これから移住する人に向けて、田舎暮らしで気になることをランキング形式で紹介。今回は、「地域おこし協力隊が多い自治体」をクローズアップします。地域おこし協力隊が多い地域は、どういう傾向があるのか、本誌ライターが分析・解説します。
弊誌「田舎暮らしの本」の人気企画『住みたい田舎ベストランキング』では、回答いただいたアンケートをもとに、さまざまな角度からユニークな取り組みをしている自治体をランキング化。読者の移住地選びの参考になるデータを提供しています。
【集計方法】
対象者:全国の自治体
調査方法:『田舎暮らしの本』からのアンケート
(アンケート送付は、「道府県庁経由でのメール」および「各自治体へ編集部から直接メール」の2ルート)
回答数:587自治体
アンケート実施:2023年10月末 ~ 11月下旬
※各項目の算出方法は表の下に別途記載しています。
掲載:田舎暮らしの本 2024年2月号
【地域おこし協力隊が多いランキング】
※アンケート回答時(2023年10月末)に活動中の地域おこし協力隊の隊員数。
地域おこし協力隊の受け入れが若者を呼び込むきっかけに
アンケート回答時に活動中の地域おこし協力隊の隊員数をランキングしたのがこの表で、上位を占めた市町村は全国各地に分散しています。地域おこし協力隊として受け入れることが、若者世代や単身者、子育て世代を呼び込む強力な政策になるので、各地に分散する結果になったのでしょう。
地域おこし協力隊は、2009年からスタートした総務省の制度で、地域とかかわりたいと望む人の受け皿になっています。約6500人が全国で活躍していますが、政府はそれを令和8年までに1万人に増やす計画です。男女比は男性6割、女性4割で、全体の約7割は20代・30代の若い世代となっています。任期はおおむね1年以上3年未満。任期終了後は約65%がそのまま地域に定住しています。
第1位:新潟県三条市(さんじょうし)
第1位になった新潟県三条市には、アンケート回答時に45名の地域おこし協力隊がいます。地域おこし協力隊は、通常は自治体の一員として活動するのが一般的ですが、ここでは地域に存在する課題解決をミッションとして市から委託を受けた企業やNPO法人に所属して、チームで地域活性化に取り組む企業所属型の地域おこし協力隊というのが大きな特徴です。
例えば、市内空き家・空き店舗の解消をミッションとする一般社団法人燕三条空き家活用プロジェクトの一員として着任した隊員は、空き家を掘り起こして流通に乗せ、利活用希望者とつなぐためのサポートを行っています。着任前後で比較すると、「三条市空き家・空き地バンク」への登録数は約5倍に増え、地域課題の解決に大きく寄与しています。ほかにも商店街の空き店舗を活用して絵本屋さんを営む協力隊、自身が起業することで過疎エリアに雇用を創出して、若者が住み続けられる地域作りを目指す協力隊、三条移住コンシェルジュとして活動している協力隊もいます。
2023年2月には市内に複合交流拠点がオープンし多くの人に出会いの場を提供、県外の人に燕三条の魅力を伝える大切な役割を果たしています。
商店街の空き家を利用した複合交流拠点「三-Me.(ミー)」は、移住者や市民、大学生が気軽に話し合える空間になっています。移住者サポートの拠点でもあります。
新潟県三条市で、地域おこし協力隊兼移住コンシェルジュとして活動している三浦さん。
第2位:兵庫県豊岡市(とよおかし)
兵庫県豊岡市も、アンケート回答時の地域おこし協力隊が42名と多い地域です。豊岡市は6つの市町が合併できたまちで、それぞれの地域がさまざまな特色を持っていることから、地域おこし協力隊の活動ジャンルも伝統技術継承、一次産業の振興、観光振興、演劇など多岐にわたっています。また、これまで90人以上の協力隊を受け入れてきて、多くの隊員が地域に根付いて成果をあげてきたこともあり、地域の人びとが協力隊を受け入れる雰囲気が醸成されています。
豊岡市では実際にまちを見たり、受け入れ団体の方と会ったり活動体験してもらう「お試し協力隊」の取り組みも実施していて、ミスマッチの解消に努めています。豊岡市の地域おこし協力隊の受け入れは地域や団体で、そこを拠点として活動。市役所では協力隊の募集や移住時のサポート、活動の相談を行っています。2022年からは契約方式を業務委託型に変更し、協力隊は個人事業主として業務を受託。卒業後も定着してもらうために、上限200万円の起業支援補助金があります。
豊岡市の移住定住ポータルサイト「飛んでるローカル豊岡」には、地域おこし協力隊の活動の様子やメンバーの紹介、OB・OGの記事などが紹介されています。
豊岡市で活躍する地域おこし協力隊のメンバー。
大きな自治体に地域おこし協力隊が多いという傾向はありますが、ベスト7の中には岩手県岩泉町(いわいずみちょう)や群馬県嬬恋村(つまごいむら)のように、小さな自治体でありながら20名を超える受け入れをしている町村もあります。人数が多ければいいという単純なものでもありませんが、若い世代の受け入れに前向きな自治体の目安にはなっています。
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この記事を書いた人
山本一典
田舎暮らしライター/1959年、北海道北見市生まれ。神奈川大学外国語学部卒業。編集プロダクション勤務を経て、85年からフリーライター。『毎日グラフ』『月刊ミリオン』で連載を執筆。87年の『田舎暮らしの本』創刊から取材スタッフとして活動。2001年に一家で福島県田村市都路町に移住。著書に『田舎不動産の見方・買い方』(宝島社)、『失敗しない田舎暮らし入門』『夫婦いっしょに田舎暮らしを実現する本』『お金がなくても田舎暮らしを成功させる100カ条』『福島で生きる!』(いずれも洋泉社)など。
Website:https://miyakozi81.blog.fc2.com/
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