里山風景のある町で、実家の古民家をリノベーション。菜園や料理、DIYなど、家族とともに楽しむ日々の暮らしを美しい映像と音で届ける動画は、癒やされると多くの視聴者から共感を呼んでいます。ユーチューブ配信の動機は、命に向き合い、日常の尊さに気づいた自らの経験にあったといいます。
CONTENTS
掲載:田舎暮らしの本 2024年9月号
インフルエンサー・TAKASU TILE
髙須亮佑(たかすりょうすけ)さん
髙須亮佑さん●愛知県幸田町出身。築約50年の実家の母屋をリノベーションし、妻の由貴奈(ゆきな)さんと、祖母の美江子(みえこ)さん、両親とともに暮らす。田舎での日々の生活を美しい映像で伝えるYouTubeは国内だけでなく海外の視聴者からも人気を博す。8月17日(土)に初の著書『TAKASU TILE 自分をHAPPYにする暮らし方』(誠文堂新光社)を発売。
YouTube:TAKASU TILE(登録者数 22.6万人)
Instagram:フォロワー 11.7万人
当たり前の日常だけど
とても尊い日常を届けたい
築50年の実家のリノベーションが完成。思い出があふれる家に新しい風が吹き込みます。
名古屋から約40分の田舎
3世代家族の古民家暮らし
ユーチューブを始めたころ、おじいちゃんの盆栽部屋を100万円でセルフリノベーションしたのは4年前のことです。昨年は母屋をリノベーションしました。50年ほど前に裏山の木を伐って建てたおうち。家族の思い出がいっぱい詰まったこの家を、これからも残していきたいと思いました。父の知り合いの職人さんにお願いし、僕も手伝いながら1年がかりでていねいにつくり上げました。僕たち夫婦と両親のスペースに、それぞれ水回りを設けて、おばあちゃんも含め三世代が同じ屋根の下に住めるのは、少しだけゆとりのある田舎の家のよさだと思っています。
庭の家庭菜園では、ナスやキュウリ、トウモロコシなど夏の野菜が盛りです。この時季、ミカン畑は草刈りに半日かかりますが、その分、冬にはおいしいミカンが実り、お世話になった人にお裾分けができます。
そんな田舎暮らしができる町ですが、東海道本線の駅が3つあり、名古屋駅までは40分ほど。ここで育った僕は高校を卒業し、地元で消防士になりました。幸せの田んぼと書いて幸田町。僕はこの町が大好きなんです。
目の前にある
すてきな風景を動画に
ユーチューブを始める前にも、動画は趣味で撮っていました。でも、そのころは身の回りの風景や家での暮らしではなく、友達の結婚式のムービーなどをメインに撮影していました。日々の田舎暮らしをテーマに撮り始めたのは、僕自身ががんを患ったのがきっかけです。療養中に家で過ごしているとき、この日常のありがたさを感じて。また、兄の死も重なり、いつも目の前にあった風景、当たり前だと思っていたものこそ幸せなんだと思うようになりました。この思いを伝えたい。こうして僕はユーチューブを始め、1年ほど後には消防士の仕事を辞して発信に専念することにしました。
撮影に使うのは一眼レフカメラ1台です。三脚に据えて撮っています。見ていて飽きないようにアングルなどを工夫して。音も意識してます。食材を切る音や、日常の音、当たり前に聞いてる音。編集にも時間はかかりますが、僕自身、動画づくりを楽しんでいます。
ユーチューブを通じて伝えたい思いは、始めたころからずっと変わりません。同時に、日常のなかに非日常を感じてもらえるような、「見ているとなんだかほっとする」。そんな心温まる動画を発信していきたいと思っています。視聴者さんから、僕の動画を見て癒やされるというコメントをいただくことも多く、「心が温かくなった」「元気が出てきた」という声を聞くと、僕もすごくうれしい気持ちになります。
家族の応援を受け継ぎ
新たなチャレンジへ
これからも視聴者さんの声をいただきながら、登録者数100万人を目標に動画をつくっていきたいです。また、将来は視聴者さんと直接かかわることができる何かができたらとも考えています。
僕の実家は瓦製造をしていた瓦屋なんです。「TAKASUTILE」のTILEは日本語で瓦。瓦屋の会社名から取り、ユーチューブなどのチャンネル名として受け継いでいます。この名前を世界中に届けたい!そんな思いもあり、父をはじめ家族みんなが応援してくれています。 おかげさまで8月17日には『TAKASU TILE自分をHAPPYにする暮らし方』(誠文堂新光社)を発売します。内容には僕の生い立ちや家族のこと、ユーチューブには出てこない話も多く、今の僕にたどり着くまでの道のり、そのすべてをつづっています。自分をHAPPYにするためのヒントが見つかる、そんな本になっています。
昨年結婚した妻の由貴奈さんと、縁側で庭を眺めながらくつろぐ時間は幸せです。
ダイニングのテラス窓を開け放ち、大好きな縁側で、ほっとする午後のひととき。
里山の自然が広がる幸田町。庭には野鳥もいっぱいやってきます。
50年ほど前に裏山の木でつくられた家。リノベーションは急がず一歩ずつ進めました。
田んぼを眺める裏山につくったウッドデッキは、僕たちだけの秘密基地。
セルフリノベーションした盆栽部屋での夏の一日を届けた動画は100万再生を超えました。
新しいキッチンで由貴奈さんと2人、母の誕生日の料理をつくる。幸せの時間。
献立は由貴奈さんと一緒に考えて、料理は主に僕が担当しています。
春の朝食。炊きたてのごはんにタケノコを合わせて。汁物にはお豆腐を。
夏のオススメ料理は、菜園で穫れた果菜類たっぷりのカレー。
冬のオススメ料理は根菜類いっぱいのおでん。
母の誕生日のおもてなし料理、できあがりました。おめでとう。いつも笑顔をありがとう。
おばあちゃんと春の畑で至極の収穫。
収穫に忙しい夏の菜園。真っ赤な完熟トマト、ズッキーニも大きく育ちました!
左/レモングラスも入れてさわやかな味わいに。右/竹垣に這わせて育てたバタフライピーは、花を摘んでハーブティーに。
バタフライピーの青い花を入れたハーブティーにはポリフェノールがたっぷり。
陶芸家・増田光さんの、クマをモチーフにした器。クマの表情にほっと癒やされます。
冬に向かってダイコンを収穫開始。煮野菜がおいしい季節です。
左/根菜類たっぷりの豚汁も冬の定番。右/ダイコン、ニンジン、キャベツ、ハクサイ……。菜園の野菜が冬じゅう食べられます。
何にもないけれど
何でもあるのが幸田町
愛知県の東南部、三方を小高い山々に囲まれた幸田町。名古屋駅へ電車で約40分の距離だが、駅周辺の市街地の外には田畑や果樹園など里山風景が広がる。のどかな田舎に暮らしながら、買い物などにも便利、そんな温かいこの町にはお気に入りのお店も多いという。
「静かな暮らし、おしゃれな場所もあるのが幸田町の魅力。」
四季折々のイベント
フレンドリーな気風
僕と妻は2人とも幸田町の出身で高校も一緒。幸田町が大好きで地元愛が強めです。地元を盛り上げようという気持ちはずっと持っています。今後、幸田町を盛り上げていくイベントなどを、地元の人たちと協力してやっていきたいです。
特にこれといったものはない田舎なので、静かな暮らしをするにはよいところです。大型の商業施設もなく、便利な町というのとは違います。とはいえ車を30分ほど走らせて隣の岡崎市(おかざきし)や蒲郡市(がまごおりし)に行けば何でも揃いますから、困ることはない。一方、町内には静かな公園があったり、温かい雰囲気のパン屋さんや、おしゃれなレストランがあったり。地元ではさほど知られていないのに、町外からのお客さんがわざわざ訪ねてくるような隠れた名店も多いです。また、町内にはペットロボット「アイボ」の製造・修理を国内で唯一行っているソニーの工場があるので、アイボのオーナーが集うカフェもあります。
四季折々のイベントも幸田町の楽しみです。1月は「こうた凧揚げまつり」があり、150もの自作の凧が舞い上がり圧巻です。春は「幸田しだれ桜まつり」、初夏には「本光寺紫陽花まつり」が、夏に開催される「こうた夏まつり」はフリーステージや町民総踊り、花火で盛り上がります。
そして何より幸田町のよさは「人」です。すれちがうとみんな、笑顔で挨拶をしてくれます。散歩中には、畑仕事をしているおじいちゃんや、おばあちゃんはたいてい声をかけてくださいます。町外から来てカフェを開いた知人は、坊主頭で一見強面なんですが、それでも幸田町に来てみるとみんなが気さくに挨拶をしてくれたとかで、「受け入れてもらえる気がした」と、幸田町の人たちの温かさが出店の決め手になったそうです。
幸田町の人たちはフレンドリーな気風なので、人のつながりも広がりやすい。長く住んでいると慣れてしまって気づきにくいですが、本当に居心地のいい町ですよ。
「幸田しだれ桜まつり」が開かれる幸田文化公園。遊具やテニスコートもあり散歩にもぴったり。
グラウンドのある幸田中央公園はソメイヨシノ、ヤマザクラのお花見スポット。5月にはツツジが楽しめます。
池にせり出す親水デッキのある不動ヶ池公園。上流の不動ヶ滝の周辺は夏も涼しく、キャンプもできます。
髙須家で豊作だったミカン。収穫して持っていくと、オーナーの早苗さんが試行錯誤してミカンパンをつくってくれました。
パン処 un(アン)のオーナー・早苗さんの母と、僕の祖母が同級生です。早苗さんに教えていただきながら、ミカンパンづくりに挑戦。Instagram:@unbakerskiri
ミカンのさわやかさがとってもおいしいミカンパン。
monologue(モノローグ)は名古屋や県外のファンも多いヴィーガンレストラン。お店の人とは仲よしで、大切な日に訪れます。https://www.monoand.com
TAKASU TILEさんに聞く!
オススメの愛知県幸田町のスポット&グルメ
あじさい寺と筆柿
幸田町内にある瑞雲山本光寺は「三河のあじさい寺」として知られ、毎年6月には「本光寺紫陽花まつり」が開かれています。特産品といえば、幸田町が出荷量全国一の筆柿。早生種で一般的な柿よりも1カ月ほど早く穫れます。国道23号沿いの道の駅の名前は「筆柿の里・幸田」です。
瑞雲山本光寺は、後に島原藩に転封された深溝松平家の菩提寺。参道や境内には約1万本のアジサイが植えられています。
文/新田穂高 写真提供/TAKASU TILE
この記事の画像一覧
この記事のタグ
田舎暮らしの記事をシェアする