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田舎暮らしの本 3月号

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田舎暮らしの本 3月号

2月3日(火)
990円(税込)

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【柄本佑さんインタビュー】「太秦での仕事は、映画の歴史に触れる喜びがあります」|映画『木挽町のあだ討ち』

直木賞と山本周五郎賞をW受賞した永井紗耶子による小説を映画化した『木挽町のあだ討ち』で、柄本佑さんが主演を務めています。回想形式による推理劇の構造を持つこの時代劇で、観客の読みを導く役回りを担う田舎侍、加瀬総一郎役。映画のこと、父との思い出、田舎暮らしへの思い、柄本さんに聞きました。

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掲載:2026年3月号

『田舎暮らしの本』のインタビューを受ける柄本佑さん
えもと・たすく●1986年生まれ、東京都出身。2003年、黒木和雄監督の映画『美しい夏キリシマ』で主演デビュー。『きみの鳥はうたえる』などでキネマ旬報ベスト・テン主演男優賞ほかを受賞。そのほか、最近の主な出演作はNHK大河ドラマ『光る君へ』、映画『シン・仮面ライダー』『花腐し』など。『i ppo』などで、監督業も手がける。6月には主演映画『メモリィズ』が控える。

「刑事コロンボ」のような立ち位置の侍を演じる

 「東映京都撮影所に初めて行ったのは17歳で。今よりずっと活気があり、新人にとっては非常に緊張感がありました。それで例えば衣装が着られないと、『はい、着られないのねっ』という感じで洗礼を受けて(笑)。でもそこで着付けやメイクは自分でできなきゃいけないと知り、勉強を始めるわけです。しかも太秦(うずまさ)がスゴイのは、別の作品でまた行くと、『おかえり』とファミリーのように迎えてくれること。年齢を重ね、周りが見えるようになると、こんなに細かい仕事をされているのか!と気づく。尊敬の念が積み重なり、映画の歴史に触れる喜びがあります」

 そう語るのは、太秦で撮影した映画『木挽町のあだ討ち』で時代劇に挑んだ柄本佑さん。監督は、ドラマや映画で「いちばん多くご一緒している」という源孝志さん。

 物語の舞台は江戸、木挽町。歌舞伎の芝居小屋「森田座」の近くで、美濃遠山藩士の伊納菊之助(長尾謙杜)が仇討ちを成し遂げる。1年半後、菊之助の縁者を名乗る加瀬総一郎が、「この仇討ちには腑に落ちない点が」と、森田座へやって来る――。

 「いつもイメージを固め過ぎずに現場へ行くのですが、今回は原作にない役でもあり、自由度が高くて。監督からは、『刑事コロンボのような立ち位置』と言われました。しかも、ちょっと現代風な人物でもあって。くせ者揃いなキャスティングのなか、森田座の人たちを距離をとって見ている。彼らのキャラの〝濃さ〞に濃さでぶつかるというより、あっさりとそのなかを漂うようにできたらいいなと」

 それでいて、「僕は背が高いので、ただ立っていると目立ってしまう。だからあえて大きく演じることでなじめたらと思って」と佑さん。渡辺謙さん、滝藤賢一さんら、そうそうたる演技派が顔を揃えるなか、ややすっとぼけた雰囲気で、けれど一筋縄ではいかない芯をにじませながら加瀬総一郎として立つ。

 「冒頭、地方から出てきた総一郎が森田座を見つけ、『うわ〜、これかぁ!』と声を上げます。最初はそこで、『失敬、失敬』なんて言いながら往来する人を避けて進んだのですが、監督から『がんがん人にぶつかりながら、真っすぐ行ってくれ』と言われて。なるほどそういう人物か!とヒントになりました。そうして、現場で生まれていくことが楽しいんですよね」

 総一郎は森田座の人びととのかかわりを経て、「木挽町の仇討ち」の真相に迫る。そうして、「芝居小屋というのは変わり者の集まりといいますか、ああ見えて誇り高いといいますか」なんてつぶやく。武士である総一郎にとって、芝居小屋は、「自由で憧れる場所でもあったのかも」と佑さん。

 「源監督の作品の中で、僕も出演させていただいた『スローな武士にしてくれ』(2019年)のようなラインにあって。ウエルメイドで軽やかなエンターテインメントです。観終えた後、気持ちのよい痛快さが吹き抜けるよう。それでいて老若男女、人を選ばず、楽しんでいただける作品になりました」

今考える終の棲家は、ポルトガルの古都で

 「ウチの父は、木挽町生まれなんです。歌舞伎座の真裏だったと言っていました。おじいちゃんが〝柄本印刷〞という印刷屋さんをやっていたんですね」

 この映画と、そんな縁があったとは。驚いて思わず、ええ!?と声が出た。

 「それで母親の実家は、静岡県富士市の木島という所です。自然がいっぱいあって、ウチのかあちゃんのお父さんが山を2つくらい持っていて。100坪ほどの家で、裏には馬小屋があったらしいです。庭にはミカンやイチジクの木があり、近くに大きな川が流れていました」

 佑さんは幼少期、年末年始や夏休みに訪れた。きっと野山を駆け巡っていたことだろう。

 「ケガもたくさんしました。持ち山のひとつが岩山で、岩の上から落ちたりして。そのせいか、田舎暮らしというのは肌感として合う気がします。先日も、ロケで山形に行ったんです。空気がおいしい、なんてよく聞く表現だけど、深呼吸なんかもしやすい気がする。だからからだがラクでいられるのは母方のほうかも。古い日本家屋で、トイレは汲み取り式で、木の閂(かんぬき)を横に動かすような扉だったりして。趣がある? 確かに、趣も傾きもありました(笑)」

 ではいつか、そんな原風景を思い出させる所に住む可能性も? 30代の彼に終の棲家について聞くのは早いと思いながら水を向けると、「ポルトガルがいいな」と言うので、突飛に思えてまた驚く。けれど次の瞬間、佑さんが2018年に出演した『ポルトの恋人たち 時の記憶』を思い出す。あの映画のロケ地か!

 「世界を旅した経験は極端に少なく、海外ロケにもあまり行っていません。でもポルトガルはプライベートでもテレビ番組でも行ったりして、トータル1カ月半ほどいたのかな。非常に肌が合うんです。特にリスボンの北にあるポルトという古都の空気感がいい。バスでナザレに行けば海っぺりがあり、海も山もあって」

 それでいて食べ物もおいしい――。脳内でポルトガルでの食事が浮かんだのか、どこかうれしそうな顔になっている。

 「街を歩くと、塩焼きのイワシをパンに挟んで売っていたりします。煮込み料理は世界中どこにでもありそうだけど、新鮮な魚をただ塩で焼くシンプルな料理って、意外とないですよね。そこにちょっと日本とのつながりを感じますし」

 年齢を重ね、海や山を身近に感じるヨーロッパの古都で暮らす。佑さんの中には、〝里山で畑をやりながら〞みたいな田舎暮らしのイメージはなさそう。

 「畑もやってみたいけど、草木との相性があまりよくなくて。土いじりが嫌いというわけじゃないんですけど、枯らしてしまうんです……。松山ケンイチさんとか、農業を手がける役者さんは多いですよね。作物を育てるってロマンがあるし、からだも使うし、健全です。この仕事をしていると、自然に近い所で自然と相対する感覚が気持ちいいのかもしれません」

 日々、ボクシングのトレーニングを欠かさないという佑さん。からだを動かすのは「僕には、ボクシングがあるから!」と笑う。

『田舎暮らしの本』のインタビューを受ける柄本佑さん

父親になって知る、あのころの父親の気持ち

 17〜18年前のこと。まだ20歳で、デビューして数年だった彼は、「映画の現場ってちょっと中毒的な所がある」と、今に至る道を歩むことに迷いはなかった。

 「その感覚は今も変わりません。やっぱり現場って楽しい。映画を観に行くことも楽しいです。ある人から、『子どもが生まれてごらん? 子どもを見るほうが断然楽しいし、スリリングだから。映画を観に行かなくなるよ』って。でも全然そんなことはありませんでした」

 そしてすぐに、「いや、子どもは何よりもカワイイですよ」と続ける。

 「もちろん映画館へ行く頻度は減るし、その方がおっしゃる以上に、子どもはカワイイと思う。子育てを楽しんでいる自信もあります。それはどの家庭の親御さんも、『自分がいちばん子どもをかわいがっている』と思うのと同じ感覚で。でもやっぱり映画館には行きたい。それとこれとは別なんです」

 まだ小さい子どもがいたら、誰にも邪魔されずに家でゆっくり映画を観るのは不可能だろう。だからこそ映画館の暗闇に身を沈め、大きなスクリーンと対峙する限られた時間が、より貴重なのかも。

 「そんなところもあるかもしれません。でもウチの子も大きくなって、映画を観に行くことができるようになりました。アニメーションなら一緒に行けます。最初のころは絵が動くだけで面白がっていたものが、だんだんお話の感想にまで言及するようになってまた面白いです。それで、ああそこを見るのか、大人はそういう所が好きなんだけどな〜と思ったり。だからまた映画館へ行く機会が増えるかも」

 そんなふうに自分が父親になることで、「自分の父親を見直すこともあるんだなと、不思議な感慨があります」と佑さん。

 「自分が子どものころは、全然相手にされなくて。映画の話をしないと家族の会話がない!という感じでした。でも親父は親父でそれなりにいろいろやってくれていたのかもしれないなって。例えば子どもの僕らをじっと見るだけ、かちゃかちゃと食器で音を立てるのを聞くだけで楽しんでいたのかも。親父なりに子どもがいる日々をエンジョイしていたし、子どもにエンジョイさせようとしていたのかなって。そう思うのもやっぱり自分が今、楽しいからなんですけど」

 もちろん世間の父親はいろいろで、時代とともに変化している。でも多くの日本のパパは、いまだに子どもにとっては仕事が忙しく、無口で、何を考えているのかよくわからない存在という気がする。

 「そう、ウチの親父も喋らないんですよ」と佑さん。たまに家にいて、遊ぶ子どもを久しぶりにじっと見たりして。「ああ大きくなった」「そんなことができるのか」「こんなことを言うようになった!?」、そんなふうに、心の中では静かに感動していたのかも――。「そんなことに気づかせる子どもというのもスゴイ存在ですよね?」と言うと、「うん、本当に」とうなずく。

生活の部分が、役者としての仕事を支える

 それでいて、「日常がつまらないと感じてしまうくらい」、映画の撮影現場を愛するからこそ、「普通の生活を大事にしていかなくちゃ」と考えている。

 「生活の部分が、役者としての仕事を支える。その感覚は基本的に変わりません。だから僕の中で、映画を観に行くことは仕事ではないんです。趣味は? と聞かれ、映画鑑賞とは答えられない。僕にとっては生活の一部、その同列にあることなので。だから、忙しいからと映画を観ることをサボってはいけないなと。映画こそが、僕を地上につないでくれているから――。こうして喋べっていると、あらためてそんな気がします」

 映画を観ること、演じること。彼の中でそれは生きることに欠かすことができないもの。

 「子どもができる前に、お父さん役を初めてやらせていただいたことがありました。でも子役に対して緊張し、イメージとしての〝お父さん〞を演じてしまった。そのときはもうめちゃくちゃに親父にもダメ出しされました。かあちゃんが芝居にダメ出しすることはほとんどありませんでしたが、そのときはされたことも覚えています。そうか、と思って落ち込みました……」

 頭だけで構築したものは、やはり説得力に欠ける。これからも佑さんは生きて、演じて。生きることを高い濃度で味わい、真摯に生真面目に、役と対峙していく。

 「キチンと生活をし、その地盤から得たものをお芝居に反射させて、高く飛ぶ。例えるなら、そんなイメージかもしれません」

 

『木挽町のあだ討ち』

(配給:東映)

『木挽町のあだ討ち』(Ⓒ2026「 木挽町のあだ討ち」製作委員会 Ⓒ2023 永井紗耶子/新潮社) 『木挽町のあだ討ち』(Ⓒ2026「 木挽町のあだ討ち」製作委員会 Ⓒ2023 永井紗耶子/新潮社)
●監督・脚本:源 孝志 ●出演:柄本 佑、長尾謙杜、瀬戸康史、滝藤賢一、山口馬木也、愛希れいか、イモトアヤコ、冨家ノリマサ、野村周平、高橋和也、正名僕蔵、本田博太郎、石橋蓮司、沢口靖子、北村一輝、渡辺 謙 ●2月27日(金)より全国公開

美濃遠山藩士の伊納菊之助(長尾謙杜)は、父(山口馬木也)を殺害して逃亡した作兵衛(北村一輝)の首を討ち取る。1年半後、この事件が「木挽町の仇討ち」として語り草となった江戸に、菊之助の縁者を名乗る加瀬総一郎(柄本佑)が現れる。芝居小屋「森田座」で客の呼び込みをする一八(瀬戸康史)から、菊之助が森田座で厄介になっていたことを知る。立師(滝藤賢一)、元女形の衣装方(高橋和也)、小道具方(正名僕蔵)とその妻(イモトアヤコ)、そして劇作者(渡辺謙)の口から、菊之助の素顔が語られるが……。

Ⓒ2026「 木挽町のあだ討ち」製作委員会 Ⓒ2023 永井紗耶子/新潮社
https://kobikicho-movie.jp/

 

文/浅見祥子 写真/菅原孝司(東京グラフィックデザイナーズ) ヘアメイク/星野加奈子 スタイリスト/坂上真一(白山事務所)

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  • 『木挽町のあだ討ち』(Ⓒ2026「 木挽町のあだ討ち」製作委員会 Ⓒ2023 永井紗耶子/新潮社)
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