会社員の山本瑞人さんがリモートで働きながら田舎で暮らす選択をしたのは、コロナ禍前の2019年のこと。八ヶ岳と南アルプスに見守られた山梨県北杜市で、のびのび暮らす家族を取材した。
掲載:2022年7月号
「八ヶ岳ブルー」と呼ばれる、抜けるように青い空が広がる八ヶ岳南麓。日当たりのよい裾野に豊かな森が広がるこの高原は、避暑地として、また移住先として人気を集めているエリアだ。
小海線甲斐大泉駅から北へ延びる県道から脇道に少しそれると、木立に囲まれるように1棟の高床式の家が立っている。2019年に北杜市へ移住した山本瑞人(やまもとみずと)さん(33歳)が営む貸別荘「ヤマハウス」だ。
「僕たち自身は、移住当初から団地で暮らしているんです。団地内はみんな知り合いだし、子どももたくさんいるし、地域の情報交換もできるしで、快適すぎて引っ越せない(笑)。でも、せっかくここに住んでいるのだからここでしかできない副業をしようと思い、物件を購入し、昨年から貸別荘を始めました」
東京都板橋区で暮らしていた山本さん。結婚して子どもが生まれ、1DKの部屋が手狭になったので広い物件を探していた。しかし、職場から電車で1時間半離れた埼玉県でも家賃は劇的には安くならなかった。引っ越し先を検討するうちに、妻の美智留(みちる)さん(31歳)と「リモートで働けば、もっと東京から離れてもいいんじゃない?」と話すようになった。
キャンプなどで訪れていた北杜市を引っ越し先候補に決めた山本さん夫婦。SNSで北杜市での移住生活を発信している人を探し、移住や生活の話を直接聞かせてもらった。
「そのなかに団地にお住まいの方がいて、『田舎でも賃貸という選択肢があるんだ』と気づきました。市役所に市営住宅の空き状況を問い合わせたところ、名水の里として知られる白州エリアの定住促進住宅が入居者募集中だったんです。すぐに応募し、無事入居できました」
現在、山本さんは会社員として都内の企業に所属し、1日8時間フルリモートで勤務する。美智留さんもフリーランスで自宅を職場としており、息子の京(けい)くん(4歳)は自宅から徒歩約2分の保育園に通う。通勤に往復2時間かかっていた東京での生活と比べて、家族が一緒に過ごす時間は格段に増えた。
山本さんには「田舎へ移住してきた」という意識はあまりないという。
「僕としては『会社員が住む場所を地方に移しただけ』という感覚です。メディアでは、移住してお店などをしている人がフィーチャーされることが多いけれど、実際こちらで知り合った方は、移住後も会社員や公務員として働いている人が大半なんですよ」
大きな決心をして移住するのではなく、これまでのように働きながら生活の拠点を地方に移す。そんな軽やかなライフスタイルを、山本さん一家は体現している。
北杜市移住支援情報
ワーケーションを支援する「八ヶ岳水と杜のリゾートワーク」
自然豊かなところに住みながらテレワークをしたいというニーズに応え、今年5月にコワーキングスペースをオープン。また、地域の人とのつながりを大切にしながら「子育てするなら北杜」を実感してもらえるよう、移住希望者に寄り添ったサポートを行っている。
問い合わせ:ふるさと納税課 ☎0551-42-1324
https://www.city.hokuto.yamanashi.jp/teijyu_ijyu/
問い合わせ:未来創造課 ☎0551-42-1164
https://www.city.hokuto.yamanashi.jp/s-office/
文/はっさく堂 写真/尾崎たまき
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