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田舎暮らしの本 12月号

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田舎暮らしの本 12月号

11月1日(金)
890円(税込)

© TAKARAJIMASHA,Inc. All Rights Reserved.

ホウレンソウ&タマネギ/自然菜園で育てるキッチンガーデン【第20回】

掲載:2021年11月号

冬の太陽を一身に浴び、寒さに当たって甘味を増す

病虫害が少なく無農薬で育てやすいホウレンソウ。品種を選ぶことで秋と春どちらも種蒔きできます。特に、根が赤く冬にはタンポポのように葉を広げて寒さをしのぐ日本ホウレンソウの風味は格別。寒さが増すたびに糖度が上がって甘くなります。ぜひ育ててみてください。タマネギと混植すると、ホウレンソウが一層おいしくなり、タマネギの苗は育てやすくなります。

ホウレンソウは鉄分を多く含むうえ、その吸収を助けるビタミンCや葉酸のほか、β-カロテンやビタミンB群も豊富。赤根ホウレンソウは寒さに強い東洋系の在来種。

ネギやエダマメ後地が最適!豊かな土でおいしく育つ

 ホウレンソウは中東からシルクロードを経て東洋に伝わり、その名は中国で「ペルシャの草」を意味します。日本には16世紀に渡来、江戸時代に高級野菜として栽培されました。中国経由は東洋種と呼ばれ、根が赤く、葉は先が尖(とが)り切れ込みを持ちます。冬には地面を這うように葉を広げ、寒さで甘味を増すのが魅力。袋詰めしにくいなどの理由で市場にはほとんど出回りません。家庭菜園でぜひ育ててみてください。

 虫害は少ないですが、養分過多や未熟な有機物はアブラムシなどを招くうえ、ホウレンソウのアクになるシュウ酸や硝酸態窒素を増やします。とはいえ、やせた畑では育ちません。前作にネギやエダマメを育てるなど、土を豊かにしておきましょう。

 タマネギや葉ネギとの混植でさらに育てやすくなります。秋蒔きのホウレンソウと時期が重なるのはタマネギの育苗。タマネギの苗は抜いてすぐ植えないと活着が悪くなり、自分で育苗すれば抜きたてを定植できます。

品種選びのアドバイス

東洋系は寒さに強く甘味が強い
西洋系は春にとう立ちしにくい

 ホウレンソウには中国経由で渡来した東洋系のほか、幕末から明治初期にヨーロッパから導入された西洋系があります。西洋系は根元が白く葉先が丸く、東洋系と比較して耐寒性は弱いですが比較的高温に強いです。また、両者の特性を活かした交雑種も広く普及しています。今回は秋蒔きに適した東洋系を中心に紹介しますが、春夏蒔きには、春にとう立ちしにくい西洋系を選んでください。

日本ホウレンソウ

 東洋系で根が赤く甘い在来種。西洋系や交雑種と比べて生育は遅く、耐寒性は非常に強い。

肥料を控えるとアクが少なく育ち、サラダで生食もできる。

赤根ホウレンソウ(冒頭の写真参照)

 山形県山形市の農家が自家採種を続けて選抜した。根の赤味が強く、耐寒性に優れ、甘味が強い。大株に育ち、とう立ち後もやわらかく食べられる。

寒味

 西洋種と東洋種の掛け合わせで、とう立ちしにくく育てやすい。F1品種。葉の縮みがきれいで、葉肉が厚く、甘味と風味が強くておいしい。

じっくり育つので冬場は畑に置いて長期間収穫できる。

ホウレンソウの主なコンパニオンプランツ

混植や前後作でよく育つ

タマネギ

効果

混植や前後作でお互いに生育を促し、ホウレンソウがおいしくなる。

栽培のポイント

定植後のタマネギとホウレンソウを混植するときは条間を20㎝ほど空けて栽培する。

収穫のポイント

葉が青いうちに早穫りする葉タマネギは、傷みが早いため店頭には出回らない家庭菜園ならではの楽しみ。保存用は7~8割の茎が倒れたら晴れた日に一斉収穫。

春の育苗で使った落ち葉の踏み込み温床※で、秋から冬にタマネギとホウレンソウを育てた例。収穫は翌春の育苗開始まで。タマネギは春先においしい葉タマネギとして利用する。※落ち葉やワラなどを積み、踏み込んで発酵させ、その熱を利用して育苗適温を得る方法。

葉ネギ

効果

お互いに生育を促し、ホウレンソウがおいしくなる。春蒔きのホウレンソウのために、葉ネギが日陰をつくり暑さを和らげる。

栽培のポイント

ホウレンソウの前後作に。混植するときは、条間20㎝で育てる。苗との混植はタマネギ苗に倣う。

収穫のポイント

地上部を順次刈って収穫する。株が細くなったり、本数が10本以上になったら株分けして植え替えると太くなる。

エダマメ

効果

交互に育てると連作ができる。前作のエダマメは土をよくしてホウレンソウの生育を助ける。

栽培のポイント

残暑が厳しいときはエダマメの条間の半日陰で暑さを避けてホウレンソウを蒔く。

収穫のポイント

サヤが7~8割太ったら早朝に収穫。鮮度が落ちやすいので早めに調理する。

地際から刈り取り、葉を落としてサヤを付けたまま持ち帰る。

ゴボウ

効果

ホウレンソウと同様に直根で畝の水はけをよくし、お互いの生育を促進する。

栽培のポイント

春の混植は同時に種蒔きしてゴボウが大きくなる前にホウレンソウを穫る。秋はゴボウの条間の半日陰で暑さを避けてホウレンソウの種を蒔く。

収穫のポイント

掘り上げる30分前にバケツ1杯の水を株元に染み込ませておくと、土がやわらかくなり掘りやすい。

ホウレンソウ&コンパニオンプランツの配置例

秋は育苗するタマネギと同時に種蒔き
定植するタマネギは畝の中央、ホウレンソウは両側に蒔く

 秋は育苗するタマネギと同時に、畝を横切って種蒔きする。定植するホウレンソウとタマネギの混植では、タマネギを畝の中央に植え、先に収穫するホウレンソウを両側に蒔く。

定植したタマネギの隣にホウレンソウを育てる。

 

監修/竹内孝功

たけうち・あつのり●1977年生まれ。長野県を拠点に菜園教室「自然菜園スクール」などを開催。著書に『 完全版 自給自足の自然菜園12カ月 野菜・米・卵のある暮らしのつくり方』『自然菜園で育てる健康野菜』(宝島社)、『これならできる!自然菜園』(農文協)、『自然菜園で野菜づくり』(家の光協会)、『1 m²からはじめる自然菜園』(学研パブリッシング)など。

WEBサイト「@自給自足Life」https://39zzlife.jimdofree.com/

自然菜園スクール http://www.shizensaien.net/

 

文・写真/新田穂高 イラスト/関上絵美・晴香

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