「ゼロからのまちづくり」から復興に取り組んでいる福島県大熊町(おおくままち)。2025年3月には、商業施設や産業交流施設がオープンするなど、駅周辺の利便性が向上し、買い物環境が整備されました。今回は、未来に向けて大きく歩み始めた大熊町を紹介ます。
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福島県の太平洋沿いに広がる浜通りエリアのちょうど真ん中に位置する大熊町。まちには福島第一原子力発電所があり、2011年3月の東日本大震災で事故が発生した際には全町民がまちから避難しました。つまり、まちに誰もいない、人口ゼロの状態……。その避難指示は、2019年に一部避難指示が解除、2022年にはまちの中心地区の避難指示が解除されました。
震災により一変してしまった大熊町の歩み
新たな拠点の誕生
大熊町は、福島県浜通りエリアの中央に位置し、東に太平洋、西には阿武隈高原と自然が豊かな町です。夏は涼しく冬は比較的温暖という気候をいかし、キウイや梨などの栽培が盛んであったため、“フルーツの香り漂うロマンの里”という愛称で親しまれてきました。そんな大熊町を一変させたのが、東日本大震災。東京電⼒福島第⼀原⼦⼒発電所事故の影響により、町全域が「避難指示区域」および、「警戒区域」となり、全住民の11,505人が町外への避難を強いられてしまった……。その後、5年以上が経過しても復興は進まない状況が続きました。
そんななか、最初に避難指示解除となったのが大河原地区。震災から8年後の2019年のことです。大熊町役場や郵便局、公営住宅や教育機関などが整備され、帰還者をはじめ移住者の生活拠点となりました。2022年には、かつて町の中心地であったJR常磐線「大野駅」周辺の避難指示も解除され、大野駅西口一帯を「大野駅西交流エリア」と名付け、復興の象徴となる拠点の整備が進められました。
かつて駅前商店街があった場所に商いの場や集いの広場を再⽣させ、町の⽞関⼝としての機能を取り戻すため「商業施設」を、町内での事業を再開したい人や復興業務に携わる拠点を町内に置きたい人に向けた「産業交流施設」として建設することが決まり、進められてきました。
そして、2025年3月15日に商業施設「クマSUNテラス」と、産業交流施設「CREEVAおおくま」がグランドオープン。
人々が交流し、さらなる賑わいを目指し動き出した「大野駅西交流エリア」
新たな商業施設「クマSUNテラス」
以前は商店が立ち並び、駅前商店街としてにぎわっていた大野駅周辺は、震災後、誰にも手入れされることのない建物の多くは解体。更地になってしまった駅前の整備は、まさにゼロからのスタート。名称は、幅広い世代に親しまれる「みんなのテラス」をイメージして、町のキャラクターの「クマ」と「太陽が照らす」という意味が掛かっています。
商業施設「クマSUNテラス」は、施設の北西から南東にかけて4mも高低差があるところ、建物を1~2店舗ごとの分棟形式にし、勾配に沿って配置したことで出入口の段差を小さくしています。また、太陽光パネルを設置し、施設内の電力を賄える設備となっています。昔の面影を残さず新しく生まれかわった分、バリアフリーやユニバーサルデザイン、そして環境に配慮するなど、時代の流れにマッチした誰にとってもやさしい施設となりました。
入店したのは、コンビニエンスストアが1店舗、飲食店が5店舗、文具店1店舗と、合計7店舗。福島第一原発事故後、大野駅前に飲食店ができるのは初となります。ラーメン居酒屋、中華料理、和風ダイニング、ステーキ&カフェ、カフェ&レストランと選択肢が幅広く、イートインスペース「クマSUNラウンジ」では、コンビニエンスストアで購入したものをその場で食べることも可能。
このほか、季節問わず青々とした人工芝の広場や、天候や気候に左右されず遊べるキッズルームもあり、年齢問わずお気に入りの場所が見つけられる施設になっています。
震災前の記憶を胸に、新たな場所で再出発
施設内で注目したいお店の一つが、文具、事務用品、雑貨を取り扱う「ふたば文具」。震災前は「双葉事務器」として、大野駅西口で文具店を営んでいましたが、新たに名前を変え、この施設で営業を開始することに。
店内は什器と什器の空間を取り、広々としたなかでゆっくりと商品を吟味することができます。
カラフルなサインペンなど一般的な文具はもちろんのこと、大学とコラボした商品や、ワークショップなどのイベントができるスペース、まるでジャングルジムのような休憩スペースなど、店内はおしゃれで個性的。文具を購入するだけでなく、「行けば何か楽しいことがありそう」というワクワクが詰まったお店となっています。
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