家族にとってより豊かな環境を求めて、地方移住を考える子育て世帯が増えている。東京で子育て中の筆者もそのひとり。地方移住に関心を持つ親世代を代表して、今注目の“子育てしやすいまち”を訪ねる。第1回は、本誌の「2025年版 住みたい田舎ベストランキング 移住者増の人気地ベスト100」第1位・茨城県境町。経済支援と教育支援、どちらも全国トップクラスの手厚さを誇るこのまちの魅力に迫る。
掲載:2025年12月・2026年1月号
CONTENTS
茨城県境町
茨城県西部、利根川を挟んで千葉県や埼玉県に近接する人口約2万4,000人のまち。平均気温は1月3.6℃/8月26.8℃。毎年9月に開催される利根川大花火大会は全国屈指で、約3万発が夜空を彩る。アクセスは圏央道・境古河ICから東北道・川口JCTまで車で約30分。境町高速バスターミナルから王子駅へ約55分/東京駅へ約90分と、首都圏へも好アクセス。
約3万発が夜空を彩る、関東最大級の花火大会。音楽とともに打ち上がる光のアートを、家族で見上げる特別な時間。
移住者増の人気地・第1位に輝いた境町の魅力とは?
萩原さんファミリー
萩原扶美さん、てつやさん、おうすけくん(10歳)
おうすけくんが4歳のときに東京から境町に移住。夫婦ともに東京の会社を退職して境町で就業。現在扶美さんは境町観光協会に勤務。写真/結婚記念日は「道の駅さかい」内の〈ウルフギャング〉へ。ほかにも銀座の名店〈おのでら〉の回転寿司など、憧れの人気店が町内に続々と出店している。
―萩原さんは、2019年に東京から境町へ移住されたそうですね。きっかけを教えてください。
「息子が4歳のときでした。仕事や日々の生活に追われるなかで、“もっと家族の時間を大切にしたい”と感じるようになったんです。思い切って仕事を辞め、マンションも売って、暮らしをいちから見直そうと決めました。実家から10分の距離に住んでいたので、両親はびっくりしていましたけど(笑)」
―数ある地域の中で、なぜ境町を選ばれたのですか。
「ちょうど境町が子育て支援をぐっと強化していた時期だったんです。保育料の軽減、医療費や給食費の無償化といった経済支援に加え、無料で先進的な英語教育を受けられるのも魅力でした。東京へのアクセスの良さも大きな決め手でしたね」
―地域おこし協力隊を経て、現在は境町観光協会に勤務されているそうですね。移住者の立場から見て、このまちの強みは?
「まずは、東京へのアクセスの良さです。2021年に高速バスが開通して、東京駅までは約90分、王子駅までは55分。座って行けるので通勤も通学も快適です。高速バスを使って東京の学校に通う子も多く、定期券の半額が助成されるのも大きいですね」
―東京へのアクセスのよさと、地方ならではのゆとり。その両方を実現できる、まさに“ちょうどいい地方”ですね。
「そうですね。それに、住宅支援がとても手厚いんです。なかでも注目なのが、“25年間住み続けると家と土地がもらえる”という新築戸建ての賃貸住宅。家賃は月6万円台で3LDK。東京では考えられませんよね」
―まずは賃貸で住めるのも安心ですね。
「はい。賃貸住宅だからこそ、会社の住宅補助が使える場合も多く、実質的な負担をさらに抑えられます。浮いた分を、将来の子どもの教育費のための貯蓄や投資に回せるのは大きいですよね。私が移住した当時は“もらえる戸建て”はまだなかったので、今は子育て世帯向けのマンションに住んでいま
す。そこには入居者専用の遊具スペースがあり、移住者同士の交流の場にもなっています。とても楽しいですよ。とはいえ、やっぱり戸建てには憧れがあるので、私も次回の募集があれば応募したいなと思っています(笑)」
子ども会のイベントで家族そろってマスカット狩りへ。移住世帯が増えているから、地域イベントの参加率も高く、自然と交流が生まれる。
親の収入にかかわらず、すべての子どもに高レベルな教育を
「教育環境の充実ぶりも境町の大きな魅力です。特に英語教育はすごいんですよ。2泊3日英語漬けのイングリッシュキャンプや、ホノルルへのホームステイに無料で参加できるんです」
―それは驚きですね。英語教育は家庭の経済力で差が出やすい分野ですが、境町ではすべての子どもが平等に学べるんですね。
「そうなんです。『さかいっ子未来塾』という無料の学習の場もあり、各学校で週2回開催されています。そのうち1回はALT(外国語指導助手)の先生による英語の授業なんですよ」
―地方だと“塾や習い事が少ないのでは”と不安に思う人もいますが、むしろ境町はプラスの面が多そうです。
「学童でも宿題を見てもらえますし、元教員の方が来てくれる日もあります。さらに、スポーツ教室も充実しています。息子は地域おこし協力隊のサッカー選手が教えるサッカー教室に通っています。学童が小学校に隣接していて、校庭で活動するから送り迎えも不要。BMXやホッケーなどの教室もあ
り、しかもどれも無料なんです!」
―それは子どもにとっても親にとっても理想的ですね。
「そうなんですよ。最近はテレビでも境町が紹介されることが多く、5年生の息子もまちの取り組みに興味を持っています。英語教育はもちろん、自動運転バスやドローン研究所の見学など、境町にいることで新しいものに触れ、興味をどんどん広げていっています。ここにいるだけで、子どもの未来が自然に育っていくように感じますね」
長田小学校敷地内に建設された、ワクワクするようなカラフルな外壁の放課後児童クラブ。アルゼンチン・カミニートの雰囲気を取り入れているのだとか。
学童では、教員免許を持つ学習指導員が学習をサポート。宿題を見てもらえるので、帰宅後は家族でゆっくり過ごせる。
小学4年生以上が対象の〈さかいっ子未来塾〉。ALTによる英語指導も無料で受けられる、境町ならではの学びの場。
夏休みなどの長期休み中、学童では給食センターで調理された昼食を1食250円で提供。温かくて栄養満点の食事が食べられ、お弁当づくりの負担も軽減。
放課後スポーツ教室は、学校から会場への送迎付きで、参加費も無料!BMX、サッカー、ホッケーなど、本格的な指導が受けられる。
全国の自治体に先駆けて自動運転バスを導入し、ドローン活用も推進中。子どもたちは最先端のデジタル技術に触れながら育っている。
家族の時間を削らずに、子どもの未来を育てるまち
親の収入が子どもの学力に比例するといわれる今、少しでもよい教育を―と、不安を抱えながら必死に働き続ける親は少なくない。けれどそのぶん、肝心の子どもと過ごす時間はどんどん削られてしまう。
境町のように、教育と暮らしの基盤をまち全体で支えてくれる環境があれば、家族の時間を削らなくても、子どもの未来を育てていけるのかもしれない。取材を通して、そんな希望を感じた。
茨城県境町の住みたいPoint
「都会超えの学び」と「家計に効く支援」
―境町のWサポートが子育てを後押し!
高速バスで東京駅まで最短90分、王子駅まで最短55分! 無料駐車場あり
子どもの未来を伸ばす、都会超えの教育環境
①「英語移住」が急増! 無料の先進英語教育
英語教育はお金がかかる―その前提を、境町はまるごと覆す。「すべての子どもが英語を話せる町」を掲げ、先進プログラムを誰でも無料で受けられる仕組みを整備。
ALT配置
1校平均 3.7人(全国平均の約4倍)が常駐し、日常的に英語に触れられる環境を整備。また、保育園にもALTを配置し、幼児期から英語を体験できる。
海外ステイ・集中プログラム
姉妹都市ハワイ・ホノルルへのホームステイ無料/2泊3日英語キャンプ無料
学習サポート
無料の英語塾(さかいっ子未来塾)&放課後オンライン英語教室
ハワイ・ホノルルでホームステイ
今年度は37名が参加。英語と文化も“現地で”学ぶ貴重な体験。
イングリッシュキャンプ in 軽井沢
町が所有する軽井沢の保養所で実施。2泊3日“英語漬け”の集中プログラム。
②家の近くで“世界レベル”。スポーツがグンと伸びるまち
境町なら、BMX・スケボー・インラインスケートなどのアーバンスポーツをオリンピック級の環境で日常的に練習できる。町の中心にあるアーバンスポーツパークに加え、隣接地には特殊人工芝ジャンプ台(整備中)や人工サーフィン施設も。最高峰の施設を求めて移住したプロによる指導も受けられ、送迎付きで参加費無料の放課後スポーツ教室も。
境町アーバンスポーツパーク2nd
東京五輪で使用したBMX競技施設を移設。世界基準のコースで日常練習ができる。
特殊人工芝のスキー/スノボ用ジャンプ台「SAKAIビッグエアパーク」
散水で“雪の滑走感”を再現し、オフシーズンも安全に練習できる。
③学習塾いらず!
小4〜中学生を対象に放課後の無料学習支援「さかいっ子未来塾」を実施(中学生は平日週1回、小学生は平日週2回のほか土曜も実施)。教員免許を持つ指導員などが、宿題から基礎固め、テスト対策までサポート。
+探究も“まちぐるみ”で
自動運転バスやドローン研究所の見学、プログラミング体験キャンプなど、STEM体験も充実。学びの“知識”と“好奇心”を、同時に伸ばせる!
家計に直結! 多方面からの経済支援
25年間住み続けるともらえる家
子育て世帯と新婚世帯向けの新築戸建て住宅は、25年間住み続けると、家と土地が無償で譲渡される。賃貸だから固定資産税や火災保険料もかからないし、職場の家賃補助も使える上、住宅ローンのように利子を支払う必要がないとメリットが多い。第4弾となるアイレットハウス オハナタウンIIの申込みを締め切ったところだが、今後も都度募集が行われる予定だ。
アイレットハウス オハナタウンII。3LDKで月6万4000円(要件あり)、延床は約30坪とゆったり。
子育て費用の無料化に加え、各種奨励金も
町独自の子育て支援も充実
20歳の学生まで医療費無料、きょうだいの年齢にかかわらず第二子以降の保育料は無料。さらに保育施設・小中学校の給食費も無料で、子育て世帯の負担を大きく軽減。加えて、移住・定住を後押しする奨励金や各種補助金も用意されている。
【問い合わせ先】
地方創生課
☎0280-81-1309
https://www.town.ibaraki-sakai.lg.jp/page/page001032.html
文/揖斐麗歌 写真提供/萩原扶美さん、茨城県境町
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