火おこしのコツは、小さな火を、ちょっとずつ太い薪に移しながら大きく育てていくことにある。上手に薪を組めば火は自然に大きくなる。焦らないことが大切だ。
焚き火では、火持ちのいい太い薪がどんなにたくさんあっても火はおきない。なぜなら、マッチやライターの火を太い薪に近づけても可燃性ガスを発生させるだけの熱量がないからだ。太い薪を燃やすには、まずは簡単に着火するものに小さな火をつけ、それをちょっとずつより太い薪に移しながら火を大きくしていく。
最初に火をつける燃えやすいものを総称して火口(ほくち)といい、その小さな火を移す細い枝などを焚き付けという。薪は最初に上手に組んでおけば、着火した後は何もしなくても焚き付けから、細い薪、太い薪へと自然に火が移っていくものだ。火おこしのコツは決して焦らないこと、そして火をいじらないことである。
身近にある「よい火口」7選
マッチやライターの小さな火で簡単に着火する物質。身近なものでは新聞紙やガムテープ、カンナクズなど。森では落ち葉やスギの葉、薄くはいだ樹皮などがよい火口になる。
❶新聞紙………丸めると火持ちがよい
❷樹皮…………よく乾いたものを薄くはいで使う
❸麻ひも………ほぐすと、けば立って火付きがよい
❹松ぼっくり…ヤニを含み、火持ちがよい
❺落ち葉………からからに乾いたものを集める
❻スギの葉……煙が多く出るがよく燃える
火おこしの7ステップ
【1】薪を用意する
火口となるスギの葉、その火を移す焚き付けの細い枝は特によく乾いたものをたっぷり用意すること。さらに指の太さほどの枝、手首ほどの中太の枝、さらに太い薪へと火を移していく。
【2】かまどをつくる
焚き火をする場所の周りに石があれば、それでかまどをつくって蓄熱、風よけにする。かまどは馬蹄形とし、風上を開けておく。内側の直径は30~40㎝程度。広過ぎると熱が逃げる。
【3】薪を組む
かまどの内側に薪を組む。まず左右に太い薪を平行に置き、間に中太の薪を並べる。その上に火口と焚き付け、さらに指の太さほどの薪とより太い薪をこんもりと積み上げる。
【4】着火する
焚き付けをちょっと持ち上げて空気の通り道をつくり、風上となるかまどの開放部からマッチやライターで火口に着火する。からだを風よけにして、マッチの小さな火が消えないようにする。
【5】細い薪に火を移す
スギの葉は着火後にもくもくと煙を出すが、徐々に収まって大きな火がおきる。焚き付けから細い薪に火が移ると熱量が増し、火持ちもよくなる。この間は何もせずにじっと待つ。
【6】空気を送る
炎が上がらずくすぶっているようなら、酸欠になっている可能性もある。その場合は火吹き棒やうちわで空気を送ってやる。薪を動かすと蓄えられた熱が逃げるのでいじらない。
【7】太い薪に火が移って安定する
焚き付けが燃え尽きると、その上の薪に火が移り、さらに下に置いた中太の薪も燃え始める。左右に置いた太い薪が燃え始めたら、火が安定した証拠。その後は炎の様子を見て、太い薪を追加してやる。充分熱量が上がっていれば、薪をくべると間もなく燃え出す。
焚き付けにもなるフェザースティック
表面が濡れている薪は、ナイフで削ると内側の乾いた部分が出る。またこのとき、表面の皮をそいでしまわずにけば立たせて残すと着火性が高まり、焚き付けになる。この加工は鳥の羽のような形状からフェザースティックと呼ばれる。
メタルマッチを使った火おこしの3ステップ
ここ数年、ブッシュクラフトというサバイバル的なキャンプを楽しむ人が増え、注目されるようになったのがメタルマッチだ。可燃性の高いマグネシウムの棒を金属でこすって火花を発生させるもので、現代的な火打ち石とも言える。水に濡れても使えるのがマッチやライターにないメリットだが、一瞬火花が飛び散るだけなので、火をおこすには多少技術が必要だ。
【1】火口を用意する
完全に乾いた火口を用意し、その上でメタルマッチを構える。ライターやマッチを使用する場合より、着火しやすい火口が求められる。ここではほぐした麻ひもを使用。
【2】火花を飛ばす
メタルマッチの根元に金属を当てて、グッと力を入れて長いストロークですり下ろす。スピードはマッチをするときよりゆっくりとしたイメージ。
【3】火口に火が着いたら、焚き付けに火を移す
火花が火口に移ったら、燃え尽きてしまう前に焚き付けに素早く火を移す。最初はうまくいかないかもしれないが、コツを覚えると数回すり下ろせば火をつけられるようになる。
文/和田義弥 写真/阪口 克
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