1998年の長野オリンピック、そして2004年のTVドラマ『プライド』などでブームとなったアイスホッケーが再び注目されています。プロ野球、サッカーに次ぐ3番目に誕生した社会人スポーツリーグとして長くファンに愛されてきた同競技ですが、現在シーンの中心となっているのが、伝説の選手を父に持つ監督が、全国から八戸に移住してきた選手を率いる東北フリーブレイズです。
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伝説の選手を父に持つ監督が率いる強豪
選手のセカンドキャリアもバックアップ
アジアリーグアイスホッケー優勝3回、全日本アイスホッケー選手権大会優勝2回を誇る東北フリーブレイズが発足したのは2008年。2002年にスポーツ用品店ゼビオの本社がある福島県郡山市で社員を中心に設立されたX-unitedが、2009年以降のアジアリーグアイスホッケー参戦を目指し、本拠地をスケート文化の発祥から“氷都”と呼ばれる青森県八戸市に移し誕生しました。
アジアリーグアイスホッケーでは、毎年上位の成績を収め、選手にとっては憧れの強豪チームとして全国から選手が集まっています。しかし、従来の企業チームと異なり、フリーブレイズでは母体の会社や関連企業の社員や契約社員として働くだけではなく、地元八戸の企業に選手を派遣し、勤務しながらチームの活動に参加する人材協力型協賛のスキームを目指しています。そこには、選手といえども競技に偏ることなく、社会人として学ぶ機会を増やし、選手のセカンドキャリアを総合的にバックアップする狙いがあります。
チームを率いる若林クリスさんに話しを伺いました。若林さんは2009年にヘッドコーチとして就任し、2011~20年には監督として、2021年からは取締役兼総監督に就任しましたが、2024年より再び監督としてチームを率いています。
2024年よりリンクに戻ってきた若林監督が八戸からアイスホッケーのブームを再び起こす
カナダ生まれの若林さんの父は、日本リーグ草創期の1960~70年代に西武鉄道や国土計画で活躍し、後に国土計画の監督や日本アイスホッケー連盟の副会長を務めた若林仁(選手名メル)さんです。実弟の修(選手名ハービー)さんと “若林兄弟”として日本のアイスホッケー界を牽引した伝説の選手でもありました。
若林さんはコクドに入社しましたが、当時のチームは外国人なしで戦う方針だったため、カナダ国籍の若林さんにプレーの機会はありませんでした。チームのカナダ人監督の通訳や、長野オリンピックでは日本アイスホッケー連盟に出向し、海外遠征などでフルタイムの通訳として従事。指導者としての勉強も続け、コクドのアシスタントコーチを経て、コクドと西武鉄道が合併したSEIBUプリンスラビッツで監督も務めました。そんな若林さんがフリーブレイズの選手に求めることをお聞きしました。
「周りを引き上げられるようなリーダーシップです。スポーツはいろんな困難のなかで試合をします。そのなかで解決策を見つけ、いかにチームに浸透させるかがすごく大事だと思います。チームスポーツですし、どうやったら周りの才能を引き出せるかという、そういう考えができる選手が一番魅力的に感じます」(若林さん)
フリーブレイズは初年度から全日本アイスホッケー選手権大会3位、2年目はアジアリーグ3位、プレーオフ優勝、さらには全日本選手権準優勝など創成期から結果を残しています。創設時は新卒採用が多く、新人選手がメインのチーム構成でした。王子製紙からのレンタル選手や、外国籍選手の獲得で戦力のバランスを取っていたそうです。
「いろいろ時代も変わり、いまでは実業団チームがクラブ化しています。昨年からはチームも若返り、新卒で5人を獲得しました。今はその若手の育成に徹しているような感じです」(若林さん)
日本代表も憧れるチーム
そのなかで2024年7月にフリーブレイズに入団したのが、現在プロ選手として日本代表でも活躍している米山幸希選手です。北海道釧路町出身の米山選手は、小学校でアイスホッケーを始め、中学までは釧路、高校は帯広にある名門の白樺学園高校に在籍していました。大学はアイスホッケーで東京の中央大学に進みましたが、3年の夏に大学を辞め、釧路の「ひがし北海道クレインズ」に入団。クレインズの廃部に伴い、新しく釧路にできた「北海道ワイルズ」に移籍しましたが、ワイルズではアジアリーグに出られないことでフリーブレイズへ新天地を求めました。
日本代表でも活躍する米山選手は将来のジュニア育成のためのキャリアも磨いている
「若林監督とご縁があったこともあり、入団を決めました。フリーブレイズは、アイスホッケーをしている選手にとっては憧れのチームです。八戸の子どもたちだけではなく、東北地方はもちろんのこと、僕が釧路にいた時もスクールにフリーブレイズのユニフォームを着ている子がいました」(米山選手)
毎週スクール開催で地域とより密着に
将来は指導者として還元
米山選手は現在、プロとして契約していますが、フリーブレイズはいろいろな形で選手を雇用しています。米山選手のようなプロ選手、運営会社に所属する選手、将来を見据えてデュアルキャリアを行う選手など様々です。選手の立場からすると、選択肢がたくさんあるともいえます。
「チームで仕事をしながらやっている人をすごくリスペクトしています。仕事をしている会社の理解とチームの理解が必要な上で、選手としてやってる人たちはすごい。僕らみたいにプロ1本の選手とは負荷が違いますし、ストレスも違うでしょう。プロの選手もやっぱり現役が終わると仕事をしなきゃいけない。フリーブレイズにもいますけど、結構仕事の話は聞きますね。今どういう感じなの?とか大変ですか?みたいな。そういうのを聞きながら、応援しているというか、リスペクトしています」(米山選手)
米山選手は将来、ホッケーには携わりたいと考えています。代表経験やプロの経験がある以上、指導者としてジュニア世代の選手たちに還元すべきと考えているそうです。
「チームにはまだ入ったばかりですが、日本代表の経験などを通して、ホッケーをやったことがない子から日本代表を目指したい選手まで、子どもたちにプロを目指したいなと思ってもらえるように頑張るのが、僕の夢であり目標です。フリーブレイズジュニアスクールに関しては、各カテゴリーのリーダー選手をお手伝いする役割ですが、前のチームに比べると回数が多い。練習の質もいいので、シーズンが終わるころにはみんな上手になっています。八戸の子どもたちも北海道の子に負けず劣らず、うまいなと思いながらやっています」(米山選手)
スクール活動もキャリアに
フリーブレイズは選手の自主性を重んじています。スクール活動ではリーダーになっている選手がメインになり、グループごとに分かれて教えていたり、地域貢献活動も同じくリーダーがいて、リーダーの選手がリードしながら活動を行い、チーム全員でやっていくという姿勢があるそうで、そのことが選手の将来的なセカンドキャリアにつながると考えています。
将来的にはジュニアの育成も考えている米山選手にとっては、以前に比べて地域社会と交流する機会が増えていることで、その将来のキャリアに活かされることでしょう。
スクールの子どもたちにとってフリーブレインズの選手は憧れの存在であり目標となっている
発信力のある東京もホームタウンに
青森県人会が集結する場
フリーブレイズは2024年から八戸だけでなく、東京都もホームタウンとして活動しています。その狙いを若林さんはこう話してくれました。
「日本で発信力があるのはやはり首都圏です。トップリーグのSEIBUプリンスラビッツがなくなってしまった今、東北フリーブレイズというチーム名で、八戸そして東北をとても大事に活動させていただいていますが、アイスホッケーの振興というもうちょっと大きな視点で見たときに、東京でトップリーグの試合を少しでも行ったり、去年から始めましたが、東京の小学校に選手が伺って、少しでもアイスホッケーの周知認知につながる活動をしていかないといけないと考えています」(若林さん)
東京開催では、青森県人会の皆さんが、フリーブレイズのホームゲームに同窓会のように集まるそうです。アイスホッケー文化の発祥地、八戸を再び“氷都”の象徴に、そして八戸といえば「東北フリーブレイズ」があるよねと、八戸市民だけでなく、全国から思われるように、地道な活動が続いています。
八戸を盛り上げるとともに東京をホームタウンとすることでアイスホッケーの魅力を全国に発信する
我々がやらないと誰もやってくれない
「フリーブレイズは地域密着のチームです。ファンの皆さんあってのチームなので、そこを大事にできるといい。根本的な考えをちゃんと持てる人で、フリーブレイズでやりたいと思ってくれるような選手がいたら、一緒にプレーしたいですね。また、そう思ってもらえるようにプレーでもそれ以外でも努力を続けるのが、今の僕らの仕事だと思っています」(米山選手)
「いまはマイナースポーツと呼ばれるアイスホッケーなので、いろんな支援がないとできません。セカンドキャリアのこともあるので、選手たちが頑張って、地域の方にたくさん応援していただくのが理想。選手たちは引退後も八戸に残って、今度は恩返しとして地域の活性化のために働く。そういう流れの構想を持っていれば、八戸も盛り上がると思います。また、フリーブレイズのOBファミリーが地元に残っていくことで大きな支えになります」(若林さん)
“氷都八戸”の復権を目指し、「我々がやらないと誰もやってくれない。そういう自主的な気持ちを持った選手と一緒に、アイスホッケーを盛り上げていきたい」と若林さん。再びアイスホッケーのブームを起こすか、フリーブレイズの活動からは今後も目が離せません。
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マイヒーロー
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