教えて! 移住プランナー仲西さん vol.3
移住プランナー、移住専門ファイナンシャルプランナー、空き家相談士など様々な顔を持ち、これまで約2500組もの移住相談に多角的な視点で対応してきた、仲西康至(なかにし・こうじ)さんが、地方移住についての疑問、質問に答える連載「教えて! 移住プランナーの仲西さん」。第3回のテーマは「都会と田舎の教育について」です。
豊かな自然の中で子どもを育てたいという想いから地方移住に興味があります。一方で、地方と田舎の教育格差、進路の選択肢を考えると、都会の方がメリットはあるのか悩ましいです。田舎でも子どもの教育は安心でしょうか
(Aさん、東京在住、40代夫婦と子ども10歳+8歳の4人家族)
田舎で子育ての魅力を考える
皆さんこんにちは、移住プランナーの仲西です。
近年、若い世代を中心に「ライフ・ワーク・バランス」ついて考える人が増えてきました。リモートワークなどの普及により、居住場所の制限も少なくなったことで、「田舎で子どもをのびのびと育てたい」と、子育てファミリーからの相談も増えています。
一方で、相談者のAさんのように、田舎で子育てをしたいが、都会と田舎の教育格差などに不安を感じる人もいます。確かに、田舎での子育てには、不安要素もあるかもしれませんが、まずは田舎で子育てをする魅力について考えてみましょう。
第一に、子どもが自然に触れ合う機会が多くなりますよね。「豊かな自然環境で育つことは、精神的な成長に良い影響を与える」とも言われています。
また、田舎では「地域で子育てをする」環境が整っています。田舎は都市部と比べて犯罪件数も低いと思われますが、地域のみんなで子どもを見守る環境にあることで、親も安心感を持ちながら子育てができます。
田舎での子育てのメリット!
そこで、田舎で子育てをするメリットについて書き出してみました。
① 教育環境
・待機児童の問題はほとんどありません。
・学童保育が充実しており、共働きでも安心です。
・小学校・中学校とクラス替えがないため、子ども同士の繋がりが強くなります。
・ストレスを感じずに学校生活が送れます。
② 生活環境
・マンションではなく戸建てに住むことが可能です。
・広い空間の中で、子どもはのびのびと暮らせます。
・地元の新鮮・安心・安価な食材を、子どもに食べさせることができます。
・家計の中で、子どもの教育費等の比率を上げることができます。
③ 安心・安全
・地域で子どもを見守る環境が作られています。
・交通量も少なく、子どもが安全に遊べる場所が多いです。
・ボール遊びが禁止される場所がほとんどありません。
・自然に触れることで、感性を豊かにし、集中力の向上につながります。
・幼児期の運動能力が高まります。
田舎での子育てのデメリット
一方で、田舎で子育てのデメリットについても知っておく必要がありますね。
① 教育環境
・田舎は学校の数が少なく、進学先の選択肢が限られます。
・生徒数が少ないことで、競争意識が弱くなります。
・生徒数が少ないことで、複式学級の可能性があります。
・徒歩圏内に学校が少なく、親の送迎が必要となりがちです。
・都市圏の大学等に進学する可能性が高く、仕送りが必要となります。
② 公共交通機関
・公共交通機関が弱いため、通学に不利になりがちです。
・試験やクラブ活動などでは、都市部に足を運ぶことが多くなります。
・利便性が悪いことで、行動範囲が狭くなりがちです。
③ コミュニティ
・大型の商業施設が近場にないことがあります。
・遊園地や水族館、動物園などのアミューズメント施設が少ないです。
・通販での購入に頼りがちになります。
田舎の教育格差などへの対策
ここまで、田舎での子育てのメリットとデメリットをみてきました。
そこで、ご相談者のAさんが心配される教育格差や進学先が限られている点について触れてみたいと思います。
確かに、子どもの教育については心配な点もあります。しかし、それには別の視点での解決策もあります。
① リモート学習
田舎に行けば進学塾も少ないでしょう。しかし、インターネットの普及により、都会と同じ教育機会を得ることは可能です。オンラインの塾や講座を活用してみるのはいかがでしょうか。
特に、子どもたちの学習にAI技術を活用した教育が進むことで、 AIが得意とするデータ分析の応用により一人ひとりに適した学習方法を提案してもらえるようになります。 このように、AI教育が取り入れられてくることで、教育の格差は縮まって来ると言われていますね。
② 交流活動
近年では、都会と田舎の学校の交流が盛んです。例えば、夏休みや冬休みを利用して都会の学校や塾に通わせることで、都会の進んだ教育を受けることも可能ではないでしょうか。
また、地方自治体のなかには、海外留学を支援する制度を設けているところも多くあります。
地方にとって「子どもたちは宝」と掲げて、多くの地方自治体が子育てファミリーの誘致に力を入れています。
子育てのサポートは、地方自治体の方が手厚いかもしれませんね。
③ 進路の選択肢
田舎では進学先が少なくなります。そのため、多くの子どもたちは、進学のために田舎から出ていくことになります。
しかし、見方を変えれば、子どもは「早くから独り立ちをする」と言えるではないでしょうか。
「引きこもり」や「パラサイト」のように、いつまでも実家にしがみつくのではなく、「自立心が養える」と考えてはいかがでしょうか。
子どもの気持ちを大切に
子育てファミリーにとって、田舎移住における教育格差や進学先の問題はとても気になるところです。
しかし、もっとも気にかけなくてはいけないことは、「子どもの気持ち」です。
親が田舎暮らしを切望していても、子どもの気持ちを大切にしなくてはいけません。小学校に通うお子様であれば、十分に自我は芽生えています。
そのため、都会から田舎への移住は、子どもにとっても大きなストレスとなります。
そこで移住前に学校を見学し、子どもの不安を少しでもケアすることが大切です。
ぜひ、子どもが気に入った学校を選択してあげてくださいね。
子どもが、心身ともに健康的な生活を過ごすには、田舎暮らしはとても有効な
ことと言えるでしょう。あまりに先のことを心配するのではなく、田舎での子育ての一歩を踏み出してはいかがでしょうか。
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この記事を書いた人
仲西 康至
移住プランナー/移住専門FP/「一般社団法人移る夢」代表理事/空き家相談士 大阪出身。2006年国内初の移住専門FPとして独立。家族で北海道に移住し、「移住プランナー」として活動を始める。2022年には総務省「地域プロジェクトマネージャー」として鹿児島に移住。大阪・北海道・鹿児島の3拠点生活を実現。これまで18年間の活動で2500組の移住相談に対応。著書「移住を成功させる5STEP」「雪国に移住 住宅選びのテクニック20選」他
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