銭湯文化の伝道師として銭湯プロジェクトを始動
多岐にわたるガオ~ちゃんさんの活動の中でも特筆すべきは、「銭湯プロジェクト」。
「西成が好きな理由のひとつとして、銭湯がたくさんあるというところがあります」というほど、もともと銭湯が大好きだったガオ~ちゃんさん。しかし、最近街の銭湯は減少の一途をたどっています。そんな銭湯業界の衰退に待ったをかけるべく、動き出しました。
消えていく街の銭湯……厳しい現状とどう向き合うか
自家風呂の普及や燃料の高騰、後継者不足……様々な理由から、街の銭湯が廃業に追い込まれています。
「昔から銭湯が大好きで、あちこちの街の銭湯を巡っていました。そんな中で感じたのが、銭湯が色々な街から消えていく現状です」
西成は、大阪府で見ても比較的銭湯が多い街です。日雇い労働者や安宿暮らしなどでお風呂がない人がたくさんいるので、いまだ銭湯文化が根付いているようです。しかし、そんな西成でも、ポツポツと銭湯が姿を消していくというのです。
「いつも通っていた銭湯が突然なくなることになったときは、本当にショックでした。銭湯って芯から温まるし、心も体も癒やされますよね。しかも、大きな浴槽に入れてちょっとした贅沢気分も味わえる。たった数百円で完璧にリフレッシュできる『ワンコイン旅行』と呼んでいます。そんなコスパの良い健康法って、ほかにないと思うんです」
ストレス社会といわれる現代で、銭湯は大きな効果をもたらすと考えるガオ~ちゃんさん。そんな銭湯の素晴らしさや魅力を発信し、銭湯業界を盛り上げるべく、新たな挑戦を始めました。
銭湯にまつわる様々なイベントで、銭湯に興味を持つきっかけになりたい!
銭湯の魅力を伝えるため、そして銭湯に興味を持つきっかけになるため、ガオ~ちゃんさんは様々な試みを考えます。
たとえば、西成の銭湯とコラボした、「西成クラフトビール風呂」の実現がそのひとつ。
温泉や銭湯には「変わり湯」というものがあり、薬草風呂やゆず風呂など、異なる泉質や効能を持つお風呂を四季やイベントに合わせてお湯を変えます。そこでガオ~ちゃんさんは、西成にあるクラフトビール工場にちなんで、そこのホップを使った変わり湯イベントを行いました。協力してくれたのは、西成にある「天水湯」さん。ホップの良い香りと、黄金色のお風呂で非日常の特別感を味わえる「西成クラフトビール風呂」は大好評でした。
他にも、西成の「入船温泉」さんの協力のもと、ガオ~ちゃんが一日店長として番台(受付)に立ってお客さんと交流するイベント「ガオ風呂」も開催しました。
「僕には『ガオ~』というライオンの吠え方が7兆通りあるんですけど、このイベントでは、『ガオ~風呂カード』という26種類の吠え方を書いたお風呂カードを配りました」
26種類にしたわけは、お風呂(026)の語呂合わせにちなんでとのこと。簡単な銭湯クイズを出題し、アンケート用紙に答えを書くとカードが当たるという、楽しんでもらえるような仕掛けにしました。
「一日店長として番台に立てたこのイベントは本当に楽しかったです。いつもとは違う角度から銭湯を見ることで、新しい世界が広がったなと実感しています。こうしたイベントを通して、子どもや家族連れなどに銭湯に興味を持ってもらえればいいなと思います」
すべて手作り! 銭湯の隣でお祭りやお笑いライブを開催
ガオ~ちゃんさんの取り組みを見てみると、特徴的なポイントに「手作り」という点があります。その温かみや熱意は子どもたちや地域住民にしっかりと伝わり、銭湯の良さを広める活動にプラスに作用しています。
西成の「日之出湯」さんのすぐ隣にある長屋を借りて行った「ガオ~ちゃんのこどもお風呂祭り」は、ガオ~ちゃんさんや仲間たちが1から手作りしたイベントです。
銭湯の入り方や銭湯の入り方が学べるお風呂カルタ、写真映えスポットの段ボール番台など、全て手作り。老若男女が楽しめるように工夫し、スーパーボールすくいや輪投げ、ペットボトルで作ったボーリングなど、縁日遊びも用意しました。
お祭りの後半には銭湯にまつわるネタを披露したお笑いライブも開催し、最後にはみんなで笑ってかいた汗を銭湯で洗い流すという大満足の一日になりました。
「お祭りやライブでただ楽しんでもらえるだけでなく、銭湯について知ってもらえる機会ができて本当によかったです。これからもお風呂を通じてふれあいの場を作っていきたいです」
そう意気込むガオ~ちゃんさんは、銭湯の魅力を伝える新しい取り組みにチャレンジし、様々なイベントを成功させました。手作りお笑いライブにアウフグース(サウナストーンにアロマ水をかけてでた蒸気をタオルで仰ぐこと)、貸し切りサウナイベント……その勢いはとどまることを知りません。
オリジナルの銭湯ブランド「風呂魚」の立ち上げ
もっとみんなが銭湯に行きたくなるようなグッズを作りたい……そんな熱い想いからガオ~ちゃんさんは銭湯ブランド「風呂魚」を作りました。
「僕自身、銭湯に行きまくることを魚ぐらいびちょびちょに濡れるという意味で『魚』と呼んでいて、それを派生させて銭湯によく行く人のことは『風呂魚』って呼んでいたんです。これからどんどん風呂魚を増やしていきたいという想いを込めて、ブランド名にしちゃいました(笑)」
ちなみにブランドのロゴは、お風呂に入っているときにふと頭に降りてきたそう。Tシャツやタオル、シールなど、風呂魚のオリジナルグッズはガオ~ちゃん自らデザインします。
「素材や形にもこだわって、銭湯好きだけでなく一般の人も着られるようなデザインにしています。ブランドに興味を持ってもらえれば、そこから銭湯にも広がるかもしれないので、女性や子どもにも刺さるように意識しています」
銭湯は、日本が誇る大切な“文化”です。西成を中心に、大阪、関西、ひいては全国的に銭湯を盛り上げたいというガオ~ちゃんさんの熱い想いは、明るく温かい未来を切り拓いてくれることでしょう。これからも彼の活躍から目が離せません。
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