことに繋げられたらと思っています」

 Cha-yaでは、宿泊客に、清里の暮らしを体験できる、農業体験などの体験メニューの提供もしており好評です。

「観光ではなく交流が生まれる体験宿にしていきたいんです。スタートして半年、県外のみならず、海外からのお客様にも来ていただきました。そういった方との交流が、地域住民にとってよい刺激になり、さらには、自分たちの住む地域への誇りに繋がっていくのではないかと考えています」

「清里には素晴らしい自然があります。清里の子どもたちに、この土地に誇りをもって育っていってほしい。私たち大人がその背中を見せていけたらと思っています」

清里いばしょベース cha-ya
所在地:新潟県上越市清里区武士1216
JR上越妙高駅から車で約15分、上信越自動車道 上越高田ICから約15分
TEL: 090-7512-9078
1泊2食:9,000円~ 、1泊朝食付き:6,000円~、素泊まり :4,500円~

たくさんの価値観に触れながら成長してほしい

 田舎には、子どもたちの創造力を刺激する、豊かな自然と広い敷地があります。それは、私のような都会で子育てをする母親にはとても魅力的に映ります。一方で、都市部と田舎の体験格差、田舎の子どもたちは、都会の子どもたちに比べて、旅行や習い事、文化体験や、なんと自然体験についても参加率が低い、というデータが話題になっています。高木さんもおっしゃっていたように、田舎には、子どもの体験に繋がる施設や習い事などのサービスが、都会のように身近にはありません。

 だから子どもの過ごす場所や、体験の問題は、都会も田舎も共通の、現代の社会全体の問題。取り組んでいくべき課題です。そして、今回、Cha-yaで新しい挑戦をしている高木さんと息子さんをみて感じたのは、親の想いもきっと同じだということ。「子どもに、できるだけたくさんの価値観に触れながら、のびのびと成長してほしい」。

 東京に戻って、息子は小学校に入学しました。登校初日、今日は学校まで送っていくよと一緒に家を出たのですが、途中で「ここからは一人で行くからついてこないで」と言われてびっくり。大きなランドセルをしょって歩いていく後姿はまだまだ小さくて、なのにもう、こうやって一人で歩いていけるようになったのだなと、私の方が泣いてしまいそうでした。

 息子は小学校であっという間にたくさんの友だちをつくって、毎日楽し気に、学校であったことを報告してくれます。

 小学校生活の6年間は、子どもの成長においてはとても長い期間です。きっとこれから、息子も、息子を見守るうえで私も、いろんな壁にぶつかるのだろうな。そういうとき、親子で旅する田舎が、私たち親子にとっての「サードプレイス」になっていくような気がしています。

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この記事を書いた人

揖斐 麗歌

揖斐 麗歌

いび れいか|東京都在住、宮崎県出身。出版社勤務を経て、2023年子育て世帯と地域をつなぐことを掲げて㈱IBIを設立。6歳の男の子と2歳の女の子の子育て中。田舎ならではの親子時間を目的に、リモートワークをしながら親子で日本各地を巡っています。

Twitter:@oyakodeinaka

Instagram:@oyakodeinaka

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