北海道は、広い大地と雄大な自然が魅力の地。しかし、ひと口に北海道といっても179の市町村があり、そこから理想の移住地を探し出すのは大変です。また、地域によって気候や風土が大きく異なるのが特徴です。ここでは、北海道へ移住するために知っておきたい基礎知識を、移住専門ファイナンシャルプランナーの仲西康至さんに教えてもらいました。皆さんの最高の北海道を見つける一助としてください。
掲載:2025年9月号
CONTENTS
【教えてくれた人】
仲西康至(なかにし・こうじ)さん
移住専門ファイナンシャルプランナー(AFP®認定者)、一般社団法人「移る夢(いるむ)」代表理事。2006年、国内初の移住専門ファイナンシャルプランナー「移住プランナー」として活動を始める。これまで18年間の活動で約2500組の移住相談に対応。著書『移住を成功させる5STEP』『雪国に移住!住宅選びテクニック20選』ほか。
北海道移住で戸惑うこと
移住してから後悔することがないように、事前に知っておきましょう。
① 広大な土地に戸惑った
北海道の面積は、九州の約2倍に相当します。札幌から函館は車や電車で約4時間、札幌から網走ならば8時間は必要です。広大な北海道では、10㎞の距離は「すぐそこ」になります。例えば、「移住後に道内の各地を観光したい」と希望していても、簡単ではありません。
空港や病院との距離にも注意が必要です。「急に実家に戻らなくてはいけないとき」「急病で救急搬送が必要なとき」に、広大な土地が邪魔をすることになります。
② 雪国の暮らしに戸惑った
雪景色の美しさに魅了されて、北海道に移住する人がたくさんいます。しかし、購入した家が前面道路から奥まっていると、毎日の除雪が大変です。中古物件では壁の断熱材が弱っていることから、暖房費がかさむことにもなります。
また、広い北海道は地域によって気候が異なります。太平洋側は夏でも涼しく霧が発生しやすい一方、日本海側は冬の積雪が多くなります。また、内陸部では夏と冬の寒暖差が非常に大きいなど、気候特性をしっかりと把握して移住に備えましょう。
③ 道民の気質に戸惑った
北海道では「道民気質」を理解しなければなりません。「道民気質」を文献で調べると、「道民は他者への依存傾向が強く、自分からの行動に乏しい」などと記載されています。「郷に入っては郷に従え」の言葉があるように、地域の風土や風習を理解しリスペクトしましょう。田舎では地域の人とのコミュニケーションがとても大切です。
北海道の住まい選びのポイント
北海道で住まいを選ぶときに大切なことは、冬の暮らしを想定することです。ここでは、雪国特有のチェックポイントを3つお伝えします。
① 屋根の形状をチェック
「三角屋根(切妻屋根)」のように屋根に傾斜がある住宅は、屋根の雪を下に落とすために、堆雪できるスペースが必要です。万が一、屋根の雪がお隣の敷地に落ちると、トラブルの原因になります。一方、屋根が平らな「陸屋根」は、屋根の雪下ろしや、室内への水漏れのリスクがあります。
② 除雪スペースをチェック
降雪の多い地域では、玄関前に積もった雪を除雪するのが日課となります。この除雪した雪を置くスペースが充分に確保されているかどうか、確認しましょう。
③ 雪庇(せっぴ)をチェック
あまり聞きなれない言葉ですが、「雪庇」とは、風下方向にせり出すようにできる雪の塊のことです。落雪により車のフロントガラスが割れたり、人の頭の上に落ちたりといった大きな事故にもなりかねません。一般に、北海道では「東側に雪庇ができやすい」といわれていて、玄関の位置などには気をつける必要があります。
北海道では雪道の運転に注意
雪道の運転に不安を感じる人は少なくありません。しかし、北海道の道路は本州よりも路肩が広く、交通量・坂道・トンネルがほかの雪国よりも少ないといわれています。また、雪道の運転が不安な場合は、雪の少ない地域を選ぶ人もいます。しかし、積雪路面よりも、凍結した路面(ブラック・アイスバーン)のほうが危険であることも知っておくとよいでしょう。
北海道移住を成功させる秘訣
いろいろと注意点を書きましたが、北海道は自然が豊かで、四季折々に美しい風景が楽しめ、アウトドアスポーツも盛んで、移住するにはいいところです。移住を成功させる秘訣をご紹介します。
① 交通の利便性を考える
移住後に道内各地の観光地を巡りたいのならば、北海道の真ん中に移住することをオススメします。
実家や都会との往復をする機会の多い方は、空港に近いところを選択するといいでしょう。特に、冬の移動を考慮してください。例えば、「新千歳空港は雪に弱いが、旭川空港は雪に強い」などの特徴を知っておくことも大切です。
② 降雪量ではなく、積雪量に注目する
一般に「降雪量」を気にしがちですが、大切なことは「降雪量」ではなく「積雪量」です。例えば、自宅前の道路の除雪が行き届いていれば、朝の通勤・通学も安心です。除雪に対する取り組みは、自治体により差があるので注意してください。
③ まず都市部に移住してみる
北海道は、札幌市とそのほかの地域で移住のハードルが異なります。
雪国での暮らしに慣れていない方は、まずは札幌などの都市部に移住してから、「二段階移住」を試みてはいかがでしょう。都市部の賃貸マンションなどを最初の住まいにすると、除雪の心配もなく安心です。
活用してほしい支援
移住前に北海道を体感できる「移住体験施設」
北海道の自治体の多くが、移住体験施設を準備しています。移住体験をすることで、その土地の雰囲気を知り、移住後の暮らしのイメージをつかむことができるので、とても有効です。一方で、「ペットがいるので移住体験ができない」といった声も聞かれます。そこで、ここではペットと一緒に移住体験ができる施設の一部をご紹介します。
うらかわ生活体験住宅(浦河町)
【夏】1日1500円、月4万5000円 【冬】1日2000円、月6万円
清掃料や布団代は別途必要。利用は1週間~。
移住生活体験ハウス(日高町)
料金は、月額5万円。そのほか、インターネット回線使用料が必要。
自治体の助成金制度
移住時には一定の資金が必要となります。そこで、自治体などの助成金制度を有効に活用することで資金面をクリアにし、不安の解消につなげてください。各自治体で多種多様な移住支援制度がありますが、参考までに一部を紹介します。
「最大500万円の住宅取得奨励金」(歌志内市)
全国で一番人口の少ない市である歌志内市では、定住人口の増加を図るため、市内に住宅を取得された方に、最大500万円の奨励金を交付しています。移住・定住情報 | 北海道歌志内市
「冬道運転講習」(深川市)
深川市では、市内の自動車教習所において、12月から3月までの積雪期間中に、1時間程度の講習を実施しており、移住体験者には市で受講費用を負担します。北海道で暮らす ふかがわで暮らす
深川市の冬の風景。特別豪雪地帯に指定されている深川市では、雪道の運転に慣れておく必要があります。
イラスト/関上絵美・晴香
この記事の画像一覧
この記事のタグ
田舎暮らしの記事をシェアする