東京で生活していた爲石さん夫妻は「いつかは田舎暮らしを」という夢を実現。2018年に妙高市で「森の宿ビヨルク」を開業した。親戚も友人もいない土地で始めた宿は、さまざまな人が集う交流の場となっている。
掲載:2022年8月号
大工さんとの二人三脚で、自然が感じられる宿に
日本有数の豪雪地、妙高市は冬になるとウインターレジャーを楽しむ人でにぎわう観光と温泉のまち。千葉県出身の爲石篤史(ためいしあつし)さん(40歳)と新潟県出身の麻美子(まみこ)さん(42歳)夫妻が営む「森の宿ビヨルク」は、風光明媚な「いもり池」の近く、静かな森の傍らにある。
「音楽やお酒、語らいを楽しむ方から、読書に没頭される方まで、ゆったりと流れる静かな時間を味わうお客さまが多いですね」と語る篤史さん。
篤史さんと麻美子さんは東京で知り合った。篤史さんは以前リゾート地でアルバイトをした際に自然の豊かさとそこでの遊びを知り、「いつかは田舎で自活したい。そのために宿を始めたい」と決意。その夢に、バックパックで世界を旅した経験がある麻美子さんも共感した。
全国各地でウインタースポーツを楽しみ、富士山ガイドの経験も持つ篤史さん。アウトドアブランドの企業で働きながら資金を貯め、宿を営む場所を探して各地の雪国を訪問。友人から妙高市をすすめられ、妙高市の宿の人からは市が運営する空き家バンクを教えてもらった。
最終的に、今の物件を見つけたのはインターネットのサイトから。探しはじめて3年目のことだ。物件はなんとか購入できたものの、課題は改修だった。
「親戚も友人もいない土地では業者探しが一番大変でした。ある日飛び込んだ設備屋さんから大工の綿貫鉄夫(わたぬきてつお)さんを紹介してもらったんです」
「こうしたい」と篤史さんが言えば、綿貫さんが「こうしよう」と答える。篤史さんも道具を手にとり二人三脚で大改修を実施。2018年に開業が実現した。
「木をふんだんに使った内装で、光の色もやわらか。鳥の声や自然が奏でる音のなか、静かな環境で非日常を楽しめる宿になりました」と篤史さん。
麻美子さんは、妙高市で暮らすようになって四季の素晴らしさを実感しているという。
「食事では畑で穫れた自家製野菜をはじめ、旬のものをお出ししています」
海外からの利用者も多く、ビヨルクは国内外の多様な人を結ぶハブ(交流の拠点)を目指している。宿泊者同士が仲よくなって、一緒にゲレンデに行く姿も見られるそうだ。
「今後は価値ある古道具を再生し、宿のインテリアとして使用したり販売を行うなど、循環型社会への貢献もしていきたいですね」。篤史さんは新たな夢について笑顔で語った。
【オーナー爲石さん夫妻から田舎宿開業へのアドバイス】
自分たちが宿を開く土地のことや環境を知ろう!
魅力的な物件を見つけても、まず土地を知ることを第一に考えてください。リゾートのアルバイトでもなんでもいいから環境を理解するようにしましょう。また資金が必要なときは、国や県の補助金も活用するといいと思います。私たちも、運営や改装のために、さまざまな補助金を活用させていただいています。
björk 森の宿 ビヨルク
妙高山の麓に立ち、周辺にある4つのスキー場や7つの温泉地へのアクセスも抜群。妙高高原駅から車で約10分。
住所:新潟県妙高市関川1252-8 ☎0255-86-3772
料金:1泊2日素泊まり2名1万円~、朝食付き2名1万2000円〜
https://www.bjorkmyoko.com
妙高市移住支援情報
市内での住宅取得や創業に対しさまざまな支援を行っている
妙高市では、住居取得にかかる費用に最大150万円、増・改築にかかる費用に最大80万円の補助を行っているほか、市内で創業する人が店舗取得や改修をする場合には最大500万円、店舗を賃借する場合には最大で月10万円を2年間補助(それぞれ対象条件あり)。また県外の移住希望者に対して空き家見学ツアーを随時実施(1泊2食分の宿泊費の補助あり)。
問い合わせ:妙高市地域共生課移住定住推進係 ☎0255-74-0064
https://www.city.myoko.niigata.jp/myoko-life
文/丸山和昭 写真/村松弘敏 写真提供/新潟県妙高市
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