都市部から過疎化の進む地方へ移り住み、活動をする「地域おこし協力隊」。仕事や住まいを確保できる地域おこし協力隊は、田舎暮らしを始めたい人にとって貴重なキッカケとなる制度です。しかし、ミスマッチで挫折するケースも少なくありません。ここでは、応募する前に基礎知識をご紹介します。
掲載:2025年9月号
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地域おこし協力隊とは?
2009年度から総務省が実施してきた制度で、都市部から過疎化の進む地方に移住した隊員が自治体から任命を受け、地域の問題解決や活性化のための活動に携わるもの。任期はおおむね1年から3年間です。
2024年度の隊員数は全国で7910名。2026年度は1万人を目標にしています。隊員は20~40代が多数を占めていますが、近年になって50代・60代まで採用を広げたり、年齢制限を設けない自治体も増えてきました。
7割近い隊員が任期終了後も定住し、うち約46%が起業、約36%が就職するなど、移住先で地域活動を継続しています。
地域の魅力発信や商品開発など、活動内容は地域によってさまざま
地域おこし協力隊の活動内容は、募集する自治体の地域事情によって異なります。多いのは観光や地場産業の魅力を伝えたり、農林水産業への従事、SNSを活用した情報発信、移住相談窓口の担当、交流の場づくりなどで、それらを複合的に行う場合もあります。また、地元民間企業の仕事を行う「企業連携型」もあります。
自治体のなかには、「まちづくりの中核を担うマネジャー」「子ども食堂のマネジャー」「ジビエの製造・販売」など具体的な活動内容を明記しているところも多いので、募集情報のチェックからスタートするのもひとつの方法です。
【ニッポン移住・交流ナビ】地域おこし協力隊 募集一覧
https://www.iju-join.jp/cgi-bin/recruit.php/9/list
やりたい分野や地域を絞って、協力隊の募集情報を探す方法
上記の具体的な活動内容を明記した募集情報の探し方とは別に、活動カテゴリーや移住したい地域が決まっているという場合は下記のサイトを利用する方法があります。活動カテゴリーは農林水産・産業、環境、医療・福祉、観光、教育、情報発信、地域づくり、スポーツ、空き家など。地域は北海道から沖縄までで、希望する報酬や活動日数などでも検索できます。
【ニッポン移住・交流ナビ】地域おこし協力隊 検索
https://www.iju-join.jp/chiikiokoshi/search.html
自らのアイデアを事業で活かす「起業型地域おこし協力隊」とは?
起業型地域おこし協力隊は、県や市から報酬や経費などの支援を受けながら、自らのアイデアで地域活性化につながる事業を展開する協力隊のこと。例えば、福島県田村市ではオーダーメイド型の移住体験ツアーの企画・運営などを想定し、原則週5日間の活動で月給22万5000円、家賃や車両借り上げなどの活動費用を支援する制度を設けています。
ミスマッチで起こるトラブルを未然に防ぐためのポイントは?
地域おこし協力隊に採用されても、「何をやっていいかわからない」「こんなはずではなかった」というトラブル事例は少なくありません。これは本人がその地域で何をしたいかが明確でない、受け入れる自治体も協力隊に的確な指示を出せない、といったミスマッチによるものがほとんど。それを防ぐには、自治体の担当者と納得いくまで仕事内容やミッションについての擦り合わせを行うこと。移住前に何でも相談できる人脈をつくっておくのも大切なプロセスです。
「おためし地域おこし協力隊」「地域おこし協力隊インターン」について
地方で暮らした経験がまったくなければ、不便な地域で生活できるのか、地域おこし協力隊に採用されても本当にやっていけるのか、という不安を持つ人もいるでしょう。それを解消するために、主に2泊3日で実務体験ができる「おためし地域おこし協力隊」や、1週間から3カ月かけて地域協力活動を行う「地域おこし協力隊インターン」という制度が設けられています。実施自治体は上記の【地域おこし協力隊の募集 検索】のサイトで「おためし」「インターン」で検索してください。
文/山本一典 イラスト/関上絵美・晴香
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