これから移住する人に向けて、田舎暮らしで気になることをランキング形式で紹介。今回は、「空き家バンクの登録物件が多い自治体」と「空き家バンクの成約数が多い自治体」をクローズアップします。物件が多い空き家バンク、成約数が多い空き家バンクにはどういう傾向があるのか、本誌ライターが分析・解説します。
弊誌「田舎暮らしの本」の人気企画『住みたい田舎ベストランキング』では、回答いただいたアンケートをもとに、さまざまな角度からユニークな取り組みをしている自治体をランキング化。読者の移住地選びの参考になるデータを提供しています。
【集計方法】
対象者:全国の自治体
調査方法:『田舎暮らしの本』からのアンケート
(アンケート送付は、「道府県庁経由でのメール」および「各自治体へ編集部から直接メール」の2ルート)
回答数:587自治体
アンケート実施:2023年10月末 ~ 11月下旬
※各項目の算出方法は表の下に別途記載しています。
掲載:田舎暮らしの本 2024年2月号
空き家バンクでは田舎の賃貸物件や安い物件が見つかりやすい
空き家バンクとは、自治体が物件の所有者と利用希望者の間に入って空き家を紹介する制度。各自治体がホームページで物件情報を公開しているほか、国土交通省が選定した2事業者のサイト「アットホーム 空き家バンク」「LIFULL HOME‘S 空き家バンク」でも全国の空き家情報を簡単に検索できます。空き家バンクのメリットは、賃貸物件や価格の安い物件が手に入りやすいこと。取引は基本的に当事者の自己責任になりますが、地方都市では宅建業者や宅建協会が協力しているところもあり、その場合はプロのアドバイスが受けられます。ただし、仲介手数料が必要になるので注意してください。
【空き家バンクの登録件数が多い自治体ランキング】
※2023年10月末時点での空き家バンクの登録物件数。売買・賃貸の合計で算出。
上の表は2023年10月末次点での登録物件数で、売買・賃貸を合計した数字です。ベスト10は大きな自治体が占めていますが、全国各地に分散しています。
第1位:福島県福島市(ふくしまし)
福島市は福島県の県庁所在地ですが、北部と北西部はモモ、ナシ、リンゴなどの果樹畑が広がるくだもの王国。飯坂温泉、土湯温泉、高湯温泉という3つの温泉郷も抱えており、秘湯巡りを楽しむこともできることから、移住希望者に人気の高い地域です。
市では移住応援サイト「ふくがましまし ふくしまし。」を開設しているほか、市役所本庁1階の定住交流課内に「移住ワンストップ相談窓口」を設け、若い世代には仕事や住まい探しの手伝い、子育て世代には各種支援制度などのサポート提案など、移住希望者の目的やライフスタイルに沿った移住相談の対応をワンストップで行っています。もちろん、売買物件を中心に空き家バンクには力を入れており、人気の農地付き空き家も斡旋。市外からの移住者、新婚世帯、子育て世帯が定住する場合、最大150万円のリフォーム補助金を支給するなど、さまざまな支援制度を用意しています。
福島市移住応援サイト ふくがましまし ふくしまし。 - 福島市 (city.fukushima.fukushima.jp)
どの自治体もこうした空き家バンクとセットした支援制度はありますが、市町村によって条件や価格が異なりますので、ホームページでチェックしてみてください。
【空き家バンクの実績が多い自治体ランキング】
※2023年度(2023年4月~10月末)の空き家バンク登録物件の成約数。売買・賃貸の合計で算出。
上の表は2023年度の空き家バンク登録物件の成約数で、ベスト10には人気移住地が並んでいます。やや西日本が多いという傾向はあります。
第1位:兵庫県丹波篠山市(たんばささやまし)
空き家バンクの成約数がダントツで1位になった兵庫県丹波篠山市は、登録物件数も全国で第4位ですが、大阪、京都、神戸から1時間圏というアクセスのよさで昔から人気の高い地域です。城下町や宿場町として栄えた歴史を持ち、まわりを里山で囲まれています。
市民センター内に移住の相談窓口「丹波篠山暮らし案内所・classo」を設置し、空き家バンク物件の紹介など移住相談に対応しています。人気の古民家も見つかるので、気になる人はホームページをチェックしてみるといいでしょう。空き家バンク物件を改修する場合、最大50万円を助成するなど支援制度も充実しています。
移住について/丹波篠山市 (tambasasayama.lg.jp)
市内には、篠山城の城跡を中心に武家屋敷群と妻入商家群一体となった城下町が残っています。その一部は国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されています。
空き家バンクはあっても実質的に機能していない市町村も存在しますが、成約数が多いところはそういう心配がありません。まずは家族構成や利用目的などをしっかりと伝えて、空き家バンク物件の中から理想の田舎物件探しを始めてください。
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この記事を書いた人
山本一典
田舎暮らしライター/1959年、北海道北見市生まれ。神奈川大学外国語学部卒業。編集プロダクション勤務を経て、85年からフリーライター。『毎日グラフ』『月刊ミリオン』で連載を執筆。87年の『田舎暮らしの本』創刊から取材スタッフとして活動。2001年に一家で福島県田村市都路町に移住。著書に『田舎不動産の見方・買い方』(宝島社)、『失敗しない田舎暮らし入門』『夫婦いっしょに田舎暮らしを実現する本』『お金がなくても田舎暮らしを成功させる100カ条』『福島で生きる!』(いずれも洋泉社)など。
Website:https://miyakozi81.blog.fc2.com/
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