アパレル業界から林業の現場へ転職した園田さん。集落で暮らし、山で働くうちに、自然との距離感や暮らしの感覚が少しずつ変わっていった。都会で暮らす人たちにも、もっと山に関心を持ってほしい。そう願いながら、今日も現場に立っている。
掲載:2025年11月号
岡山県新見市/園田健介さん
千葉県出身、42歳。趣味のバイク旅を通じて森の仕事に魅せられ、2021年に有限会社 杉産業へ転職。現在は新見市を拠点に、バイクで周辺地域を巡りながら、山の仕事と新しい暮らしを楽しんでいる。
ネットの情報から離れて、まずは自分で体験してみる
アパレル業界で働きながら、バイクで日本各地を旅していた園田健介さん。森の中でキャンプをすることも多く、第一次産業への関心があったという。そのため、転職を考えたときも、自然と山の仕事に目が向いた。
「農業や漁業も候補にはありましたが、旅をするなかで感じたのは、とにかく日本には山が多いということ。それなら林業に挑戦してみようと思いました」
転職サイトで山林運営コンサルティング会社の求人を見つけ、2021年に入社。チェーンソーでの伐倒作業から仕事を始め、少しずつ重機の操作や木材の集積作業も覚えていった。
また、林業人材育成制度「緑の雇用」にも参加。OJT研修を通じて、林業用の重機の資格などを取得した。
「それまで運動習慣がなかったので最初は本当にきつくて、15㌔くらい体重が落ちました(笑)。でも、林業では機械化が進んでいて、思ったよりからだへの負担は少ないと感じました」
現在は、果樹農家の多い小さな集落の一軒家に賃貸で入居。地域の消防団にも所属し、月に一度は顔を合わせる集会や飲み会にも積極的に参加している。
「都会では一人で完結することも多いですが、田舎では落石があればみんなで片付けたりして、自然と助け合う関係が築かれていきます」
林業を検討するにあたって、ネット上ではネガティブな情報も多く目にする。しかし園田さんは、自分で体験してみることの大切さを語る
「『緑の雇用』には3カ月のトライアル雇用制度もあるので、まずは現場を体験して、自分に合うかどうかを判断してもいいと思います。調べ過ぎてやる前から諦めてしまうのは、もったいないですから」
林業に携わるようになってからは、日本人と山との距離についても考えるようになった。
「山は本来、資産でもあります。もっと多くの人に関心を持ってもらい、活用していけたら。例えば高齢者施設を山につくって、植林活動を担ってもらうなど、都市の課題と山をつなぐような取り組みもできるのではないかと考えています」

日本各地を愛車のオフロードバイクで旅してきた園田さん。「岡山の山道は適度なワインディングがあって、走っていて本当に気持ちがいいんです」。
利用した制度
・緑の雇用
林野庁が実施する事業で、OJTや集合研修を通じて林業の担い手を支援。就業1年目から知識と技能を身につけられるプログラムが用意され、5年目以降はリーダー、10年目以降は現場統括者の育成へと段階的にサポート。
https://www.ringyou.net
・新見市空き家バンク
・新見市の移住支援金(当時の制度)
Advice
「新見市では、林業の担い手育成などを目的に、行政、森林組合、素材生産事業者などが連携し、『未来へつなぐ新見の林業会議』を設立。事業体とのマッチングや移住支援など、さまざまな角度からサポートを行っています。林業が盛んな自治体は事業体の数も多いので、まずは実際に現地を訪れ、地域や職場の雰囲気を自分の肌で感じてみてください」(新見市林業振興課 上杉さん)
新見市の林業パンフレット「NIIMI FORESTRY」は、『未来へつなぐ新見の林業会議』の担い手対策部会が作成。市内の林業関係各所で配布している。
【新見市のオススメ!】
幻想的な光に照らされた横穴鍾乳洞「満奇洞(まきどう)」。全長約450m、年間を通して約15℃に保たれた空間は、まるで異世界のような雰囲気。
岡山県内で年2回行われている「晴れの国おかやま林業就業ガイダンス」でも、新見市はブースを出展している。新見市では林業振興のために活動する地域おこし協力隊も募集中だ。
文/はっさく堂 写真提供/㈲杉産業、園田健介さん、新見市
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