日本各地にある、地域特有の食材を使ったご当地鍋。なかには古くから食べられ続けてきた鍋もあります。歴史や文化などの背景とともに、ご当地鍋を紹介します。
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そぎ落すから“そずり”。肉食文化の歴史を感じる鍋
そずり鍋【岡山県】
岡山県の津山地域は古くから牛馬の流通拠点であり、仏教の影響で肉食が禁止されていた江戸時代も、津山藩は「養生食」として肉食が認められていた。「そずり鍋」は、そんな肉料理の1つ。そずり肉とは骨の周りの肉のことで、骨からそぎ落として(津山方言で「そずって」)使うことからこの名が付いた。現在はさまざまな部位をそぎ切りした肉に、野菜やキノコなど山の幸もふんだんに使用。しょう油ベースのだし汁に濃厚なうま味が溶け出し、異なる肉の食感が楽しめる。
牛骨のまわりからそぎ落とした(津山方言で「そずった」)部位「そずり」、白菜、白ネギ、えのき、しめじ、大根、豆腐、お酒、などを醤油ベースのだしで煮込む。
写真提供:岡山県観光連盟
↓そずり鍋について詳しくはこちら
https://www.okayama-kanko.jp/gourmet/10449
そずり鍋は「晴れの国おかやま館オンラインショップ」から購入できます!
豆乳好きは絶対食べて! 大豆をすりつぶした「すったて」の汁物
すったて鍋【岐阜県】
写真提供:岐阜県
茹でた大豆を石臼などですりつぶした「すったて」に、味噌やしょう油などを加えた汁物は、飛驒地域に伝わる郷土料理。昔は祝い事や報恩講(浄土真宗の行事)などで出された。レシピは地域や家庭で違い、本来は具が入っていない。最近では、世界文化遺産の合掌集落のある白川村で、飛驒牛や地元産のキクラゲ、野菜などを加えてアレンジした「すったて鍋」が新しい名物となっており、村内の飲食店や宿泊施設で味わうことができる。
【ライター横澤寛子からのひとこと】
近年、ヘルシー食材として人気の豆乳。豆乳鍋もすっかり定番になりましたが、古くから食べられていたのですね。クリーミーな味で、栄養たっぷりで汁ごといただけるのが魅力です。ぜひ、飛驒地方へ行ったら食べてみてください。リピートしたくなるおいしさです。
【つくり方】
材料(4人分)
・大豆……20g
・うすくち醤油……5g
・水……適量
1 大豆は洗って、豆がかぶるくらいの水に一晩浸しておく。
2 浸しておいた豆を煮る。少しかたいなと思うくらいで火を止める。
3 そのままミキサーでなめらかになるまですりつぶす。
4 鍋に移し、しょう油で調味し、沸騰寸前で火から下ろす。
レシピ提供元:岐阜県学校栄養士会
※レシピは地域・家庭によって違いがあります。
↓すったて鍋についてや食べられるお店はこちらから
http://gifu-kiwami.jp/products/3229/
飛鳥時代から食べられていた由緒正しき牛乳鍋のルーツ
飛鳥鍋(あすかなべ)【奈良県】
鶏肉、野菜を牛乳とだし汁で煮込んだ、1300年以上前から食べられていたとされる郷土料理。飛鳥時代に唐から奈良へやってきた使者が練乳に似た乳製品を伝え、そのうち飼っていた鶏の肉を牛乳で煮て、食していたものが「飛鳥鍋」の起源といわれている。当時は飼っていたヤギの乳を使っていたが、昭和初期に明日香の名物料理として地域の産品である牛乳を使った現在の「飛鳥鍋」のかたちが考案された。
原稿/横澤寛子
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