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田舎暮らしの本 10月号

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田舎暮らしの本 10月号

9月3日(火)
890円(税込)

© TAKARAJIMASHA,Inc. All Rights Reserved.

ボケても大丈夫!誰も一人ぼっちにしない。熱意から生まれた「認知症×お笑い」の発想。さらに町唯一のパン屋さんをオープン!日用品も一緒にお届け!?|鹿児島県住みます芸人「(仮)たろう」

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買い物難民を救う、配達するパン屋さん開業への新たな挑戦

 鹿児島の田舎の方に行くと、高齢者の人口が増える一方で、スーパーが一軒しかないという場所がざらにあるといいます。もちろんコンビニも商店もなく、多くの高齢者が「買い物難民」になっているのです。

日用品など必要なものを一緒に配達し、会話を楽しんでもらいたい

 都市部から離れた地域には、免許返納や町の過疎化によって買い物難民となっている高齢者が多くいる現状に直面した仮屋さん。そんな人々を助けるために、パンと一緒に日用品も配達するパン屋さんの構想を練り始めます。

「ティッシュとかトイレットペーパーとか、生活に必要なものを買って、パンと一緒に持って行ってあげるサービスであれば、多くのおじいちゃんおばあちゃんを手助けできるのではないかと思いました。地方の場合、多くは子どもたちが別の場所で暮らしていて、実家に帰ってくることはなかなか難しいですよね。そこで僕が代わりにおじいちゃんおばあちゃんを助けに行き、配達のついでにコミュニケーションが取れればいいなと思ったんです」

 この配達パン屋さんの大きな目的は、パンを作ったり売ったりすることではなく、会話を通しておじいちゃんおばあちゃんに楽しんでもらうことだといいます。

空き家となった祖母の家を自らの手でリフォームする

 配達パン屋さんの構想を立ててから、仮屋さんはパン教室に通ったり、知り合いのパン職人にパン作りを教わったりと、修行に励みます。そして、約1年半の修行期間を経て、2022年7月に修行を終了させました。

配達パン屋さんの構想を立ててから、仮屋さんはパン教室に通ったり、知り合いのパン職人にパン作りを教わったりと、修行に励みます。そして、約1年半の修行期間を経て、2022年7月に修行を終了させました。

 店舗を構えるのは、空き家となった祖母宅。仮屋さん自ら店舗設計図を手書きし、多くの地元の人々の協力のもと、オープンに向けて着々と準備が進められました。

 また、開業資金を集めるために行ったクラウドファンディングも、開始直後からたくさんの方から支援が送られ、なんとわずか1か月で目標金額を達成したのです。

町唯一の配達するパン屋さん「ばあちゃんち」がグランドオープン!

 2023年10月21日、ついに日用品も配達するパン屋さん「ばあちゃんち」がグランドオープンしました。パン屋開業を決意してから1年半、ついに仮屋さんの夢が実現したのです。

 初日の店頭に並んだパンの種類は10種類。この日のメニューは、地元住民の方を招いて「メニュー決めイベント」を開き、投票によって決められたものです。また、仮屋さんは味加減や提供方法など、細かい要望も取り入れ、地域の方々の思いに寄り添ったパン屋さんが出来上がりました。

2023年10月21日、ついに日用品も配達するパン屋さん「ばあちゃんち」がグランドオープンしました。パン屋開業を決意してから約1年半、ついに仮屋さんの夢が実現したのです。

 朝4時に起きてひたすらパンを焼き、250個ものパンを用意して開店に臨みます。しかし、オープン前からすでに行列ができており、なんと開店30分で完売してしまったのです。

「台風や大雨の影響でオープンの日が延期になってしまって、みなさん本当に待ち焦がれてたと言ってくれました。おじいちゃんおばあちゃんだけでなく、住民の方々の笑顔も見れて、頑張って良かったなと思います。価格はやや低めに設定していますが、僕自身の利益よりも、おじいちゃんおばあちゃんたちがパンを食べながらしゃべって、楽しくなってくれればそれでいいと思っています」

町全体に広がるパンの配達と繋がり

 配達するパン屋さん「ばあちゃんち」がオープンしてから、半年ほどが経った頃。すでに肝付町にある6つの地区のうち、4か所での配達が決定しました。

「各地区で月に1・2回の配達なので、営業日のほとんどはどこかに配達に行っています。色んな地区に行くとそれぞれの場所で発見があって、とても面白いんです。たとえば、人気のパンの種類も全く違うし、その地区ならではの貴重な話も聞けたり、僕自身が楽しませてもらっています」
※「ばあちゃんち」は毎週火・木・土曜営業

 さらに、仮屋さんが作るパンは「美味しい」ととにかく評判が良く、様々な地域に住むおじいちゃんおばあちゃんによってクチコミが広がっていきました。ついには県内の色々なイベントやお祭りから出店の声がかかるようになるほどの人気っぷり。

「今では肝付町外の色んなイベントに参加させてもらっています。皆のおかげでどんどん輪が広がることがとても嬉しいですね。今後は僕自身が企画を立てて、より多くのおじいちゃんおばあちゃんが楽しめるようなイベントを開催したいと思っています!」

 仮屋さんにとってなによりも大切なことは、本当の意味で1人1人の高齢者を楽しませること。

「講演会にしてもパン屋にしても、私がとにかくやりたいことが高齢者を中心に誰かのためになるのであれば、それだけで力が湧いてきます。これからも、肝付町が盛り上がり、おじいちゃんおばあちゃんの楽しみが増えるような活動に全力で取り組んでいきたいです!」


地元を思い、ひとりでも多くのおじいちゃんおばあちゃんの笑顔のため、芸人としての活動に留まらず、講演会やパン屋の開業など、仮屋さんの活動の域は留まることを知りません。常識に捉われず、地域住民の声に耳を傾けながら自分に出来ることを模索し続ける彼の底知れないパワーは、これからも町や人々に希望と笑顔を与えてくれることでしょう。

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  • 鹿児島県住みます芸人として活躍する(仮)たろう(仮屋竹洋さん)。
  • 少子高齢化、増える空き家、閑散とする町…様々な課題を抱える肝付町の現状に気付いた仮屋さんは、自分がやるべきこと、自分にしかできないこと、地域に本当に必要とされていることを、真剣に考え始めます。
  • 昔から大のおばあちゃんっ子だった仮屋さん。祖母の認知症をきっかけに、認知症についての勉強を始めます。
  • 認知症とお笑いを融合した講演会を考えた仮屋さんは、新喜劇の定番のギャグ「邪魔すんで」「邪魔するんやったら帰って」「はいよ~」を、高齢者の方々に実践してもらうことにしました。
  • もっと地域のおじいちゃんおばあちゃんとの交流を深めたいと考えた仮屋さんは、文通を始めました。
  • コロナ禍に行った「ZOOMお茶会」も大盛り上がり。リモートに慣れない様をみんなで笑ったり、貴重な過去の体験談を教えてもらったりと、参加者全員で楽しみました。
  • 配達パン屋さんの構想を立ててから、仮屋さんはパン教室に通ったり、知り合いのパン職人にパン作りを教わったりと、修行に励みます。そして、約1年半の修行期間を経て、2022年7月に修行を終了させました。
  • 2023年10月21日、ついに日用品も配達するパン屋さん「ばあちゃんち」がグランドオープンしました。パン屋開業を決意してから約1年半、ついに仮屋さんの夢が実現したのです。

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田舎暮らしの本編集部

田舎暮らしの本編集部

日本で唯一の田舎暮らし月刊誌『田舎暮らしの本』。新鮮な情報と長年培ったノウハウ、田舎で暮らす楽しさ、心豊かなスローライフに必要な価値あるものを厳選し、多角的にお届けしています!

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