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田舎暮らしの本 5月号

最新号のご案内

田舎暮らしの本 5月号

3月1日(金)
890円(税込)

© TAKARAJIMASHA,Inc. All Rights Reserved.

〈女性おひとりさまの地方移住〉島の人の温かさに癒やされ健康に。マルチワークで島と島外をつなぐ【沖縄県伊江村】

都会の仕事や花粉症に疲れ、スギの木がない沖縄本島へ、さらに人口約4300人の伊江島へと、ステップ移住した大房千紘さん。島で心身が癒やされた大房さんは、今度はフリーランスとなり伊江島と名護市の二地域居住に。若い女性おひとりさまで移住や起業といった大きな決断をした彼女に話を伺った。

掲載:2023年4月号

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沖縄県伊江村へ女性おひとりさま移住をした大房さん

伊江村の海辺でのびのびとする。「都会で疲れた女性に、『豊かに心地よく暮らしていくことをあきらめないで』と伝えたい」と話す。

大房千紘さん Chihiro Ohfusa
神奈川県横浜市出身の32歳。東京でIT関連会社に勤め、2016年に沖縄本島へ移住。その後、17年に伊江村へ。「つなぐ商店teto(てと)」代表として、伊江島の特産品の販路拡大をはじめ、自治体からの委託事業、さらには島外・県外・日本国外のパートナーとのプロジェクトなどを行う。さまざまな人やものをつなぐ「あいだの存在」として活動中。
「つなぐ商店teto」 https://peraichi.com/landing_pages/view/tsunagu-teto

 

伊江島へ誘われて沖縄本島からステップ移住

 沖縄へ移住した大きな理由は、東京のIT企業での勤務で体調を崩したからです。アレルギーや花粉症がひどく、移住先を探して日本各地をめぐり、スギの木が少ない沖縄県に2016年に移住し、地域創生に関連する会社に転職しました。会社は沖縄本島の中心部にあり、イメージと少し違ったので、いつかは島へ移住したいと考えていました。たまたま伊江島での仕事があり、何度か訪れて島の人と触れ合ううちに、「伊江島で暮らしてみたい」と思うように。

 でも、女性ひとりでの島への移住は不安だらけ。そんなとき、伊江島在住で私が父のように慕っていた方が、「『地域おこし』ではなく、まずはこの島になじめるかを測る『自分おこし』から。1〜2年休むつもりで気軽に暮らしなさい」と言ってくださったんです。その言葉に後押しされ、17年に伊江島へ引っ越しました。

 最初は、島の人たちとなじめるか緊張していましたが、伊江島は個性あふれる方が多く、「何歳になっても天真爛漫に生きていいんだ」と驚きました。

 家は古民家が見つかり、自分で改修しました。伊江島では、東京では見ることができない青い空と海、朝日や夕日もきれいで、毎日、天体ショーが楽しめます。なにより、島の人たちの温かさとたくましさ。もともと人と話すことが好きなのに、ITの仕事では画面と向き合うばかりでした。島では、集落全体で子どもの誕生を祝うなど、とても人と人とのかかわりが深い。それが私の疲れた心に心地よく感じられました。

女性おひとりさま移住した大房さんとシェア仲間

現在、島の古民家を友人の屋嘉比さんとシェアしている。屋嘉比さんは、伊江島のアダン葉で編んだ帽子の作家で、地元の編み手の作品も販売。

以前に暮らしていた古民家は自分で改修した(沖縄県伊江村)

以前、暮らしていた古民家は、自分で改修した。ただ、「屋根裏を走るネズミと、風呂なしのシャワーに苦労しました」と大房さん。

雇用を生み出し、島の人とともに楽しむ

 移住して3年間は役場の臨時職員。年収は東京時代の3分の1に減りましたが、ゆとりができて健康になりました。私は、できそうなら「がんばってやってみます!」と応えてしまう性格。依頼された仕事をこなしていくうちに役場の職員の範疇を超えることが多くなり、独立して「つなぐ商店 teto」を立ち上げました。起業したかったわけではなく、流れでそうなったので周りの方がたの支えに感謝です。

 仕事は島の内と外をつなぐ内容ばかり。伊江島の移住定住の情報発信や観光のSNS、島の物産の本島での販売、イベント運営、デザインの仕事も。留学経験を活かして、伊江島の学校で英語を教えたり、シンガポールの会社の仕事もしています。

 島と本島を行き来することが増え、昨年からは名護市(なごし)に部屋を借りて二拠点生活に。また、沖縄県地域・離島課の事業「アイランドコネクト沖縄」を活用して、私が受けた仕事の一部を島の人へ発注しています。今度、島の女性たちと、得た収入で本島のホテルブュッフェを楽しむ予定です。田舎、特に島は雇用が少ないので、少しでも雇用を生み出し、それが島の人の楽しみになればいいと思います。

 私にとって伊江島は、第二の家族や親戚がいる島であり、自分にとっての心地よさが何かを明らかにしてくれた場所。都会の方に島の素朴な情報を届けたり、島の人と面白い取り組みを創造したり、さまざまな面で島の内外をつないでいきたいです。

伊江村の特産品を沖縄本島などで販売

「おばあの手づくりあんこもち」や「又吉かまぼこ」は物販で大人気。伊江島でしか手に入らないため、朝、島で受け取っている。

沖縄本島での物販イベントで友人たちと

沖縄本島でのイベント出店時に、伊江島に住んでいる人と、関東に住んでいる人が訪ねてきてくれた。

外国語活動の外部講師も担当(沖縄県伊江村)

留学経験を生かし、「外国語活動」の外部講師(地域人材)として小学校で英語を教えている。

島のシンボル城山に夕日が沈む(沖縄県伊江村)

島のシンボル城山に夕日が沈む。大房さんが大好きな風景の1つ。

 

大房さんから「女性おひとりさま」移住へのアドバイス

沖縄県伊江村に移住した大房さん

❖移住前に検証を
移住だけが答えではないので、移住したい理由が本当に移住しないと実現できないのか自問するとよいかと。特に島は産業や雇用も少ないので、「島に来たら夢がかなう」ことはありません。仕事や暮らし方など、どうなれば心地よいのかが明らかだと移住後に役立ちます。

❖頼れる人を探しておく
女性ひとりでは、台風対策など、できないこともあります。また心細いことも。誰か頼れる人がいると安心できます。

❖人間関係が密だと覚悟して
特に島では近所付き合いや人間関係が密です。知らない人が突然、家を訪れることも。覚悟して移住してください。

 

【沖縄県伊江村(いえそん)】
沖縄本島の北部にある本部(もとぶ)半島の北西約9㎞に位置する、一村一島の村。やや東寄りの中央に、島のシンボル城山(ぐすくやま)がそびえる。農業、漁業が主産業で、サトウキビや葉タバコが盛ん。大型スーパー、コンビニエンスストア、診療所、幼稚園、小・中学校などがあり、生活には困らない。本部港からフェリーで約30分。

沖縄県伊江村の港の風景

伊江村 移住支援情報
子育て支援金は最大100万円高校卒業まで医療費無料

 沖縄本島の北部の人気観光地「美ら海(ちゅらうみ)水族館」から見え、フェリーで片道約30分と便利で、自然豊かな離島「伊江島」。相談窓口では移住コーディネーターが移住定住のワンストップ相談に対応している。プチ移住体験制度「移住体験プログラム」では島との相性が確認できる。村民への子育て支援が手厚いことが特徴。令和5年度には、移住定住促進住宅の整備とさらなる支援策を予定している。

問い合わせ:伊江村企画課 ☎︎0980-49-5812
※オンラインの個別相談もあり。情報収集は役場HP「移住・定住サポートページ」、公式のInstagram「伊江島ぐらし」伊江島ぐらし・移住定住サポートチャンネル - YouTubeにて。

沖縄本島から見た伊江島

本島の「美ら海水族館」から見える伊江島。

沖縄県伊江村の移住担当者

「移住をさまざまな面からコーディネートします」(伊江島の移住定住相談窓口の柴田さ〈左〉、山城さん)

 

文/水野昌美 写真提供/大房千紘さん、沖縄県伊江村

この記事の画像一覧

  • 沖縄県伊江村へ女性おひとりさま移住をした大房さん
  • 女性おひとりさま移住した大房さんとシェア仲間
  • 伊江村の特産品を沖縄本島などで販売
  • 以前に暮らしていた古民家は自分で改修した(沖縄県伊江村)
  • 沖縄本島での物販イベントで友人たちと
  • 外国語活動の外部講師も担当(沖縄県伊江村)
  • 島のシンボル城山に夕日が沈む(沖縄県伊江村)
  • 沖縄県伊江村の港の風景
  • 沖縄本島から見た伊江島
  • 沖縄県伊江村の移住担当者

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