全国に広がっている住みます芸人の笑いあふれる地域協力活動にフィーチャーした、「47都道府県エリアプロジェクト(あなたの街に“住みます”プロジェクト)」をレポートする本連載。
今回は、東京都住みます芸人として活躍する中村ひでゆきさんをクローズアップ。高齢者とのコミュニケーションを通じて、笑いと福祉を融合させるという新しい試みに迫ります。
CONTENTS
東京都住みます芸人
中村ひでゆき
1981年3月12日生まれ。埼玉県大里郡出身。お笑いコンビ「ゆったり感」で活動後、ピン芸人に。NSC東京校9期生。芸歴20年。同期は、ハリセンボン、ライス、しずる など。趣味は、サッカー観戦、漫画。特技は、サッカー。レクリエーション介護士2級。
住みます芸人歴:2019年5月~
活動拠点:東京都
主な活動:高齢者漫談、BSよしもとの出演。
レギュラー:「突撃!! お昼の学校!」(FM西東京)、「みゅーじっくりえいと。」(渋谷クロスFM)
X(旧Twitter):@yutta0nakamura
Instagram:@yuttarikannakamura19810312
YouTube:中村ひでゆきの高齢者漫談チャンネル
【東京都】 |
漫談で高齢者に笑いと健康を! 東京都住みます芸人 中村ひでゆきの挑戦
高齢者とのコミュニケーションを通じて、笑いと福祉を融合させるという試みを続けている、東京都住みます芸人の中村ひでゆきさん。それは単なるお笑い芸人の活動に留まらず、地域社会と深い関わりを持った素敵なアクションになっています。その背景や意義について掘り下げていきます。
住みますコンビから、住みますピン芸人に
中村さんは、2004年に結成した、お笑いコンビ「ゆったり感」として、メディア出演や劇場での公演を通じて、多くのファンを笑わせてきました。しかし、コンビは解散。以降、中村さんは新たな道を模索し、東京都住みます芸人としての活動を本格化させました。
「2023年4月まで、『ゆったり感』というコンビを組んでいたんです。2019年5月に住みます芸人に任命していただくんですが、それ以前でも、コンビで住みます芸人さんがやる『住みます』関連の仕事を、ちょくちょくいただいていたんですよ。そこで、いろいろなまちの人たちとお話しする機会を多くいただきました。それまでは、メディアに出たり、劇場に来ていただいたお客さんを笑わせるようなお笑いの仕事しかやってこなかったんですけど、こっちからお客さんを呼び込んだり、お客さんをステージに上げたりして、“一緒に盛り上げるお笑い”というものを、住みます関連の仕事で経験させていただいたんです。
当時の『ゆったり感』のお笑いの仕事は“お客さんがいて当たり前”だったんですね。住みます関連のお仕事は、そういう環境じゃないときもあります。『お客さんは、こっちが全力じゃないと満足しないんだ』っていうことを痛感したんですね。それら、“そこまでお笑いに興味がない”という方たちにも『芸人って面白いんだよ』というのを伝えたくなったんですよ。そして、そこで出会った方々から『面白かった!』と言ってもらえる喜びを知ってしまったんですよね。それがきっかけで、住みます芸人になることを決め、東京都で活動させていただいています。その後、コンビは解散したんですが、ピン芸人として、住みます芸人を続けさせていただいております。もちろん、コンビのときとはやり方が変わりましたが、地域を笑いで盛り上げたいという気持ちは変わっていません。ひとりでできることを、いろいろ考えながら、ここまで進めてきました」
住みます芸人として高齢者を見守る
中村さんの住みます芸人の活動について、詳しく伺いました。
「芸人としての活動の傍ら、『高齢者宅にお弁当配達と見守り・安否確認をする活動』と、コンビ時代からやっている『高齢者漫談』を継続してやっています。お弁当配達は、以前からずっとやっているバイトなんですけどね(笑)。
お弁当配達に関しては、1日70名程度の高齢者の方へお弁当をお届けしていて、お元気かどうかを確認させていただいているんです。その際の、高齢者の方々とのコミュニケーションがとても楽しくて、そこで起こったエピソードを漫談にして、東京を中心に全国で『高齢者漫談』として公演させていただいているんですよ。
以前、『アメトーーク!』の『40歳過ぎてバイトやめられない芸人』の回に出演したときに話した高齢者とのエピソードが、すごい反響で、それを漫談にしたらいいんじゃない?って思い、それが現在の『高齢者漫談』に発展したわけですね。配達の日にあったことを日記に書き綴っているので、結構ネタは溜まっているんですよ(笑)」
お弁当配達による高齢者との交流
お弁当配達の際には、さまざまな高齢者との交流が生まれると、中村さんは言います。
「お弁当の配達先には、めちゃくちゃ口が悪い方もいらっしゃって、突然『帰れ!』って怒られることもあるんです。『〇〇さんのお弁当届けにきたんだよ』と返すと、それでも『帰れ!』って……。そんなときは『さっきも聞いたよ!』とツッコむこともあります。まれに冗談かと思うぐらい、漫才のようなボケとツッコミが成立することもあるんですよ(笑)。僕のことを泥棒って思っている方もいらっしゃったりして……。その模様などはXにポストしているので、『#高齢者漫談』で検索してみてください」
配達先の高齢者で困った方も少なくないようです。
「毒蝮(三太夫)さんや(綾小路)きみまろさんとは、全然年齢もネームバリューも違う若造なんで、ご高齢の方に毒づくのもまずいんじゃないかな?って思うこともあったんですが、僕の毒舌もたまに喜んでくれることもあったりするんですよ。人にもよりますが、案外、受け入れてもらえるんだって。あくまでも、人によりますよ(笑)。ゴミ屋敷に住まわれている方もいらっしゃるので、ツッコミたくなるときも多いです。さすがに『きったねぇなあぁ~。片付けたほうがいいよ!』って」
「ちょっといい話」も話してくれました。
「配達先がたくさんあるので、一人に対して2~3分程度の会話になってしまうんですが、その会話を楽しみにしてくれている人も、なかにはいるんですよね。ありがたいことに。そんなこんなで、いつも怒ってばかりだった方が、いつのまにかエレベーターで一緒に入り口まで降りてきて、『次いつ来るの?』って言ってくれるようになったりして……。すっかり打ち解けて、孫のようにかわいがってくれることもあります。僕、43歳ですけど……」
お弁当配達の目的は、ただ高齢者宅に配達して回るだけではないといいます。
「健康な人には普通のお弁当を配達していますが、体調にあわせてやわらかいものやムース食も用意しています。『食は健康の源』です。お弁当を残す人には、『ちゃんと食べなきゃダメですよ』とか『次は絶対食べてくださいね』って、しっかり約束をしてもらうようにしています。せっかく仲良くなった方々には、なるべく健康でいてほしいですからね」
さらに、中村さんは続けます。
「安否確認や健康かどうかの確認もあるんですよ。
配達に行って、倒れてるのを発見したってことも何回もあります。僕が配達に行った翌日にお亡くなりになった方もいらっしゃいます。その方が最後に会う人が僕かもしれないじゃないですか。最期に接した人間が、嫌な人だったら嫌じゃないですか。もしですよ、自分がそういう環境で、人生の最後を迎えるときに『なんだよ』って思いながら逝きたくないなって思うんですよ。だったら、『僕が最後に笑わせた方がいいんじゃないかな』と思うようになったんですね。
それからは、どんなに忙しくても、週に1回以上は必ず配達のバイトを入れるように決めました」
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