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田舎暮らしの本 12月号

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田舎暮らしの本 12月号

11月1日(金)
890円(税込)

© TAKARAJIMASHA,Inc. All Rights Reserved.

【地方創生SDGs】独創的な住民自治が光る銘木の産地。森のようちえん、AI、NFTも!【鳥取県智頭町】

長い年月をかけて住民主体の持続可能なまちづくりに取り組む智頭町。その活動から誕生した「森のようちえん」は、移住者を呼び込む大きなきっかけとなっている。また、広域連携SDGsモデル事業で関係人口を増やす取り組みも始まっている。

掲載:2023年11月号

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鳥取県智頭町の風景
【鳥取県智頭町(ちづちょう)】
鳥取県の南東部に位置し、1000m級の中国山地の山々に囲まれ、町の約93%をスギなどの森林が占める。森の空間と人びとのつながりを培う「森のようちえん」や「森林セラピー」を推進。都市部の災害時に疎開場所を提供する「智頭町疎開保険」を全国で初めて企画した。鳥取砂丘コナン空港から智頭町中心部まで車で約45分。

住民が考えた活気あるアイデアを町が応援

鳥取県智頭町の森林
智頭林業の植樹の歴史は長く、林業の地として全国的にも高い評価を受けている。町内には、「慶長杉」と呼ばれる樹齢300年以上の人工林が残る。「まちの基幹産業」として、林業再生へ向けた取り組みをしている。

 林業で栄え、町の9割以上を森林が占める智頭町。人口約6000人の小さな町でありながら、住民自治のパイオニアとして、早くから住民主体でまちづくりを続けている。

「智頭町がこれまでやってきたことが、SDGsのまちづくりにつながっています。主に『日本1/0(ゼロブンノイチ)村おこし運動』と『智頭町百人委員会』が住民自治活動の柱です」と、智頭町企画課の松村陽平(まつむらようへい)さんは話す。

「日本1/0村おこし運動」は、町の活性化は集落の活性化からという視点のもと、住民一人ひとりが無(ゼロ)から有(イチ)への1歩を踏み出そうという運動。10年間、集落単位での村おこし活動を町が助成し、現在は地区単位での活動になっている。6地区のうち5地区が地区振興協議会を立ち上げ、住民の意見を交えて事業などを実施。2023年8月には旧那岐(なぎ)小学校を改修し、宿泊機能を備えた交流拠点「いざなぎ交流館」がオープンした。ほかにも、キクラゲの栽培と販路拡大の施設整備や都市部の企業の誘致など、それぞれの地区でコミュニティビジネスを展開している。

 2008年に設置された「智頭町百人委員会」は、住民にとって身近で関心の高い課題を話し合い、解決する施策を行政に提案していく組織。住民らが考えた施策のなかから、優れたアイデアに予算がつく仕組みだ。この提案から生まれたのが、見守る保育を徹底して自然のなかで子どもたちの自主性を育む「森のようちえん」。県外からも子どもを通わせたいと、移住のきっかけにもなっている。また、2022年は町内の中学生の提案から、常設公園「智頭パーク」が誕生した。

鳥取県智頭町の旧校舎を活用したホテル「いざなぎ交流館」
住民らとともに旧那岐小学校の校舎の活用策を考え、2023年8月にオープンした「いざなぎ交流館」。ホテルや温浴施設もある。

鳥取県智頭町の住民自治「智頭町百人委員会」
「智頭町百人委員会」は住民自治の実践の場。商工・観光、林業など7つの部会で、町に施策を提案・実施している。

鳥取県智頭町の「森のようちえん」
「森のようちえん」は、智頭町百人委員会で提案された事業のひとつ。智頭町の豊かな森のなかで自然体験を通してさまざまなことを学ぶ。

 地域の交通手段も住民主体で助け合っている。2023年3月末で町内からタクシー会社が撤退、町営バスの運行終了に伴い、4月からは共助交通を導入。全世帯に設置されたIP告知端末の専用アプリから予約が可能で、運行については、住民自らがドライバーとなって自家用車で送迎を行う。住民の利便性、運行効率向上を図るため、運行管理システムにはAIデマンドシステムを用いている。

 SDGsを推進するためには、町の重要な資源である森林も忘れてはならない。森林資源を活用した事業として、持続可能な林業を目指す自伐型林業家の育成に取り組んでいる。山を持っていなくても、若者や移住者が林業を仕事にすることができ、間伐によって自然環境の保全にもつながっている。

 2019年に「SDGs未来都市」に選定されたことで、新たな取り組みも始まった。「広域連携SDGsモデル事業」として、「日本で最も美しい村」連合のブランド力と地域資源を活かし、関係人口を増やそうと2022年から静岡県松崎町(まつざきちょう)と「美しい村NFT(※)」を発行。今後は59ある美しい村連合加盟自治体・地域に広げていくことを目指している。

 こうした住民主体の各事業の相乗効果によって、まちづくりを自分のこととして考えることで、智頭町の将来像「一人ひとりの人生に寄り添えるまちへ」と歩んでいる。

※NFT…ブロックチェーンに記録される代替不可能なデジタルデータ。「美しい村NFT」は、デジタル村民権が付与されたデジタル資産を購入することで、加盟地域の割引やサービスが受けられる。

鳥取県智頭町の「ちづの森ちづ図書館」
町産の智頭杉をふんだんに使った「ちえの森ちづ図書館」。2023年8月にはSDGs関連の本を特集した。

鳥取県智頭町では「育みの郷構想」に取り組む
安心して生活でき、支え合うまちづくりのための「育みの郷構想」にも取り組む。「助産院いのちね」では、女性と子どもをサポートする活動やイベントを行っている。

智頭町のSDGs ここがスゴイ!

早くからの住民自治活動が醸成し、「SDGs未来都市」に選定された智頭町。最新の取り組みを紹介する。

●「日本1/0村おこし運動」と「智頭町百人委員会」で住民主体のまちづくり
●「森のようちえん」「森林セラピー®」「林業後継者育成」など、森林資源をフル活用し移住者を獲得
●広域連携SDGsモデル事業で関係人口を増やす
●AIデマンドシステムを活用した共助交通の導入

鳥取県智頭町のSDGs担当者
「住民主体でSDGsのまちづくりに取り組んでいます」(企画課 松村陽平さん)

智頭町のここがオススメ!

鳥取県智頭町の智頭宿にある「石谷家住宅」
江戸時代に栄えた宿場町・智頭宿にある国指定重要文化財の「石谷家住宅」。良質の杉材と最高の施工技術が施されている。美しい庭園も見どころ。

鳥取県智頭町の郷土食「柿の葉寿司」
古くから伝わる郷土食の「柿の葉寿司」。町内にある智頭農林高校では、伝統を受け継ぐため柿の葉寿司の歴史と調理法を学ぶ講習会がある。

智頭町移住支援情報
お試し住宅で暮らしを体験。住宅取得や空き家改修の支援も

 智頭町は人と人とのつながりが深い地域。それを体感したいなら、お試し住宅や民泊でまずは暮らしてみよう。また移住支援として、新築や空き家バンク登録物件を購入・改修する移住者に最大100万円の補助のほか、起業や創業もサポート。町外に進学する高校生や大学生を対象に有利な金利が受けられる「おせっかい奨学パッケージ」制度もある。

●お問い合わせ先:智頭町企画課 ☎︎0858-75-4112
「ちづ暮らし」https://www1.town.chizu.tottori.jp/chizu/town/

鳥取県智頭町のお試し住宅
お試し住宅「郷原 ほすぎの家」は1カ月3万円で利用できる(光熱水費は別途実費)。

鳥取県智頭町の移住担当者
「智頭町にぜひお越しください!」(企画課 岡本康誠さん)

 

文/田中泰子 写真提供/智頭町

 

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