教えて!移住プランナー仲西さん vol.1
移住プランナー、移住専門ファイナンシャルプランナー、空き家相談士など様々な顔を持ち、これまで約2500組もの移住相談に多角的な視点で対応してきた、仲西康至(なかにし・こうじ)さんが、地方移住についての疑問、質問に答える連載「教えて! 移住プランナーの仲西さん」。記念すべき第1回のテーマは「地方移住で貯蓄は増やせるのか」です。
子どもの将来の教育費を貯めるために、住居費や生活費が高い東京から、地方への移住を考えています。移住で貯金を増やせますか?
(Aさん、東京在住、30代夫婦+子ども5歳)
都会は住みづらい?
皆さんこんにちは、移住プランナーの仲西です。
現在、日本では円安が続き、物価の上昇が鮮明になっています。この経済環境の変化は、特に若い世代に対して大きな影響を与えています。収入が増えない一方で、生活費や必需品の価格が上がるため、貯金する余裕がなくなってきています。
ご質問者のAさんのように、小学校に上がるようなお子様をお持ちの方にとっては、将来に不安を感じて当然です。
特に、住居費については気になるところですよね。
そこで、2024年(令和6年)の平均地価相場を調べてみました。
全国TOP5はやはり東京都ですよね。一方で、地価相場が低いのは、広大な大地のイメージが強い北海道でした。
東京都と北海道ではおよそ1,000倍の差があることがわかります。そして、東京都の地価相場は年々上昇を続けており、北海道の地価相場は下降を続けていますので、今後ますます差は広がるのではないでしょうか。
参照:国土交通省提供のオープンデータから、株式会社Land Price Japanが平均値を算出
また、賃貸相場についても調べてみました。
こちらも、東京都の主要区と北海道札幌市の主要区を比較してみました。
札幌市は全国の市の中で人口が4番目の大都市です。それでも、東京都と比較をするとおよそ2倍~7倍の差があることがわかります。
住居費が節約できて、子どもの教育費などに回せるのならば、田舎移住を考えてみたくなりますよね。
参照:yahoo!不動産 2025年1月12日現在
「地方は物価が安い」は本当?
移住希望者の移住理由をお聞きすると、「都会は物価が高く、地方は物価が安いから」という声をよく耳にします。
たしかに、総務省が発表する消費者物価指数を見ると、東京都が最も高く地方の道府県はそれよりも低い数値となっています。
しかし、この消費者物価指数には「住居(家賃)の物価」も含まれていることから、必然的に東京都より地方の自治体が低くなります。
先ほどの、地価相場や賃貸相場を見ると良くわかりますよね。
そのため、住居を除いた物価を比較してみると、地方の方が物価は高い場合もありますので注意が必要です。
地方の方が物価は高い? 10選
1.ガス代金
地方ではプロパンガスが多いため、地方の自治体では高いことがあります。
2.水道代
インフラ整備面積に対する利用者数が少ないことから、北海道や東北など地域によっては水道代が高いことがあります。
3.子供の通学費
地方では近隣に学校が存在しないこともあり、隣県や遠方への通学または親の送迎が必要となり、通学費やガソリン代の負担が高くなることがあります。
4.新車の購入費
地方では他店舗との競争が少なく、都会と比較して値引きが少ないこともあります。また、北海道など雪国では寒冷地仕様など割高になることがあります。
5.公共交通機関
利用者数が少ないことから運賃が高く設定されていることがあります。
また、地方では隣町との移動距離が長くなりがちであり、運賃がおのずと高くなることがあります。
6.ガソリン料金
製油所からの輸送距離が遠いため、山中の地域などではガソリン単価は割高になることがあります。
また、地方では公共交通網が乏しいため車移動が中心になります。そのため、月額のガソリン代金は高くなります。
7.車の維持費
地方では車移動が増えることから走行距離も増えることになります。そのため、部品交換等のサイクルが短くなり、維持費は高くなります。また、雪国ではスノータイヤ、スノーワイパーなどの準備も必要となります。
8.通販の送料
離島など一部の地域では通販の送料に加算されることがあります。
9.住設工事費、材料費
材料の調達(輸送費)が割高になります。また、地方は人手不足から工期が延びやすく、工事費が割高になることがあります。
10.その他(飲食店など)
地方は人口が少ないことから、店舗維持のために商品単価が高いこともあります。
地方の物価に対する注意点
以上の様に、「都会は物価が高く、地方は物価が安い」と、固定観念を抱いて移住をするのは危険です。
また、地方に移住することで収入が減ることもあります。
「収入が減少しても、
さらに、注意していただきたいのが、地方を一括りにすることです。当然、地方にはそれぞれ地域性があり、物価も異なるからです。
もしも、移住を希望する地域があるのならば、移住相談会などで聞いてみるのも良いでしょう。
実際に住んでいる方々から生の声を受け取ることが大切ですね。
地方に移住をすれば貯金を増やせますか?
例えば、日常的な食料品やガソリンの価格が上昇すれば、交通費や生活費全般に影響が及びます。また、円安による輸入品の値上がりも家庭の負担を増やす一因となります。このような状況は、都会でも地方でも同じです。
それでも、地方移住によって貯金を増やすことは十分に可能です。ぜひ、次のポイントに注意をしてみてください。
1.移住をする前から、移住後の収入と支出を明確にする。
一般に、都会よりも地方の方が給与水準は低いと言われていますから、事前に移住先の雇用状況をリサーチしていくことも大切ですね。
2.地方の方が割高な項目について、事前対策と準備をしてください。
自家用車、公共交通機関の交通費、子育て費用などには注意が必要ですね。
3.地域の支援制度を上手に活用してください。
地方自治体や企業が移住者に対して支援制度を提供している場合があります。家賃助成や引越し費用の補助など、これらの制度を利用することで初期費用を抑えられますね。
地方では自然に囲まれた環境や静かな生活が得られるため、余計な消費を抑えられるかもしれません。しっかりと計画を立て、地域の特徴を活かした生活を送ることで、地方移住は貯金を増やす良い機会となるでしょう。
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この記事を書いた人
仲西 康至
移住プランナー/移住専門FP/「一般社団法人移る夢」代表理事/空き家相談士 大阪出身。2006年国内初の移住専門FPとして独立。家族で北海道に移住し、「移住プランナー」として活動を始める。2022年には総務省「地域プロジェクトマネージャー」として鹿児島に移住。大阪・北海道・鹿児島の3拠点生活を実現。これまで18年間の活動で2500組の移住相談に対応。著書「移住を成功させる5STEP」「雪国に移住 住宅選びのテクニック20選」他
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