工務店を営んでいる実家の事情でUターンすることになり、自身でも設計事務所を立ち上げることにした荒川さん。自宅兼オフィスのつもりで購入した古民家が想定以上に立派だったため、市内外の人たちが楽しく集える交流拠点として整備することに決めた。
掲載:田舎暮らしの本 2024年11月号
地元の人が誇りに思えて
市内外の人が集える場に
おにぎりカフェ「うめおとまさこ」と一棟貸しの宿「みわとそら」を妹とともに営んでいる荒川さん。自宅は別途、小規模な古民家を買った。
福岡県内の設計事務所で働いていた荒川司(あらかわつかさ)さん(31歳)は、2020年に豊後高田市へ帰郷後、設計事務所を設立し、自宅兼オフィスとして使える古民家を探していた。そのなかで強くひかれたのが、美しい日本庭園を有する重厚な日本家屋だ。荒川さんはこう振り返る。
「購入を決めたものの、こんなに広い家を1人で使うのはもったいない。地元の人や移住者、観光客がつながる拠点にしようと思い、ここ美和地区にちなんで『miwa!BASE.(ミワベース)』プロジェクトを立ち上げました」
まずは今年4月、大分県産米や地元の食材を取り入れたおにぎりカフェを開業。「肉味噌たまご」「出汁まみれ」といった創作おにぎりのほか、市の「昭和の町」を意識したレトロなプリンやインスタ映えするデザート、アフタヌーンティーセットなどが好評だ。翌5月には、平屋部分に一棟貸しの宿も誕生した。
「結果的に古民家改修の実例にもなり、設計事務所の仕事が増えるという相乗効果も」
と、荒川さん。何より、カフェや宿を通じて、建築関係とはまた違った人たちに出会えることが大きな喜びだという。
2020年4月に設計事務所「nondesign office」を設立。カフェの2階にオフィスを置き、普段はこちらの業務をメインにしている。
おにぎりは約10種で350円~。おにぎりカフェ営業は木~土曜11時30分~14時30分、15時~18時。月、火、第2・4日曜はカフェ営業(デザート)のみで13時~19時。
この夏には市民が交流する「楽しい暮らしサポーターズ事務局」のイベント会場にもなった。
優雅な庭園も魅力の複合施設「miwa!BASE.」。
Instagram:@bungotakadabase_miwa
約50坪の宿泊棟はレトロモダンな内装を生かしつつ、非日常の気分に浸れる快適な空間に。一棟貸しで1泊5万6925円~。
荒川さんに聞く!開業Q&A
Q. 資金はどれくらい必要?
A. カフェは古い内装を生かし、手持ちの家具を使えば費用をかなり抑えられます。宿は快適に改修すると800万~1000万は必要でしょう。
Q. 売り上げを増やす工夫は?
A. まずは認知していただくため、スタッフ全員でSNSでのこまめな発信を心がけています。リピーターを増やすには気持ちのよい接客も大切。
Q. 現在の経営状況は?
A. 経費やローン返済と売り上げがトントンの状態。年100万円の営業利益を上げて10年で4500万円の借り入れを完済するのが目標です。
文・写真/笹木博幸
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