瀬戸内海、日本海、響灘と表情の異なる3つの海に囲まれ、カルスト台地の秋吉台や萩の城下町など自然と歴史にも恵まれた山口県。アジア各地との路線が就航する福岡空港からの集客のほか、ニューヨークタイムズの“行くべき52カ所”に山口市が選ばれた今年は、欧米からの旅行者も増えている。
掲載:2024年11月号
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福岡空港から好アクセス。アジアに加えて欧米も増加中
岩国市の錦川にかかる錦帯橋では鵜飼によるアユ漁が夏の風物詩。間近で鑑賞する遊覧船は海外からの旅行者にも好評。
米国の新聞、ニューヨークタイムズでは毎年1月にその年の旅行先としてすすめる世界各地を紹介している。2024年に〝行くべき52カ所〞として今年、日本から唯一選ばれたのは山口市。コンパクトな都市に国宝の瑠璃光寺五重塔や、おしゃれなカフェ、温泉、祇園祭など多くの魅力を持ちながら、観光公害が少ないと評された。
「東京から東海、関西のゴールデンルートと比べると、外国からの旅行先として山口県はまだまだ知られていません。けれども今回は、知られていなかった魅力が評価されたわけです」
と言うのは山口県インバウンド推進室の野村由希さん。記事掲載後は、これまで市内で見かけることが少なかった欧米から福岡空港から好アクセスアジアに加えて欧米も増加中の旅行者も徐々に増えてきた。
角島大橋。晴れた日の展望台からの眺めは、白い砂浜とコバルトブルーの海が広がる絶景として知られる。
角島大橋のたもとではSUPなどのマリンアクティビティも楽しめる。
海外から山口県への主なゲートは福岡空港。韓国、台湾、香港、中国、ASEAN各国からの直行便が就航している。
「福岡空港から山口県へのアクセスは大分、熊本、長崎といった九州各地と同じ距離感。福岡県から大分県を経由し山口県を回るといったツアーもつくられています」
そこでこれまでは、先の5地域を重点市場としてアジアからの旅行者獲得に力を入れてきた。ただ、コロナ禍を経てインバウンドにも団体から個人へのシフトといった変化が見られ、新たな対応が必要になっている。
「この夏からオンラインで旅行を扱うOTAを活用して集中的に情報を発信し、そこで山口を知った方がそのまま宿の予約もできるようにしました。そのほかにもニューヨークタイムズの記事をきっかけに英語圏に向けた取り組みに力を入れており、JALとタイアップした英語版のフリーペーパーも好評です」
首都圏や関西圏などを訪れている旅行者に、空港や駅で県の情報を英語で発信している。
秋吉台のカルスト台地。広大な草原に、石灰岩が浸食され、すり鉢状にへこんだドリーネが点在する。
日本海側に位置する長門市の長門湯本温泉は約600年の歴史を持つ。日本一そぞろ歩きが楽しい温泉街を目指したまちづくりが進む。
萩の城下町を巡り武家屋敷を訪ねる。散策の足に人力車も人気。
春から実証運行している広域観光周遊バス「ふくの旅、山口号」で外国人旅行者に人気が高いのは、角島大橋と元乃隅神社を巡り、長門湯本温泉、湯田温泉に向かうコース。橋と神社はいずれも〝映え〞スポットとして知られる。また、ふぐの聖地といわれる下関には韓国の釜山からのフェリーが毎日就航する。
「下関では唐戸市場で金土日祝に開かれる〝活きいき馬関街〞が人気です。各店舗に並ぶ寿司を求める人でにぎわいます。ここには韓国のほか台湾からの旅行者が多いですね」
カフェ併設の酒蔵もあり、複数をブレンドしてオリジナルの日本酒をつくる体験が人気。
「先日は韓国の方から『韓国人が来ない場所に行ってみたい』といった声を聞きました。県内には、そうしたニーズに応える隠れた穴場があふれています」
今後は英語、韓国語、中国語など多言語での情報発信や、旅行会社へのPRを通じた県内各地へのツアー企画の促進といった取り組みをこれまで以上にすすめていきたいと野村さん。
「本県を訪れた外国人観光客の方々が安心して県内を周遊できるよう、多言語コールセンターの設置など受け入れ環境の整備にも取り組んでいるところです」
唐戸市場の活きいき馬関街は、新鮮なネタが勢揃いする寿司バイキング。
下関名産ふぐ刺しは、世界に誇れるおいしさ。
山口市の湯田温泉では和菓子づくりや茶道、着物など和文化体験のできるカフェが注目を集める。
海外旅行会社のスタッフを集めて、電動アシスト付きクロスバイクで秋吉台をサイクリング体験。
まだある! 山口県の魅力
県内には角島や下関、山口市のほか、城下町の萩、カルスト台地の秋吉台、瀬戸内のハワイと称される周防大島(すおうおおしま)など、多くの観光スポットがある。これら各地を自転車を足に楽しもうと企画されたのが「サイクル県やまぐち」プロジェクト。12のサイクリングルートと、6エリアのまちなか自転車散歩ガイドは、それぞれマップにまとめられ、インターネットのサイトからダウンロードもできる。サイクリングだけでなく、県内各地の見所の位置を知るためにも役に立つ。
サイクル県やまぐちProject http://cycleken-yamaguchi.com
■山口県の観光情報はこちらをcheck!
【YAMAGUCHI TRAVEL GUIDE】https://www.visit-jy.com/en/
【山口県観光サイト おいでませ山口へ】https://yamaguchi-tourism.jp/
「自然豊かな山口県はサイクリングやマリンアクティビティなどアウトドアの魅力もいっぱい。おいしいお酒と海産物は県内どこでも味わえます!」
インバウンド推進室 福居俊一さん(左)&野村由希さん
数字で見る! 山口県インバウンドDATA
●外国人延べ宿泊者数
2023年1月~12月.......91,460人
2024年1月~6月.........62,770人
(観光庁「宿泊旅行統計調査」)
●国・地域別外国人延べ宿泊者数 (2023年1月~12月)
韓国..............................23,670人
台湾............................... 9,940人
中国(本土)................. 5,540人
香港................................ 2,900人
米国................................14,280人
タイ.....................................980人
欧州.................................. 3,540人
その他..............................14,500人
(山口県観光スポーツ文化部観光政策課「令和5年山口県の宿泊者および観光客の動向」)
山口県移住支援情報
移住希望者にはお住まいの地域から山口県への往復交通費を補助!
「YY!ターン支援交通費補助制度」は、山口県への移住を希望する人が、移住に関するツアーや暮らし体験などに参加する際の交通費(実費)を補助する制度。上限額は地域により異なり、北海道・東北3万円、首都圏2万円、北陸・中部1万5000円、近畿・四国・沖縄県1万円、中国・九州が5000円。ほかにも移住希望者向けに、「やまぐちYY!ターンパスポート制度」として、県内協賛企業にパスポートを提示することで特典が受けられるサービスも展開中。
お問い合わせ/中山間地域づくり推進課 ☎︎083-933-2546
https://www.ymg-uji.jp/
草原に白い石灰岩が顔を出す秋吉台のカルスト台地。特別天然記念物に指定されている。
移住フェアでの山口県の相談ブース。
文/新田穂高 写真提供/山口県
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