多岐にわたる移住・定住支援策が評価され、本誌「住みたい田舎ベストランキング」でも常にトップクラスの豊後高田市。新婚世帯を含めた子育て世代への住宅支援も驚くほど充実している。移住者に人気の高い住宅関係の取り組みを取材した。
掲載:2024年2月号
※住宅の募集情報は2024年3月下旬現在の情報です。詳細は豊後高田市IJUサイトをご確認ください
三田さんファミリー/和矢さん、花音(あやね)さん、七心海(なごみ)ちゃん
夫妻ともに神奈川県出身。定住促進子育て応援住宅「住まいるハウス」に入居。和矢さんは会社員、花音さんは管理栄養士として働いていたが、2023年に移住。和矢さんは釣り竿メーカー「ロッド・コム株式会社」に就職し、花音さんは同年2月に生まれた七心海ちゃんの子育てに専念中。
菜園付きの一戸建てに格安の家賃で暮らせる
神奈川県から移住した三田和矢さん(31歳)・花音さん(27歳)夫妻が、生まれたばかりの七心海ちゃん(0歳)と暮らしているのは、海からも市内中心部からも近い西真玉地区の閑静な住宅地。ゆとりある敷地に、菜園スペースを併設した庭が広がり、2台分の駐車場もある。市が一戸建ての子育て応援住宅「住まいるハウス」として、2014年に新築した5棟の1つで、家賃は月4万8000円と家計に優しい。和矢さんは入居に至る経緯を次のように話す。
「釣り好きが高じて、豊後高田市内の釣り竿メーカーで働きたいと思い、移住を決めました。当初は空き家バンクで住まいを探していたところ、市の担当者が『住まいるハウス』にちょうど空きが出ると教えてくださったんです。応募すると運よく住めることになりました」
木造2階建てで3LDK。オール電化、自動お湯張り・追い焚き機能付きユニットバス、温水洗浄機能付き水洗トイレといった、快適な設備も揃う。
「神奈川県の都市部で同等の物件になると家賃は20万円ほど。その約4分の1の家賃で、子どもと一緒にのびのび暮らせるのはありがたいですね」
と、花音さん。近々再就職を考えているが、そばに保育園があり、待機児童ゼロで保育料が完全無料だから、安心して子どもを預けて働けそうだという。
豊後高田市のすごい! 住宅支援➀
定住促進子育て応援住宅「住まいるハウス」
家庭菜園付き一戸建てが全5棟。2階建ての3LDK・95.92㎡、家賃は月4万8000円、敷金は家賃3カ月分。妊娠中または小学生以下の子どもとの同居が条件で、市外からの移住者を優先。所得要件あり。子どもの中学校卒業までの範囲で最長10年間入居可。現在満室。
「人気の高い一戸建ての賃貸住宅です。2台分の駐車場があります」と地域活力創造課の加口さん(右)。
縁側でくつろげる庭の一角には1坪ほどの家庭菜園スペースも。「ゆくゆくは食育を兼ねて子どもと一緒に野菜を育てたいですね」と花音さん。
LDKの延長としても使える1階の洋室は、子どもがのびのび遊べる充分な広さ。
家族とのコミュニケーションがとりやすい対面式のシステムキッチン。IH調理器は子育てファミリーにも安全・安心。
新婚専用の市営住宅や子育て配慮のメゾネット
「移住・定住の基本が住宅の確保。その選択肢を増やし、より多くの子育て世代に来ていただくため、特色のある市営住宅も整備してきました」
そう話すのは、地域活力創造課の加口昌平さん。子育て世帯に特化した「住まいるハウス」は満室状態が続くが、市内中心部の来縄(くなわ)地区にある新婚世帯専用「ハピネス・ステージ」も好評を得ている。
「経済的に余裕がない新婚さんの支援が目的です。生活に便利な立地の3DKで月4万円の家賃はかなりリーズナブル。全入居者が新婚さんということで、お互いに良好な関係が築きやすいことも喜ばれています」
と、加口さん。移住してくる子育て世帯向けには、新興住宅地の城台(じょうだい)地区に2015年、オールメゾネットタイプの子育て支援住宅「エミール城台」を整備した。その魅力を加口さんはこう説明する。
「地元の複数の建築会社のアイデアや、地域住民の意見を取り入れた、『子育て応援設計』が特徴です。メゾネットも『子どもの成長のために階段もあるほうがいい』という声を取り入れました」
自動お湯張り・追い焚き機能付きユニットバス、温水洗浄機能付き水洗トイレといった設備はもちろん、IH調理器付きの対面キッチン、ベビーカーなどが収納できる外部物置など、「エミール城台」には多くの工夫が凝らされている。
いずれの物件も空きが出るとすぐに埋まる人気ぶり。募集時には1カ月ほどの期間が設けられ、応募が多数の場合は抽選または選考になるので、入居希望者は公式サイトをまめにチェックするか、移住相談時に希望を伝えておくといい。
豊後高田市のすごい! 住宅支援②
新婚さん応援住宅「ハピネス・ステージ」
旧大分県職員住宅を新婚専用の市営住宅として改装。3DKと室内倉庫で68.68㎡、家賃は月4万円、敷金は家賃3カ月分。夫婦いずれかが50歳未満で婚姻届提出後2年以内または3カ月以内に提出予定。所得要件あり。入居期間は原則5年間。現在1室募集中。
ポップな色使いが楽しい3階建て・全12戸。各戸とも2台分の駐車場が付く。
約10畳のDKを中心にして和室・洋室の計3部屋を配置した開放的な間取り。
豊後高田市のすごい! 住宅支援③
子育て支援住宅「エミール城台」
妊娠中または小学生以下の子どもと同居する世帯向けに、メゾネットタイプの市営住宅5棟18戸を整備。74㎡の2LDKでオール電化。家賃は月4万8000円、敷金は家賃の3カ月分。所得要件あり。現在、満室。
一戸建て感覚で暮らせる連棟式メゾネット。玄関横のカーポートを含めて2台分の駐車場が付く。
1階のLDK。ミニカウンター付きの対面キッチンは、子どもの姿を見守りながら調理などができる。
宅地をただで取得してマイホームが建てられる
魅力的な市営住宅の供給に加えて、過去には安価で優良な宅地の分譲も行ってきた。さらに一歩進めた施策として、2019年に登場したのが定住促進無償宅地だ。海側の真玉住宅団地に全35区画(82〜158坪)、都甲(とごう)小学校グラウンド跡地を活用した都甲住宅団地に全7区画(90〜99坪)を整備した。
「少しでもマイホームを建てやすくして、若い子育て世代に定住していただくとともに、市街地周辺エリアの活性化を図ることが目的です」
と、加口さん。移住後5年以内なら申し込めるため、まずは子育て支援住宅などで仮住まいしながら検討できる。すでに真玉住宅団地は空き区画がわずかとなり、第2期の追加造成も来年度に着工予定。
このほか、住まいを建てるときや子どもの誕生時をはじめ、ライフステージに応じた支援が行き届く豊後高田市。「住んでよかった」という定住者の口コミが、新たな子育て世代を呼び込む好循環をもたらしている。
豊後高田市のすごい! 住宅支援④
定住促進無償宅地「真玉・都甲住宅団地」
無償宅地として、真玉住宅団地ではすでに受け付けを終了しているが、都甲住宅団地では5区画の申し込みを受け付け中。15歳未満の子どもと同居、または夫婦どちらかが50歳未満で、移住後5年以内の世帯が対象。契約後1年以内に建築に着手し、2年以内の完成・入居が条件。
「日本の夕陽百選」の真玉海岸に近い真玉住宅団地。受け付けは終了しているが、第2期造成が決まった(準備中)。
まだまだあります! 豊後高田市の住宅支援
子育て世帯や新婚向けの住宅以外にも、常時80~90件の物件がある空き家バンクをはじめ、住まいの幅広い選択肢が魅力。移住時や住宅関係の支援金も多彩に用意している。
- 移住者向け住宅「虹いろ住宅」
- 豊後高田市営住宅
- 空き家バンク
- 空き家リフォーム事業補助金
- 空き家DIY奨励金
- 子育て世代いらっしゃい引越し応援金
- ハッピーマイホーム新築応援奨励金
- 高齢者・子育て世帯リフォーム支援補助金
問い合わせ先/豊後高田市地域活力創造課 ☎️0978-25-6392
https://bungotakada-iju.jp
「全国トップレベルの子育て支援を‟本気”で目指しています!」
地域活力創造課 加口昌平さん
文・写真/笹木博幸
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