教えて! 移住プランナー仲西さん vol.6
移住プランナー、移住専門ファイナンシャルプランナー、空き家相談士など様々な顔を持ち、これまで約2500組もの移住相談に多角的な視点で対応してきた、仲西康至(なかにし・こうじ)さんが、地方移住についての疑問、質問に答える連載「教えて! 移住プランナーの仲西さん」。第6回のテーマは「地震に備えて移住するってありなの?」です。
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「私たち夫婦は神奈川に住んでいます。TVで地震のニュースが流れるたびに、私たち夫婦は不安にかられています。都会に住んでいると、万が一の時に被害が大きいことが予想されていますので、田舎に移り住むことを考えています。地震に備えて移住をすることについて、どのように思われますか?」
(Aさん、神奈川在住、60代夫婦)
皆さんこんにちは、移住プランナーの仲西です。
ご承知の通り、昨年2024年1月1日に、能登半島をマグニチュード7.6の大地震が襲いました。年明け早々の大地震に、私たちは大きな不安に襲われました。
また、昨年8月8日には、宮崎県日向灘を震源とするマグニチュード7.1の地震が発生し、初めて「南海トラフ地震臨時情報」が発表されました。
そして、今年1月15日、政府の地震調査委員会は「南海トラフ巨大地震」の今後30年以内の発生確率を、これまでの「70%から80%」から「80%程度」に引き上げました。
もちろん、地震だけでなく、台風、水害、火山、大雪など、私たちの生活はさまざまな自然災害にさらされています。
最近、私が受ける移住相談のなかにも、地震等に対する質問がとても増えていますね。
「地震大国日本」に住んでいる以上は、地震のリスクを100%回避することは不可能ですが、「少しでもリスクを下げたい」という思いから、「防災×移住」を考える人が増えてきています。
地震の少ない都道府県はどこ?
「少しでも地震の少ない場所に移住しよう」と考える人もいます。
そこで、過去20年間(2004年~2024年)における、震度3以上の地震回数が少ない都道府県を調べてみました。
(気象庁の震度データベースから抜粋)
三重県が過去20年間で、震度3以上の地震回数が一番少ない結果となりました。
但し、三重県を始めとして、ランク2位の香川県、5位の徳島県は、南海トラフ地震の発生時には、大きな被害が予想される地域でもあります。
一方、震度3未満の地震回数が少ない都道府県についても調べてみました。
(気象庁の震度データベースから抜粋)
震度3以上の地震回数が少ない都道府県であっても、震度3未満の地震はそれなりに発生していることが解ります。
とくに、震度3以上の発生回数が少なかった奈良県は、震度3未満では12位までランクが下がります。
これでは、「地震の少ない場所に移住しよう」と考えても、判断に困りますよね。
結局、日本に住んでいる以上は、「地震からは逃れられない」と考えるのが正しいのではないでしょうか。
リスクを下げるための「防災×移住」
地震からは逃れられないのならば、「地震のリスクを下げる」よう考えることが大切ですね。
現在、自分が住む場所から、地震のリスクを下げるために移住をするのです。
例えば、「海沿いに住んでいて、地震による津波が怖いから、津波リスクのない場所へ移動する」
または、「地震による土砂崩れが怖いから、岸や斜面から離れた場所へ移動をする」「津波が発生した時、近くに避難のできる場所に移動をする」などを聞きます。
「防災×移住」について、具体的には次のような考え方があります。
① 地盤の固い土地に移り住む
② 耐震強度の高い家に移り住む
③ ハザードマップの災害危険区域・警戒区域外に移り住む
④ 避難場所が近い区域に移り住む
⑤ 防災対策がしっかりした自治体に移り住む
「防災×移住」はアリ!
今回の相談者Aさんのご質問ですが、地震に備えて移住をする「防災×移住」について、私は素晴らしいお考えであると思います。
但し、リスクを100%回避することはできません。そのため、自身の中でリスクに対する許容範囲を定めることが大切になります。
Aさんのように、「人口超集中地域での被災が怖い」から、人口の少ない地域に移住をすることは、「防災×移住」として正しい考え方と言えます。
そして何よりも、『移住』の本来の意味についてお伝えしたいと思います。
私は『移住』について、「自分の好きな場所に、自分の好きなタイミングで、自分の夢を叶えることが移住である」と、皆さんにお伝えしています。
移住をすることで、「災害のリスクを下げる」という希望を叶えるられ、自分や家族が安心して暮らせるのであれば、選択肢として間違いではないでしょう。
ただし、知らない土地に移住をすることは、地震以外のリスクも発生します。
とくに、次の2つにご注意ください。
1つ目は「お金」についてです。移住をするには、大きな資金が必要となります。住まいの確保、引越し等の支出、転職による収入の減少等です。
もしも、移住をすることでこれまでの生活水準を保てなくなるのであれば、本末転倒になります。
2つ目は、コミュニケーション不足によるリスクです。
万が一、移住先で災害に見舞われると、精神的な負担が大きくなります。
知らない土地では、地域の防災情報にも慣れていません。また、被災時は地域で連携を深めることで安心が得られますが、知り合いが少ないために不安が広がるかもしれません。
「防災×移住」にはリスクもありますが、安全性を最優先に考えて、少しでも平穏な暮らしを求める姿勢はとても素晴らしいことと思います。
今回の相談者のご決断が、安心と幸福につながることを願っています。
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この記事を書いた人
仲西 康至
移住プランナー/移住専門FP/「一般社団法人移る夢」代表理事/空き家相談士 大阪出身。2006年国内初の移住専門FPとして独立。家族で北海道に移住し、「移住プランナー」として活動を始める。2022年には総務省「地域プロジェクトマネージャー」として鹿児島に移住。大阪・北海道・鹿児島の3拠点生活を実現。これまで18年間の活動で2500組の移住相談に対応。著書「移住を成功させる5STEP」「雪国に移住 住宅選びのテクニック20選」他
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