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田舎暮らしの本 11月号

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田舎暮らしの本 11月号

10月3日(金)
890円(税込)

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群馬県みなかみ町から世界に挑戦する“人口2万人以下のプロチーム”が躍進中!アスリートの「デュアルキャリア」を推奨する3x3ならではの試みも

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群馬県の最北部、過疎指定地域に認定されている山あいの小さな町“みなかみ町”をホームタウンとする、3人制バスケット3x3(スリーエックススリー)のプロチーム、「MINAKAMI TOWN.EXE(ミナカミタウン・ドット・エクゼ)」が躍進中。メンバーは、移住して地元で従事する選手、都心に住み仕事を続けながら参加する選手など、将来への不安を払しょくする「デュアルキャリア」を実現しています。

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自らのプロ経験からこだわった「スポーツを仕事に」

過疎化している地域だから

少子高齢化が進み、典型的な過疎指定地域に認定されている群馬県みなかみ町出身の大塚俊氏と、隣接する渋川市出身の日下謙人氏が共同オーナーとして2018年に誕生したMINAKAMI TOWN.EXE。世界初のプロ3x3インターナショナルリーグ"3x3.EXE PREMIER(ドット・エクゼプレミア)"に参戦中で、創設4年目には初のカンファレンス優勝。現在でも、上位チームのみ進出できるプレーオフに常時出場の強豪チームとして躍進を続けています。

 お話を伺った大塚さんは、中学でバスケを始め、高校卒業後はプロ選手になるという夢を忘れられず20歳で本場アメリカへ。夢はかないませんでしたが、帰国後はbjリーグで念願のプロ選手に。28歳まで活躍し、2018年からは再び現役選手としてプレーを続けながら現職に就きました。

「デュアルキャリアでも世界で戦えるチームになれることを証明したい」と語る大塚さん
「デュアルキャリアでも世界で戦えるチームになれることを証明したい」と語る大塚さん

「引退後、実家に帰ったときにたまたまbjリーグ群馬クレインサンダーズ時代に知り合った同期の日下と話し、3x3というオリンピック種目になる面白い競技があると聞きました。『この少人数スポーツは、過疎化している地域から発信するからこそ面白い』と、観光と農業が主のみなかみ町の知名度を上げる方法として可能ではないかというのがきっかけでした」(大塚さん)

 1年目はリーグの選手リストから選手を選出し参戦。当時は移住者はなく、両氏を中心にプレーを続け、その後は地域協力隊制度を導入するとともに活動を発信することで移住する選手も増えました。4年目の2022年には初のカンファレンス優勝を飾っています。

「3x3はデュアルキャリアを推奨しているスポーツで、東京で働きながら名古屋のチームに所属することもあります。MINAKAMI TOWN.EXEでも推奨しています。私もそうなんですけど、bjリーグ時代に5人制のプロ選手1本で生活していましたが、30歳を過ぎて引退するときにセカンドキャリアが不安でした。移住した選手は、ここで子ども向けのバスケットスクールや大会開催などを通じて、地域のスポーツ振興や観光需要創出に貢献する。こうしたデュアルキャリアを推奨しているMINAKAMI TOWN.EXEが世界でも戦えるチームになることで証明をしていきたい。業界を変えるつもりです」(大塚さん)

高みへのチャレンジと自分の可能性を信じて

日々充実した生活

「やりたいことに向かって一歩踏み出してみるということがすごく大事」と新保選手(右)
「やりたいことに向かって一歩踏み出してみるということがすごく大事」と新保選手(右)

 2025年の大学卒業後にみなかみ町に移住し、MINAKAMI TOWN.EXEに入団した新保(しんぼ)圭都選手にも話を伺いました。青森県八戸市出身の新保選手は小学校からバスケを始め、仙台の大学に進学後の3年生の終わりに、同じく仙台の3x3チームの練習に参加し、4年生のときに入団しました。今年3月に八戸で大会があり、MINAKAMI TOWN.EXEと対戦した際に、トレーナーをしている地元の先輩である中田(翔太)さんから、「より高いレベルで練習でき、強いチームで活躍ができるチャンスがあったらどうしたい」と話しをいただいたそうです。

「3x3を始めてまだ少しでしたが、MINAKAMI TOWN.EXEに入れるチャンスはなかなかないと思い、自分の可能性と、高いところでチャレンジしたくて、大学卒業と同時に移住、入団しました。MINAKAMI TOWN.EXEに入る前は、普通の会社で働きながらバスケを続けようかなと思っていましたが、チームの運営に関わりながらバスケットも続けられて、日々充実した生活を送れているので選択をしてよかった」(新保選手)

教える立場に立って気づいたこと

 神保選手は現在、地域おこし協力隊という形でチームのスポンサー営業であったり、スクール事業の指導者として幼児から中学生、高校生までの子どもたちと触れ合っています。その営業活動では、みなかみ町の地元の人たちの温かさを感じるそうです。

「仕事で僕がいろいろ話していくなかで、全然群馬県とは関係ない人間ですけど、温かく質問してくださったり、みなかみ町の良さを教えてくれます。スクール関係の親御さんも、コンビニやスーパーで会ったときにでも優しく声をかけていただきます」(神保選手)

 スクール事業はバスケだけではなく、フィジカルや空手、チアなど多岐にわたり、高齢者向けのストレッチ教室も含め、スポーツを通してみなかみ町を豊かにしていくことが大きなテーマになっています。みなかみ町の小・中学校には800名ほど生徒がいますが、そのうちの135~140名、2割くらいの子どもたちがスクールに関わっており、もうみなかみ町にはなくてはならない活動になっています。そのなかで新保選手はバスケとフィジカルスクールを担当していますが、そこではプレーにもつながる気づきがあるといいます。

「バスケを始めたばかりの子もいれば、上手な子もいるので、何が的確な指導なのかを考えながらやることは難しい。自分が思っている当たり前のことが、子どもたちにとっては当たり前ではないことも。子どもたちにどう言えば伝わるのか、何を伝えるべきかを考えることで、相手の気持ちになって考える、周りに配慮しながら指導するというところが少しずつできるようになっているかな。自分が当たり前だと思っていたことが、実はもっと工夫すればいいプレーになるとか、自分のプレーにもつながる、そんな気づきもありますね」(新保選手)

新保選手(左)は先輩の坂東秀梧選手(右隣)の指導のうまさに日々学びを感じている
新保選手(左)は先輩の坂東秀梧選手(右隣)の指導のうまさに日々学びを感じている

地元開催では900人が来場

 3x3は5人制バスケに比べて省スペースで開催することができ、コートと客席が近いことから迫力も間近に感じることができます。MINAKAMI TOWN.EXEでは今年の7月と9月に、所属するもう一つのリーグ(3x3 UNITED)で地元開催を行い、7月は800人、9月は900人の町の人たちが会場に集まりました。

「初めて見る方がほとんどです。でもバスケと違って10分間、一発のシュートで終わるのですごく見やすいスポーツだと思います。コートも狭いので、一点を見ていればいい。実際に見た方は『すごい!』とか『楽しかった』と喜んでくれました。スクールの子どもたちもたくさん応援に来てくれましたが、コーチがコートで戦っている姿は子どもたちに響きますよね。普段見られる顔ではないので、その姿はすごく格好良くて、子どもたちの憧れになったんじゃないかな」(大塚さん)

客席が近く試合の臨場感も抜群。会場ではスポンサー企業の物販ブース、キッチンカーも並び大盛況
客席が近く試合の臨場感も抜群。会場ではスポンサー企業の物販ブース、キッチンカーも並び大盛況

チームのテーマは「みなかみから世界へ」

一歩踏み出してみる

 青森県八戸市から大学進学で仙台へ、そして今回は群馬に移住した新保選手。東北からまったく行ったことのなかった関東近辺に来ることは少し抵抗があったといいます。しかし、チームのメンバーやスタッフのサポートがあり、すぐに慣れて問題なく生活できているそうです。

「住んでいるアパートの横に利根川が流れていて、気になっていたラフティングをやってすごく楽しい経験ができて気に入っています。僕の場合はバスケットをやりたくて移住しましたが、自分がやりたいことを決めている人だったら駄目な場所はないと思うし、住んでみたらすごくいい場所になる。自分がやりたいことに向かってチャレンジしたい方とか挑戦したい方は、移住してやってみるのもおすすめです」(新保選手)

 現在、MINAKAMI TOWN.EXEのメンバー13名のうち、みなかみ町に移住しているのは5名。スタッフを合わせると18名のうち半分がみなかみ町に住んでいます。これは3x3.EXE PREMIERを戦う上でも強みになります。コミュニケーションがより密になっていることがチームの躍進につながっているようです。一方で、大塚さんは都心で仕事を続けながらみなかみ町で暮らすライフスタイルも推奨します。

「東京から1時間。東京の会社に勤めていても、ある意味住める環境です。リモートワークの方々もそうですけれども、そうでなくても、自然が豊かな場所なので東京の人混みが苦手の方におすすめしたい。土日が休みであれば、その日ゆっくり過ごせる場所。生活の拠点を置いて、新幹線で東京に通っているサラリーマンの方がたくさんいます。新幹線補助もありますし、高速道路も通っています」(大塚さん)

プロスポーツ事業を軸にチアやスポーツスクールなど、スポーツを通じてみなかみ町で輪が大きく広がっている
プロスポーツ事業を軸にチアやスポーツスクールなど、スポーツを通じてみなかみ町で輪が大きく広がっている

歴史あるチームを作っていきたい

 最後に今後の夢や目標を両名にも伺いました。

「チームでの目標は、もっと試合に出られるように、普段の練習とか自分が人としてプレーヤーとして成長し続けて、もっとチームに貢献できるような選手になっていくこと。そして子どもたちが楽しそうにやっているのを見ると、僕も励みになるので、もっと多くの子どもたちに参加していただけるようにコーチとして、指導者としてのスキルを上げて、より多くの人にいい影響を与えられ選手、指導者になることです」(新保選手)

「『みなかみから世界へ』をチームのテーマにしています。そのためにも、チームがまずは世界で活躍できるようになっていかなきゃいけない。先日、上海から帰ってきまして、世界大会にもすでに何度も出ているんですけど、その数がより増えていくような形にすることが重要になってくと思います。そして、みなかみ町においてより大きくなっていくためにも歴史あるチームを作っていきたい。自分が引退したあとも続くチームを作るためにも、育成がすごく重要。近い将来、いまスクールとか通っている子が、高校、大学を出た後にチームに帰ってくる。そういったことも、見えてきました」(大塚さん)

 チーム創設8年。選手は若返る時期を迎え第2フェーズに進もうとしているMINAKAMI TOWN.EXE。「スポーツを仕事に」というポリシーが、デュアルキャリアとしてアスリートの挑戦を後押しし、みなかみ町で生まれ育ち、スクールを通して将来チームに戻ってくる。第3のフェーズも見えてきました。「みなかみから世界へ」は夢ではなく、一歩一歩着々と世界に近づいています。

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  • 群馬県みなかみ町から世界に挑戦する“人口2万人以下のプロチーム”が躍進中!アスリートの「デュアルキャリア」を推奨する3x3ならではの試みも
  • 「デュアルキャリアでも世界で戦えるチームになれることを証明したい」と語る大塚さん
  • 「やりたいことに向かって一歩踏み出してみるということがすごく大事」と新保選手(右)
  • 新保選手(左)は先輩の坂東秀梧選手(右隣)の指導のうまさに日々学びを感じている
  • 会場ではスポンサー企業の物販ブース、キッチンカーも並び大盛況だった
  • プロスポーツ事業を軸にチアやスポーツスクールなど、スポーツを通じてみなかみ町で輪が大きく広がっている

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マイヒーロー

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「MY HERO(マイヒーロー)」はスポーツに特化した企画・制作会社です。地方で頑張るアスリートや競技団体を取材し、「スポーツ×田舎暮らし」をテーマにした記事をご紹介していきます!

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