今年10月、4連蔵を活用して誕生した長野県高森町の複合施設「Daikokugura」。考え抜かれた骨太なコンセプトに基づいてリノベーションされた古民家施設を手がける、古民家再生のプロに取材した。
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掲載:田舎暮らしの本 2024年12月号
長野県高森町
飯田市に隣接する、天竜川西岸の段丘に広がるまち。まちなかはコンパクトにまとまっているため生活利便性が高い。果樹栽培が盛んで、干し柿の高級ブランド「市田柿」発祥の地でもある。東京から中央自動車道経由で約3時間30分。
複合施設
Daikokugura(だいこくぐら)
折山さん(右から2番目)、木下さん(左から2番目)とボランティアの皆さん。横にはシンボルツリーのカキの木が。
パン工房などの
古民家複合施設が始動
宿をオープンさせたことで折山さんのもとには古民家再生のオファーが舞い込むように。その中から、比較的状態がよく、地域に価値をもたらしてくれる物件を活用するプロジェクトを始動した。その第1号が高森町の「Daikokugura」。10月にパン工房とギャラリーがオープンし、今後はカフェやゲストハウスが開業予定の複合施設だ。
「築約150年の4連蔵を改装しました。コンセプトは『醸造』。建物や人との関係が時間をかけて醸され、深まっていくという思いをこの空間に込めました」
そう話すのは、空間構成と照明計画を担当した建築士の木下和之(きのしたかずゆき)さん。コンセプトを表現するのは、酒樽を模したデザインだ。カフェのカウンター上部やゲストハウス内装などに、酒樽の丸みを表現した湾曲が施されており、建物全体に統一感を出している。
当初、建物はひどい状態だったという。清掃などに協力してくれたのは、たくさんの地元のボランティアさんたちだ。
「当時のままの部分も多いですが、ここは完成されないままがいいと思うんです。今後、いろいろな人がかかわる余地がたっぷりあるから。私たちがいなくなったその先も、この建物が残り、変化していくなんてワクワクしませんか」(折山さん)
木下さんも、その視点を折山さんから学んだという。
「通常、建物の価値は建ったときが最高値ですが、古民家はたくさんの人がかかわることによって価値が高まります。皆さんが集まり、ここで新しい思い出をつくっていく過程のすべてが、古民家の魅力です。その過程を大事にして設計・デザインをしています」
【Before】
築約150年。この4連蔵の前には母屋もあったが、こちらは状態が悪かったので解体。蔵を活用することに。
【After】残置物を撤去し、できるだけそのままの状態で使用!
4つの蔵が連なった建物を利用した「Daikokugura」。左側はギャラリーと物販店舗、右側の引き戸部分はカフェになる予定だ。
複合施設全体のコンセプトは「醸造」。そのため、酒樽のように湾曲した壁になっている。2階のゲストハウスは、今年中のオープンを目指している。
改修時に新建材を使わず、無垢の素材や昔ながらの塗料などですべて仕上げた。
Check
梁と天井を見て、物件の状態を確認した。
カフェのカウンター。上部には酒樽の丸みをイメージしたカーブの下がり壁がある。カフェのオープン時期は未定。
壁を漆喰で塗装するボランティアさん。この漆喰も、石灰や柿渋エキスなどでDIYした自然素材。
【問い合わせ先】
住所:長野県高森町下市田1197
Instagram:@daikokugura
建築家・木下さんに聞く!
古民家物件のCheck Point
古民家で見るべきは、屋根と柱、床下。屋根の状態が悪かったり、床下が朽ちていたりすると、修繕がかなり大変になります。また、大黒柱がしっかりしているかどうかも大切なポイント。昭和の家などはベニヤなどで囲われていて目視できないこともあるので、注意が必要です。
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