サッカー、フットサル、野球、バスケット、そしてバレーボールの5競技でプロ9チームが存在する隠れたスポーツ大国・長野県で、8番目に誕生したバレーボールのプロチームが躍進を続けています。1974年創設の富士通グループ「F長野」を受け継ぎ、2015年に新設した「長野ガロンズ」は、地元・須坂市とのつながりを深めながら、移住してきた選手とともに、さらに高みを目指しています。
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富士通グループを前身に2015年クラブ化
10年を区切りに新体制へ
長野県には、サッカー、フットサル、野球、バスケット、そしてバレーボールのプロ9チームが共存します。そのうち長野ガロンズは、2017年創設のVリーグ女子「ルートインホテルズ信州ブリリアントアリーズ」の次に新しいチームで、部員は地域で働くバレーボール選手としてVリーグへの参戦のほかに、スポーツを通じて青少年の健全育成、協賛各社開催のボランティア活動等に参加しています。
長野ガロンズは、1974年に創部した実業団チーム、富士通グループ長野「F長野」を前身に、2015年に独立、クラブ化から10年を迎えました。この節目に、クラブは現在選考中の新監督の元、新たな体制でシーズンに挑みます。
「今まで順位をそれほど落とすことはなかったけれど、画期的に上げられることもなかった。ある意味、安定しているところから、もう1段階上のレベルでやっていくためには、ある程度の変化は必要かと思っています」と話すGMの韮﨑(にらさき)昌彦さんに今回はお話を伺いました。
県の北と南では文化が違う
今回、話を伺った(左から)北直樹さん、安井元太選手、韮﨑昌彦GM
長野県の北、北信エリアの須坂市を拠点とする長野ガロンズ、そして、Vリーグの上位レベルであるSVリーグには県南部の南信エリアを拠点とする「VC長野トライデンツ」があります。
「『VC長野』の試合を見て、グッズを持って我々の試合に応援に来る方もいます。長野県は北と南では全然文化が違う。同じスポーツでも、それぞれの地域性が出て盛り上がっています。また長野県人は純粋にスポーツを応援するのが好きなんだと思います」(韮﨑さん)
メンバー構成の約7割が県外からの移住者
トライアウト参加者は年々増加
長野ガロンズでは、毎年春にトライアウトを行っていますが、問い合わせは年々増加しています。
「おかげさまで、希望してトライアウトを受けてくれる選手は若干増えています。皆さん最初は、環境が変わることに不安があると思うんですけど、入ってしまえばないのかな。移住してきた選手を見たり、コミュニケーションを取らせてもらうと、みんな好んで地域のコミュニティに参加しているので、思っているより心配はないと思います」(韮﨑さん)
韮崎さん自身も須坂市出身で、住みやすい環境については「自信を持って間違いない」と伝えているそうです。
チームユニフォームを着て地元のイベントを盛り上げる長野ガロンズのメンバー
バレーに対する考え方も変わった
2024-25シーズンからチームに参加している安井元太選手は、京都府出身で青森の大学に進学し、卒業と同時に須坂市に移住してきました。
「高校、大学とバレーボールを続けていくなかでVリーグに興味を持ち、『ガロンズ』が一番輝いて見えたのでトライアウトを受けました。守備にしても、これは無理だろうなっていうボールですら追いかけて拾いに行くみたいな、とにかくチームの団結力が強いイメージがありました」(安井選手)
そのようなイメージを持っていた安井選手ですが、練習に参加してすぐにイメージと違った部分もあったそうです。
「僕はVリーグをいろいろ調べてきて、楽しくバレーができればいいといったチームもあるなかで、やはりガロンズは勝ちたいという気持ちが強い。選手の皆さんは優しいイメージがあったんですけど、言うときは言うというのが、いい意味で裏切られたという感じで、『これは負けてられへん、もっと自分のなかで考えていかないと』と考え方も変わりました」(安井選手)
まだ、地域との関わりは試合でしかないようですが、須坂市民の親しみやすさをすでに感じています。
「Vリーグという憧れの舞台に立たせてもらって、無名の大学から来た僕にファンの方から『なんだあいつ』みたいに言われるかなと緊張していたんですけど、須坂市の皆さんは優しく親しみやすく、『どこから来たの?えっ、すごいね』とか、いろいろ話しかけていただいて、受け入れてもらえたと安心しました」(安井選手)
教員教職免許を持つ安井選手は現在、長野養護学校に就職。そこでも、「分からないところがあれば優しく教えていただける」と、優しさと親しみやすさを感じています。また、温泉好きな安井選手にとっては、教員住宅の近くの温泉の露天風呂から見える景色が、すでにお気に入りだそうです。
地域の皆さんに応援してもらえるチームに
自分なりの楽しみを見つける
2022年8月から地域おこし協力隊として家族で移住してきた北直樹さんは、ビジネスオペレーション、広報マーケティング戦略担当として長野ガロンズの活動にも参加しています。
「地域に根付いてやっている以上、いろんな人との関わりがあります。イベントやボランティア、バレー教室だったり、地域の人と積極的に楽しめる人に来てほしい。バレーボールが好きなことは大前提ですが、このまちを好きになってくれ人がいいなと純粋に思います。ここは都会と違って自然が豊かです。自然と隣にある生活ができ、温泉などの楽しみを見つけながら、バレーも続けて、もちろん仕事もやって。そういう楽しみ方ができる選手の方が、長くやっていけるんじゃないでしょうか」(北さん)
「選手は背も高いですし、子どもたちからの人気はありますね」と北さん
社会人になる機会、そして社会人となってバレーを続けられなくなった人に対し、もう一度バレーに打ち込める環境に関して、安井選手もエールを送ります。
「バレーボールが好きな人たちが集まっているチームです。バレーが好きであれば、一歩踏み出すことで視野が広がるといいますか、バレーに対する考え方や価値観も変わると思うので、諦めずに最初の一歩を踏み出してほしいと思います」(安井選手)
トップリーグを目指すとともに
チームの目標としては、現在のVリーグからトップのSVリーグで戦うことと韮﨑さんは語りますが、そこにはもう一つの理想があります。
「トップリーグで戦うことが目標ですが、一方で地域密着型のチームなので、まずは地元の皆さんに喜んでいただけるような、応援してもらえるようなチームになりたいなと思います。私たちが勝つことで、地域が少しでも元気になればいいなとは思ってます」(韮﨑さん)
チームが強くなることで選手が成長するとともに、まちの活性化につながる
さらには、高齢化が進む長野県、須坂市において、活性化にもつなげたいとの思いもあります。
「地元でバレーができる受け皿的な環境ができれば、もっと戻ってきてくれると思いますし、バレーをやりたいことがきっかけで、移住者が増えてくれば、人口が増える手助けになる。今後の課題は、バレーが終わったら帰っちゃうところ。ここにしっかりと根付いて住んでくれるのが理想です」(韮﨑さん)
長野県の北信エリアは、昔からバレーボールの盛んな地域で、小・中学校は全国レベルですが、その後の高校、大学でレベルアップのために県外へ出ていく人が多かったのですが、長野ガロンズも創設10年で、ようやく芽が出てきたと韮﨑さんがいうように、徐々に戻ってくる選手も増えているそうです。
自然あふれる好環境で、戻ってくる地元出身選手と、移り住んでくる選手が共存し、チームを強く、そして地域を活性化させる長野ガロンズ。長野県の“スポーツ愛”は益々盛り上がっていくようです。
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