大分県を代表する水産物といえば、「関あじ」と「関さば」。いよいよ12月からは「関さば」が旬を迎える。そこで今回は関あじ、関さばが一般的な魚と何が違うのか、その特徴とブランドの魅力を紹介しよう。
関あじ・関さばってどんな魚?
大分県と愛媛県の間には豊後水道(ぶんごすいどう)という海域がある。なかでも、大分市の佐賀関(さがのせき)半島と愛媛県の佐田岬(さだみさき)に挟まれた「速吸(はやすい)の瀬戸」と呼ばれるエリアで、大分県漁協佐賀関支店に所属する漁師の一本釣りによって獲れるマアジ・マサバだけが「関あじ」「関さば」と呼ばれる。漁獲から出荷まで徹底した品質管理によって、その美味しさとブランド力が保たれている大分県の特産品だ。
一般的なマアジやマサバよりも、ぷりぷりと引き締まった身と、口の中でとろけるような美味しさが魅力で、地元の漁協や仲買人によって認められた関あじ・関さばには、必ず指定のタグが用意されるほど唯一無二のブランドとして確立され、その名が広まっている。
関あじ・関さばのはじまり
佐賀関の漁師たちの間では、もともと関あじ・関さばが獲れる「速吸の瀬戸」エリアに生息する魚たちは他の海域の魚と交わることがなく、独立した群れを持っていると考えられていた。アジなら頭が小さく、よく肥え、尻びれから尾びれの間を指す尾柄(びへい)がたくましいなど、ほかの海域で獲れる魚とは違うことに気づき、そこで水揚げされる魚介類を「関もの」と称して、別格視してきたのが、関あじ・関さばのはじまりといわれている。
またこのエリアは、瀬戸内海と太平洋の水塊がぶつかり早い潮流を生んでいるため、そこに住む魚は身が引き締まり、豊富なプランクトンのおかげで脂ののりもよくなるのだとか。大分・佐賀関の特殊な環境だからこそ、特別で美味しい魚が育つのだ。
とにかく丁寧! 「徹底した品質管理」が確かな滋味を保証する!
唯一無二の美味しさが魅力の関あじ・関さばだが、その新鮮な美味しさを私たちのもとに届けるため、釣ってから出荷されるまで、佐賀関の漁師たちと漁協や仲買人が徹底した品質管理を丁寧に行っている。
海の中から私たちのもとに届くまでの過程を紹介しよう。
「関さば・関あじ」の徹底品質管理①
「速吸の瀬戸」で大分県漁協佐賀関支店の漁師が一本釣り
豊後水道は潮の流れが速く、通常の網を使った漁をするためには経験豊富な漁師でも命がけだ。そこで危険を回避するために一本釣りの方法が採用されるようになった。傷つけにくいというメリットがあるが、それだけではなく、新鮮な鮮度や品質の維持にも一役買っており、この一尾一尾に労力を掛けた漁法こそが、ブランドとしての地位を支えているのである。
「関さば・関あじ」の徹底品質管理②
釣ったらすぐに船のいけすに放して生きたまま漁港へ
釣った魚はすぐに船のいけすに放され、生きたまま漁港まで運ばれるため、ストレスによる味の劣化も抑えることができる。
「関さば・関あじ」の徹底品質管理③
熟練の技による「面買い」の後は、新魚専用のいけすへ
海から漁港に戻り、まず行われるのは「面買い(つらがい)」という工程。一般的な魚は、はかりを使って重さを計測するものだが、関さばや関あじの場合は、はかりを使わずに、水面から魚の大きさを見極めて、値付けをする。そうすることで、はかりの上で魚が暴れて、身が傷つくことを防ぐことができるのだ。漁協の中でもこの選定技術を身に着けた職員は数人程度というほど。プロ中のプロしかなし得ないワザがここにはあるのだ。
「面買い」された魚たちは、新魚専用のいけすで1日落ち着かせる。これは、釣られたばかりで興奮状態にある魚がほかの魚を傷つけてしまわないためだ。
「関さば・関あじ」の徹底品質管理④
1尾ずつ手作業で行う「活けじめ」「神経抜き」で新鮮さをキープ
長距離輸送や幾多の移し替えにより、生きた魚は過度のストレスを受けてしまい、旨みの一つである、脂っ気「しもふり」が完全に飛んでしまう。そこで、出荷の段階になると、魚の血を抜き、鮮度を保つ「活けじめ」、仮死状態にして身をやわらかく保つ「神経抜き」という作業を1尾ずつ手作業で行う。
このような徹底的な管理を経た魚たちにだけ、正式な関あじ、関さばとして札が飾られ、全国に出荷されていくのだ。
旬は、関あじが7月~9月、関さばが12月~3月。引き締まった身の歯ごたえ、それでいて脂がのって口の中でとろけるような味わいは、佐賀関ブランドならでは。東京・銀座にある大分県のアンテナショップ「坐来大分 」の料理長におすすめの食べ方を聞いたところ、特に刺身や特製ダレと合せて食べるのがおすすめということだった。
これから旬を迎える関さば。身が引き締まった新鮮な刺身、関ものならではの味と歯ごたえを堪能したい。
田舎暮らしの本編集部
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