田舎の土地には、農地や農振地域など、家が建てられないという制限があります。今回は、その農振地域について、ベテラン田舎暮らしライターがお答えします。
6反歩のきれいな畑に1反歩のスギ林が付いた売地を購入しました。2年後に山林に建築するつもりで役場を訪ねたら、「あなたが買った山林は農振地域だから家が建てられない。畑は第1種農地なので農地転用不可」と言われてびっくり。無許可で農地に家が建てられないことくらいは知っていましたが、スギ林が農振地域なんて意味がわかりません。どういう法律なのですか。
静岡県在住 中川さん●38歳
第1種農地と甲種農地は原則として転用不可
中川さんが購入した第1種農地とは、20ヘクタール以上のまとまりがある農地、土地改良事業を行った農地などを指す。これに似ているのが甲種農地で、市街化調整区域内で土地改良を行い、8年を経過していない農地などのこと。この2つは原則として農地転用(農地を宅地などに変える行為)が許可されない。
農地はほかに、市街化の傾向が強い第3種農地、第3種に近接している第2種農地、山間部にあって生産性の低いそのほかの農地に区分けされる。簡単に許可が出るのは第3種、残りの2つは、周辺の土地で目的を達することができないと認められた場合に転用が許可される。
山林や原野でも農振指定の可能性が
中川さんは山林付き農地を購入したが、「山林は農振地域だから建築不可」と役場に指摘された。この農振地域こそが、重要なキーワードだ。農業振興地域の略で、農業を盛んにしようとする地域を指す(そこにある土地を農用地という)。
窓口は農業委員会ではなく、産業振興を担当する産業課、農林課などの部署。農振地域は農業を盛んにする地域なので、宅地造成などの開発行為は認められない。そして面倒なことに農振地域は、補助金を使って整備した農地だけでなく、山林や原野も指定されることがある。その場合、農地へ転用する以外は認められない。山林でも安心できないのだ。
家を建てるには、まず農振除外の手続きが必要。一般住宅なら必要に応じて150坪以下に分筆(土地を登記簿上、独立した財産に分けること)し、農用地利用計画変更申出書を市町村長宛に提出する。申請の締め切りは、地域により年に2~4回。除外申請が認められたら、山林や原野なら家は分筆した部分にすぐ建てられる(農地の場合は5条申請も必要)。
ただし、農振除外が必ずしも認められるわけではない。山林や原野でも不許可の可能性はあるが、自治体と粘り強く交渉することだ。
文・写真/山本一典 イラスト/関上絵美
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この記事を書いた人
山本一典
田舎暮らしライター/1959年、北海道北見市生まれ。神奈川大学外国語学部卒業。編集プロダクション勤務を経て、85年からフリーライター。『毎日グラフ』『月刊ミリオン』で連載を執筆。87年の『田舎暮らしの本』創刊から取材スタッフとして活動。2001年に一家で福島県田村市都路町に移住。著書に『田舎不動産の見方・買い方』(宝島社)、『失敗しない田舎暮らし入門』『夫婦いっしょに田舎暮らしを実現する本』『お金がなくても田舎暮らしを成功させる100カ条』『福島で生きる!』(いずれも洋泉社)など。
Website:https://miyakozi81.blog.fc2.com/
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