北海道東川町(ひがしかわちょう)は、北海道のほぼ中央に位置する小さなまち。旭川市に隣接する一方、東部は山岳地帯で、日本最大の自然公園「大雪山国立公園」の区域の一部を成しています。1985年に「写真の町」を宣言し、東川町国際写真フェスティバル、写真甲子園も開かれています。
【アクセス】旭川空港から車で約10 分。東京(羽田空港)からは飛行機約1時間半のフライトを経て、その後車で旭岳・天人峡方面へ移動すると約3時間で到着。
そんな東川町は、子育て支援が手厚い人気移住地でもあります。1994年から2018年の間で人口は約20%増。子どもは1.6倍に増加しています。20 15年に日本初の公立日本語学校「東川町立東川日本語学校」を開校。外国人の人口は開校前の2014年に比べて3倍以上に増加しました。
小学校入学時の児童数は、出生数と比べて約1.5倍増で推移しています。つまり子育て世帯の移住者が多いまちなのです。
北欧デザインブランドkippisが東川町に「子育てボックス」を寄付
そんな東川町に、人気の北欧デザインブランドのkippis(キッピス)が共感。「子育てボックス」を寄付することになりました。2022年1月1日~12月31日に生まれた東川町の新生児が対象。「北欧柄で、子育てを楽しく!」をコンセプトにキッピス柄のスリーパーやスタイ、ブランケット、新生児用のおむつなどが入っています。
「キッピスは北欧の文化やライフスタイルを伝えることを大きなテーマにしているブランドです。手厚い福祉制度で知られる北欧ですが、フィンランドの『ベビーボックス(育児支援パッケージ)』はそれを象徴する制度で、子どもが生まれると実に50点もの育児アイテムが贈られるというものです。子どもが生まれるときに、さまざまな買い物が必要になること、それはかなり厄介で大層な作業であり、費用がかさむということをちゃんと国が知っていて、対応している。そして、ボックスに入っているものはデザイン的にもすぐれたアイテムばかり。それを知ったとき、私にとっては感動でしかありませんでした。痒いところに手が届く、便利でおしゃれな無料のボックスが、日本にもあったらいいよね? キッピスでやってみよう!と、いうことで、私たちなりのベビーボックスを作ることになりました」(宝島社マルチメディア 編集局開発課編集⾧ kippisブランドマネージャー 根本江利子さん)
「以前から、東川町の子どもたちに寄り添った施策を意識し、成⾧を温かく見守り、サポートしていきたいと思い、子育て支援に力を入れて参りましたので、今回、数ある自治体の中から、東川町を選んでいただきうれしく思いました。『東川町の子供たちのために』と仰ってくださいましたので、お断りする理由はありませんでした。北欧のあたたかいライフスタイルのイメージを、キッピスの様々なアイテムを通じて、沢山の子どもたちが感じることができればと期待しています。また、赤ちゃんの健やかな成⾧に寄り添える素晴らしい企画であると感じておりますので、可能であれば⾧く連携し継続できればと思っております」(東川町役場 保健福祉課室⾧ 中村あさ子さん)
根本さんに聞く、キッピスが特に感銘を受けた東川町の取り組み
①東川町が15年参加している「君の椅子」プロジェクト
誕生した子どもたちに町内の工房で作られた手作りの椅子を贈る「君の椅子」プロジェクトは旭川大学が主導するものですが、このプロジェクトに最初から参加しているのが東川町です。毎年変わる椅子のデザインの素晴らしさに、まず感動しました。豪華なデザイナー陣もさることながら、このプロジェクトのキャッチコピーが「ようこそ。君の場所はここにあるよ」なんです。子どもが安心していられる場所。東川町はそんな町なのかもしれないというイメージが湧きましたし、子どもの居場所がさまざまな形で狭められがちな現代において、子どもには安心できる居場所が必要なんだよ、という大人の私たちに対するメッセージにも聞こえました。
https://town.higashikawa.hokkaido.jp/special/chair/
②新・婚姻届や新・出生届
事務的に処理するのではなく、婚姻届と出生届を洗練されたデザインの記念品として落とし込み、お渡しするセレモニー的なサービスを実施。人生の節目を大切にする姿勢が素晴らしいと感じました。
https://town.higashikawa.hokkaido.jp/special/birth-registration/
③球場のように大きい保育園の園庭、先進的なデザインの小学校、「本物」と日常を過ごす子どもたち
都内の保育園事情に慣れている身からすると、東川町の保育園には大きなカルチャーショックを受けました。まず、園庭も園舎も広い! 園庭は野球場ぐらいはあるでしょうか。果てしなく園庭でした。園舎では「教室」「給食」「お昼寝」のスペースがそれぞれ別にとられており、それぞれが余裕のある広さでした。さらに東川町の小学校の一つを訪問したところ、なんと教室には壁がありませんでした。270mの廊下で教室がひと続きになった平屋の校舎。こんなに各教室の透明性が高く、風通しのいい校舎のデザインを見たのは初めてでした。学校のフリースペースに置かれた大きな大理石製のアート作品は、子どもが触ってもいいし登ってもいいそうです。街の複合交流施設「せんとぴゅあⅡ」の図書スペースでは、ガウディ、フィン・ユール、ウェグナーなど巨匠の椅子が展示されているすぐ横で子どもたちが勉強していて、その子どもたちが勉強している机や図書閲覧用に置かれている椅子は、日本全国でファンの多い町内の家具工房で作られたものや北欧デザインの椅子です。とにかく、町のあちこちに、驚愕の風景が広がっています。デザインが人の気持ちを形作るということを、キッピスブランド同様東川町の方たちも共有しているのではないかと、勝手ながら思いました。
④不妊治療の助成
東川町は、第一子の体外受精を全額助成しています(※夫婦の所得合計が730万円未満などの条件あり)。これは全国的にも類を見ない手厚い制度です。現在、日本の働く女性が、妊娠に適した時期に子どもを妊娠・出産するのは至難のワザです。キャリアを積むために20代は仕事を頑張っているうちに、タイミングを逃すという女性は多いのではないでしょうか。ただこれは、女性個人のせいというよりも、日本の労働環境や働き方の多様性が認められない風土など、社会全体の問題が影響している結果です。しかし、どうしてもツケは女性に回ってくるという現状があり、そんな環境が女性たちを孤独にしてしまいます。東川町の、従来の価値観にとらわれることなく、今そこにある問題に切り込んでいる東川町の姿勢に賛同しています。
https://town.higashikawa.hokkaido.jp/living/welfare/children.php
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